表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一生一緒。  作者: ハスダ
17/17

番外編 紗英×翔祐

中学時代に私、大田紗英は山下翔祐という男を好きになった。あまり喋らなくて何を考えてるかわからない男だった。でもそれがクールに見えて、いつも騒ぎ立てて先生に怒られてる男子に比べてかなり大人っぽく見えた。たぶんそんなところに魅力を感じたのだ。

断られる覚悟で告白したのだけど、意外にも付き合えることになった。

「同い年なのに大人っぽい女の子だなって思ってたんだ。」

翔祐からはそう言われた。お互いに同じ印象を持ってたのが嬉しかった。たぶん私が大人っぽく見えたのはワンレンロングの髪型のおかげだろうけど。


ある時一緒に勉強がしたくて、翔祐の家にお邪魔させてもらった。お母さんは看護師で、日勤と夜勤の日があるみたい。今日はたまたま家にいたので挨拶することができた。

「翔祐、自分はモテないなんて言ってたけどちゃんと彼女がいたのねぇ。」

お母さんはとても嬉しそうにしていた。離婚しているのでお父さんはいないらしい。それでもお母さんは生き生きとしていたので、離婚というのは悪い選択ではないと感じた。結婚すらもまだ何年も先なのに何を考えているのか、と思ったりもしたが。


翔祐は勉強が出来るので、私は苦手な教科を教えてもらった。でも部屋に2人きりなのにいい雰囲気になるわけでもなく、淡々と説明をされた。何か期待していたのは私の方だけなのか…。

そして本当に勉強だけして帰ることになった。みんなは勉強するって言いながらずっとお喋りをして、距離が近くなったりするものだと話していたのに…。

「送っていくから。」

外は暗くなりかけていたので翔祐は私を送ってくれることになり、自転車を出した。私を送った後は自転車で帰る為だ。淡々としてる割には、気遣いは出来るんだなって思った。

「翔祐君?」

翔祐を呼び止めたのは若いお母さんと小学生のショートヘアの女の子だった。

「彼女さん?」

「はい、そうなんです。」

ちょっと照れくさそうにしていた。なんだ、こういう顔するんじゃん。一緒にいた小学生の女の子は私を見ていた。何故か膨れっ面になっていた…。あぁ、きっと翔祐のことが好きなんだろうな。面倒を見てくれる近所のお兄ちゃんを取られた気分なのだろう。 


「あの子と仲いいの?」

歩き始めてから翔祐に聞いた。

「由紀奈?たまに面倒見てるから仲はいいよ。」

「たぶん翔祐のこと好きなんだろうね。」

「たぶんね。」

なんでそんな嬉しそうなの…。

「ねえ翔祐、自転車なら2人乗りで送ってよ。」

単に彼氏と2人乗りというものに憧れていたのでそう言ったのだが、翔祐はあまりいい顔をしなかった。

「2人乗りは危ないから駄目だよ。それに…。」

「それに何なの?」

ちょっと恥ずかしそうにしながら言った。

「話す時間少なくなっちゃうじゃん。」

「……。」

翔祐はきっと真面目で不器用なのだ。さっきだっていくらでも話す時間はあったのに勉強しかしなかった。たぶん私が勉強したいと言ったからそれを真に受けて実行したのだ。

「それなら喜んで歩くよ。」

私が笑うと、翔祐も嬉しそうにしてくれた。


そうやってたまにいい雰囲気になることはあったが、周りの子達みたいに大した進展は無く、それが淋しく感じた。だからクリスマスの時期にイルミネーションに誘ってみた。

「イルミネーションねえ…。あんま興味ないんだよね。」

相変わらず淡々としていた。でも、たぶんこうなるだろうなってわかってはいた。私は翔祐の前で泣いてしまった。

「え?紗英?そんなに行きたかった?」

「もう翔祐とは付き合えない。ずっと由紀奈ちゃんの相手だけしてればいいじゃん!」

泣きながら帰ったけど、翔祐は追いかけてこなかった。きっと私のことなんかそこまで好きじゃないんだと思った。恋愛対象にならない由紀奈ちゃんの名前を出したら何か言い返してくると思ったけどそれすらもなかった。


家に帰ると、翔祐から着信が入ってることに気付いた。やり直す気はなかったから無視した。







「紗英、この前はごめん…。」

「もう別れたんだから話しかけてこないで!」

学校で話しかけられても私は相手にしなかった。別れてから気づくのは遅い。それなら今までの時間で頑張ってほしかった。














その後、私達は本当に口を聞かないまま卒業した。その頃にはもう翔祐のことはどうでもよくなっていて、高校での出会いに期待していた。


そして高校では、翔祐とは違うタイプの男子と付き合えることになった。きちんと話し合えるタイプの人で、男友達が多かった。やっぱり何を考えてるか分からない人なんて駄目だったって気づいた。

クリスマスは毎年やってくるけど、今の彼は信頼があったからわざわざクリスマスにデートしようという気にはならなかった。友達が多いのでそちらとも遊びたいからデートはまた年明けにしよう、と話した。私も女友達と遊びたかったから、クリスマスはみんなでイルミネーションを見に行くことになった。


女数人でコーヒーショップで温かい飲み物を買い、歩きながら話していた。とても楽しい時間だったが、私はある男を見つけてしまった。

「え…?翔祐?」

思わず声に出した。

「もしかして紗英?」

ちょっと反応が遅かったが気付いてくれた。

「翔祐、こういうところに来るんだね。私のときは面倒くさがってたのに。」

「あの時は中学生だったから付き合うとかよくわからなかったんだよ。」

翔祐の隣には女の子がいた。このショートヘアは由紀奈ちゃんだ。きっとこの子にわがままを言われて付き添ってきたのだろう。

「この子は今の彼女?…んなわけないか。」

私は思わず覗き込んだ。翔祐は黙っていたが、由紀奈ちゃんが勢いよく言った。

「彼女は私です!お姉さん、私達の仲を邪魔しないでください!」

「あは、可愛い。翔祐のこと好きなんだね。」

笑ってしまったが…由紀奈ちゃん、本気で翔祐のことが好きなんだろうなと思った。

「紗英、何してんのー?早く行こー。」

友達に呼ばれたので翔祐たちには手を振った。

「あの兄妹誰?」

「兄妹じゃないよ、カップルだよ。男の方は中学時代の知り合い。」

「へぇ、身長の低い彼女ね。」

本当に付き合ってるかどうかは分からないけど、由紀奈ちゃんの方は絶対に本気になってる。翔祐が相手で幸せになれるとは思えないけど、あの何考えてるかわからない翔祐とイルミネーションに来れてるんだから、きっと私達のような理由では別れないだろう。







高校2年生の時もイルミネーションに女友達と行った。その年は特に何事もなかったが、3年生になった時には彼氏に一緒に行こうと言われた。もう高校最後だし、と言われて行くことになった。わざわざクリスマスじゃなくてもたくさんデートをしていたけど、彼が私と過ごすことを決めてくれたのは嬉しかった。

人混みの中で2人で歩いていたが、私は由紀奈ちゃんを見つけた。隣にいた翔祐じゃなくて由紀奈ちゃんのほうに目が行った。あの頃と比べて髪が長くなっていて、とても大人っぽかった。女の私でも羨ましいくらいに綺麗な子になってた。

由紀奈ちゃんも私に気づいたけど、不安げな顔をしていた。そんな心配しなくても、翔祐のことを取ったりしないよ。それに…あの翔祐が同じ女の子とまたイルミネーションに来てる。翔祐は由紀奈ちゃんのお世話じゃない、ちゃんとデートしに来てるんだ。

きっと、きっと2人なら大丈夫。ずっと一緒にいれる。だから由紀奈ちゃん…幸せになるのよ。

私は思わず由紀奈ちゃんに対して笑いかけた。


「なんでそんな嬉しそうなの?」

彼氏が私の表情を見て言った。

「幸せそうなカップルがいたから。」

「え?どこに?そんなのわかるもんなの?」

「私にしか分からないよ。」

彼はちょっと探したが、人混みの中からはさすがに見つけられなかったようだ。

「紗英って大人だよね。よそのカップルの幸せを見て喜べるんだから。」

「そうかな?」

「そうだよ。嫉妬しない女でよかった。」

嫉妬しないのは、貴方みたいないい男と付き合ってるからだよ。彼氏が今でも翔祐だったら、きっとものすごく妬んでた。





高校を卒業したあと、ずっとロングだった私は髪を切った。もう髪形でごまかさなくても彼から大人だねって言われたから。

大学生になってから少しした頃、翔祐は本屋で仕事をしていた。たまたま翔祐のいたレジで買い物をした。

ちゃんと目が合ったのに、翔祐は私に気付かなかった。翔祐からしたら私なんてそんなもの。でも、それでいいの。

翔祐のことを幸せにできるのは、由紀奈ちゃんしかいないのだから…。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ