1-3「師匠と弟子②」
……
フィルスは剣を構える。剣といっても腰にさした剣ではなく刃のない鉄の剣だ。
これはフィルスなりの優しさ…というよりは本気で打ち込んでも死なないようにするためだろう。
「……」
カルマはフィルスと向かい合い彼女の威圧に気圧される。
「来ないならこちらからいくぞ」
カルマが気づいた時にはフィルスはカルマの目の前まで踏み込んでいる。
「……っ!?」
素早く振るフィルスの剣を、カルマは何とか自分の剣で受け流しながらフィルスの左側へ回るが、既にフィルスの追い打ちが迫っている。
目にも止まらぬ速さの連撃を剣で受ける。
「……うわっ」
カルマが後ろに下がりフィルスとの距離が空く。
カルマはフィルスへ攻撃を撃ち込まなければと距離を詰めようとする。
だが、既にフィルスはカルマの後ろに回っており、カルマはフィルスの一撃により吹き飛ばされてしまう。
「うあぁ!」
その場に倒れ込むカルマ
「いってて…」
「まだまだだな。」
「くっそ」
カルマは悔しそうにその場に座り込む。
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「おい、なぜ距離が空いた時、慌てて攻撃しようとした?」
「いやだって攻撃しないと始まらないし」
「あんなやぶれかぶれに突っ込んだところで私に攻撃はあたらん。それよりあの距離なら他にも手段はあっただろう。」
「他の手段?」
カルマは頭を抱える。
「今日はもういい。日が暮れる前に食料を探してこい」
そういうと、フィルスは背中を向け去っていった。
「攻撃って言ってもまともな剣術は習ってないしな。
んー……」
カルマはフィルスが言った意味はよくわからなかったが、とりあえず立ち上がり食料を探しにいくことにした。
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カルマが森の中を散策していると、赤い果実のなっている木を見つけた。
「あれ食えそうだな」
だが、背の高い木で、かなり高い位置に果実は実っている。
「高いな……」
カルマは少し考えた後、手を果実に向ける。
「氷の矢」
氷の基礎魔術で果実を撃ち落としていく。
....
「あ…そうか、僕には魔術があるんだ…」
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翌日。
カルマは再びフィルスの前に立っていた。
「準備はいいか」
「うん」
短く息を吐き、剣を構える。
(大きく踏み込んで……速く振る)
地面を蹴る。踏み込みと同時に、全身の力を乗せて剣を薙いだ。
だが、手応えがない。
フィルスの姿は、すでに間合いの外にあった。
距離が開く。
カルマは即座に剣から片手を離し、掌を向けた。
「火の玉」
炎の球が一直線に飛ぶ。
「ふっ」
フィルスは口元を歪め、真上へ跳んだ。
炎は虚しく地を焦がす。
見上げた瞬間、影が落ちる。
―上から来る。
剣を構えた、そのとき。
足元に違和感。
視線を落とすと、フィルスの魔術によって地面と足が白く凍りついていた。
「広範囲凍結」
「やべっ……」
気づいた時には遅い。
振り下ろされた一撃がカルマを地面へ叩きつけた。
「がっ……!」
視界が跳ねる。
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目を開けると、フィルスがすぐ前に座っていた。
「いてて……」
「あれでいい」
「え?」
「私は剣術を教えるとは言っていない」
ファルスはカルマの目をまっすぐ見つめる。
「剣と魔術を両方扱う戦士は稀だ。それは“武器”になる。
……だが、お前はまだ甘い」
立ち上がり、背を向ける。
「今日は終わりだ」
去っていく背中を見ながら、カルマは思い出していた。
ダグラスの言葉。
戦士の道は一つに絞るのが普通だという話。
剣か、魔術か。どちらかに人生を捧げなければ“上”へは行けない。
階級は初級・中級・上級・天級・界級。
上級を越えるだけでも、才能と年月が必要。
両方を選べば、どちらも半端になる。
それが常識。
――なのに。
フィルスは、剣術も魔術も天級。
「そうか……」
カルマはゆっくり立ち上がる。
「生き残るのに、剣も魔術も関係ないんだ」
明日へ向け、カルマは剣を握り直した。




