12.修行開始
ラダの森へと到着した2人は森を進んでいく。そこは黒い葉をした背の高い木が多く叢生している森でまだ昼間だというのにそこら中から魔獣の気配がする。
少し進むと開けた場所に到着する。
「しばらくはここに拠点を置く」
「え?」
「お前はこの森で自分で食べ物を見つけ生活しろ。」
「魔獣が襲ってきたら?」
「当然、お前が倒せ」
……
「フィルスさんは僕に修行をつけてくれるのでは?」
「ああ、この森にいる間、日中はお前の修行を行ってやる。だが、あいにく私は人に物を教えるのは得意ではない。だから修行の内容はひたすら私との戦闘だ。」
「戦闘…訓練ではなく?」
「いや、私はしっかり叩きのめすつもりだ」
「……」
「お前が私に一撃でも攻撃を当てることができたなら、街に帰してやる」
「なるほど、じゃあ僕はフィルスさんに全力で攻撃すればいいの?」
「ああ、そうだ。それと私のことはフィルスでいい。
それじゃ早速、夕刻まで今日の修行を行うぞ」
フィルスはそういうと剣を構える。剣といっても腰にさした剣ではなく刃のない鉄の剣だ。
これはフィルスなりの優しさ…というよりは本気で打ち込んでも死なないようにするためだろう。
「……」
カルマはフィルスと向かい合い彼女の威圧に気圧される。
「来ないならこちらからいくぞ」
カルマが気づいた時にはフィルスはカルマの目の前まで踏み込んでいる。
「……っ!?」
素早く振るフィルスの剣を、カルマは何とか剣で受け流しながらフィルスの左側へ回るが、既にフィルスの追い打ちが迫っている。
目にも止まらぬ速さの連撃を剣で受ける。
「……うわっ」
カルマが後ろに下がりフィルスとの距離が空く。
カルマはフィルスへ攻撃を撃ち込まなければと距離を詰めようとする。
だが、既にフィルスはカルマの後ろに回っており、カルマはフィルスの一撃により吹き飛ばされてしまう。
「うあぁ!」
その場に倒れ込むカルマ
「いってて…」
「まだまだだな。」
「くっそ」
カルマは悔しそうにその場に座り込む。
「おい、なぜ距離が空いた時、慌てて攻撃しようとした?」
「いやだって攻撃しないと始まらないし」
「あんなやぶれかぶれに突っ込んだところで私に攻撃はあたらん。それよりあの距離ならお前の得意な攻撃がほかにもあっただろう。」
「得意な攻撃?」
カルマは頭を抱える。
「今日はもういい。日が暮れる前に食料を探してこい」
そういうと、フィルスは背中を向け去っていった。
「攻撃って言ってもまともな剣術は習ってないしな。
んー……」
カルマはフィルスが言った意味はよくわからなかったが、とりあえず立ち上がり食料を探しにいくことにした。
カルマが森の中を散策していると、赤い果実のなっている木を見つけた。
「あれ食えそうだな」
だが、背の高い木で、かなり高い位置に果実は実っている。
「高いな……」
カルマは少し考えた後、手を果実に向ける。
「氷の矢」
氷の基礎魔術で果実を撃ち落としていく。
....
「あ…そうか、僕には魔術があるんだ…」
〈頭の中の整理用 メモ〉
ラダの森= カストリアの西側に広がる広大な森のこと。
魔獣が多くいるため、住民は近づかない。




