とある世界の話
ここは現世界(地球)とは違う世界の物語。
彼らはこの世界のことを"グランダム"と呼ぶ
この世界はその昔、人類が生きていくにはとても厳しい環境だった。
常に日照りの天気に、夜は極寒、地上には魔獣が溢れ、起伏の激しい大地、草木すらまともに生えることのない枯れた大地。
そんな世界に"グラン"という一人の大魔術師がいた。
グランはそんな世界で隠れ潜むように暮らしていた人類の救世主だった。
グランは魔術で魔獣を倒し、大地を慣らし、天候すらも変えてみせた。
人々は彼のことを神と崇め、魔創神と呼んだ。
魔創神グランの誕生、そして魔創暦の始まりである。
魔創暦756年
ここは平和の国と呼ばれるカストリア。
そんな平和の国に夫婦と子の3人で暮らしている家族の姿があった。
息子の名前はカルマ・ミラ・フィーラン、6歳の男の子だ。
カルマはこのフィーラン家に住むバトロフとティニエ夫妻の次男だ。活発だが優しい少年である。
「父さん、ちょっと街に行ってくる!」
カルマはそう言いながら玄関へ向かう。
「カルマ、どこへ行くんだ?」
「ノーリエさんのとこ」
「またあの魔術師のところか..カルマも10歳になれば魔術や剣の訓練をするんだ。あまり急がなくてもいいんだぞ。」
「うん、わかってるよ!でも僕は兄さんみたいな凄い戦士になるんだから早いに越したことはないよ。」
この世界、グランダムには多くの国々が存在する。
そしてその国同士での戦争や国内での内乱が起こることもあるのだが、自国の兵士でのみ戦争をすることは多くない、各国では兵士の数は必要最低限のみとなっており、戦争となる場合には、各地にいる"戦士"や"戦士団"と契約する傭兵制度が主流となっている。
また、戦争のない時期であっても戦士には魔獣の討伐から護衛任務など様々な依頼がある。
戦士には剣士と魔術師が存在しており、戦士を目指すものは10歳になると戦士協会の訓練を受けることができ、15歳になれば戦士として任務を受けることができるようになるのだ。
バトロフはカルマを呼び止め、カルマの前で膝をつく。
「カルマ外へ出るのはいいが、父さんの言いつけは覚えているな?」
「うん、覚えているよ。」
「一つ、日が沈む前には帰宅すること。
一つ、国門の外にはでないこと。
一つ、左目の眼帯は外さないこと」
カルマは常に左目に眼帯を付けている。
生まれつき左目の瞳孔が赤いからである。
バトロフはカルマに眼帯を付けさせ、目の色が違うことをひた隠しにしてきた。
バトロフがカルマの左目を隠すことには、とある理由がある。
この世界には"緋眼の魔人"という凶悪な魔人が存在する。緋眼の魔人は500年ほど前から存在していたとされ、一度は世界の守護者である"神嶺"によって封印されたが、30年ほど前に復活したのだ。
緋眼の魔人は定期的に国や重要施設に配下の魔人や魔獣を使って侵攻を行なっていた。そしてその緋眼の魔人もカルマと同様に左目が赤いとされていたからである。
幼いカルマはあまり理解していないようだが、その目を周りに知られれば、嫌悪・警戒されることは容易に推察できた。だからこそバトロフはカルマが幼少の頃から眼帯を付けさせ、常に外すことがないよう言いつけをしていた。
「じゃあ、父さん、行ってくるね」
「ああ、気をつけるんだぞ」
そういうとカルマは、街へ向かって走り出した。