足りないもの
それからもフィルスとの修行の日々は続き、半年ほどの時間が経った。
修行については未だフィルスに一撃を与えることはできていないが、カルマはめざましい成長を見せていた。
特に成長していたのは剣術だ。その動きは無駄が無くなり鋭さに磨きがかかっていた。
魔術に関してはフィルスの隙をつくために使用することが多く、大きな技の習得などはしていない。どちらかというと小技が増えた。
また、魔術の発動に関しても無駄をなくすことに注力していた。
フィルスの強さは当然その速さや破壊力もあるが、何より無駄がないことだった。魔術はほぼノーモーションで発動し、流れるように剣を振るう。魔術と剣術が完全に一体化しているのだ。
「カルマ、お前の動きは確かに速く無駄がなくなってきた。だが私はまだお前の剣に捕まる気はしない。
なぜかわかるか?」
「んー、なんで?」
「それはお前の剣には怖さがないからだ」
「怖さ?」
「今のお前の剣は動きを良くしようとしすぎてその剣を打ち込むことへの意識が欠けているんだ。
動きはあくまで一撃を与えるまでの"過程"でしかない。お前の剣には、威力も重さも迫力も気迫もその全てが欠けている。」
「どうすれば…?」
「そんなことは自分で考えろ。
そういえば、お前の兄は鈍重なやつだがその剣はとても重い…。」
「一撃の重み…どうすれば」
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それからしばらくたったある日、カルマがフィルスの小屋を訪れる。
「何だ?」
「フィルス、2週間ほど戦闘訓練を休みたいんだけど、いい?」
「お前、何を…」
フィルスははじめ諦めたのかと思ったが、カルマの目を見て違うとわかった。模索のうえで何か光を見つけたのだろうとフィルスは感じた。
「よし、いいだろう。私はここにいるので、再開する際は声をかけろ」
「ありがとう。」
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それから数日フィルスは何度か森を散策したが、カルマを見つけることはなかった。
だが少し森を奥へ進んだところに不思議な跡を見つけた。
それは森の中のその場所だけ、木々や地面が焼けこげて土が露出している場所があったのだ。
フィルスはそれを見てふっと笑みをこぼし小屋へと戻っていった。




