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5周目の人生で異世界を救った話   ~5人目の転生者を英雄へと仕立て上げる兄と、仕組まれた運命に抗う少年~  作者: MINMI
一章 平和の国カストリア編

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1-6「フィルスの昔話②」


「……じゃあその後、どうやって魔人軍に対抗したの?」


「そこで立ち上がったのが賢人ルドラだ」


 フィルスの目が、遠くを見る。


「ルドラは《緋衣の十魔(ひえのじゅうま)》のうち三柱を討った。

 魔人軍が立て直しを余儀なくされるほどの打撃だった」


 カルマはごくりと唾を飲む。


「……フィルスは、その弟子だったんだよね」


「ああ」


 短い返答。だがそこに、誇りと――わずかな悔恨が滲んでいた。


「ルドラはな……強かった。だが、それ以上に――世界を救う覚悟を持っていた。」

 

 カルマは知らず、拳を握っていた。


 過去の戦い。

 不老の神嶺。

 消えた英雄。


 それらが、どこか自分の人生と繋がっているような気がしてならなかった。


 

「私が奴の弟子となったのは、幹部の一柱を倒した後くらいだったかな」


「へぇ。賢人ルドラかぁ。」


 カルマは目を輝かせる。続きをせがむ子どものように。


「私は二番目の弟子だった。私が入った時には、すでにアリディアという魔術士の娘がいた」


「え!? アリディアさん?」


「知っているのか?」


「前に、この目のことで街で騒ぎになった時に助けてもらって……」


「そうか。偶然だな」


 フィルスは小さく鼻を鳴らす。


「まぁいい。あいつの話をしても面白くはない」


「仲悪いの?」


「あいつはいつも私の性格面のダメ出しばかりしてきたからな」


「喧嘩ばかりしてたんでしょ?」


「いや。奴は喧嘩を売っても、すかして受け流す。だから大した喧嘩にはならなかった」


「ふふ、仲良いんだね」


「ただの同僚だ」


 言い切るが、わずかに目を逸らした。


「あと一人、弟子がいるんだっけ?」


「……ああ。ルドラには三人の弟子がいた。三番目はルドロス。魔術剣士だ」


「その人は今どうしてるの?」


 その瞬間。フィルスの空気が変わった。


 握りしめられた拳。静かな怒り。


「……奴のことはいずれ話す」


 低い声だった。


 カルマは聞いてはいけないことを聞いたのかと思い、それ以上踏み込まなかった。


「それで、ルドラのさいごは……?」


 フィルスはゆっくり息を吐いた。


「私やアリディアは、それぞれ任務に就いていた。ルドロスも妻を娶り、独立していた」


 淡々と語る。


「十六年前。ルドラは単独行動中を狙われた」


 空気が冷える。


「緋衣の十魔が二柱。そのうち一柱は三大魔人――天魔ヴォレア」


 ……


「ルドラは一柱を討った。だが……天魔ヴォレアに殺された」


 ……


「私は間に合わなかった」


 フィルスの声がわずかに震えた気がした。


「到着した時には、もう……」


 フィルスはそこで言葉を止めた。怒りか、悔恨か、それとも両方か。


「フィルスは……緋眼の魔人と戦うの?」


 静かな問い。その問いにフィルスは口元を歪めた。


「私は、師の復讐に燃えるほどできた弟子ではない。

 だが、現役の間に相対することがあれば――斬る」


 その言葉に迷いはなかった。


 カルマはまっすぐ言う。


「なら、僕も戦うよ」


 フィルスはその言葉を聞いて目を細める。


「兄さんに言われたんだ。僕はきっと、緋眼の魔人と戦う運命にあるって……兄さんも、フィルスも戦うなら――僕も一緒に戦う」


「ふっ。小僧のくせに大きなことを言う」


 だが、その目はどこか嬉しそうだった。


「なら、もっと強くなれ。今のお前では足手まといだ」



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