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夢に向かって猪突猛進な『不遇』王女には事情がある!?〜孤児院出身の王女は愛されることには慣れていません〜  作者: はな
最終章

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59、明かされたこと


 その顔を見て、絶句する。たしかにこれなら恨んでも仕方がないのかと思えてしまうくらいの傷だった。



「その、顔は……」

「お前が!!お前のせいで……私は、こんな……!本当に……どんだけこの日を楽しみにしていたかわからないわ!!やっと……やっと!!あの日の恨みを晴らせるのよ!!」



 あの日、と聞いて我に帰る。そもそも私たちを襲わなければ、つかなかった傷だと思い直す。私がやったのかはまだ疑問だが、自業自得だとの結論に至った。


 何より。あんなことがなければ、テオ兄はまだ生きていたはずなのだ。



「……そんなの、自業自得じゃない」



 黒の魔女はさらに苛立ちを浮かべた。



「ふん……そんな生意気なことを言っていられるのも、今だけよ」



 確かに今の私は魔力封じの手錠がされており、何もできない。

 普段は自分の魔力で覆われているのか気づかなかったが、黒の魔女の魔力を直に受けると魔力がひどく澱んでいることに気がついた。とても人が発しているものとは思えず、全てが魔物と同じもののように感じられる。


 そしてしばらく彼女の様子を窺っているうちに、気付いてしまった。



「……あなた、もしかして……魔物と、契約したの……?」



 私の言葉に対し、黒の魔女は否定をすることなくにやりと口角を上げるだけ。


──魔物との契約


 かなりの命の危険が伴う上に、大罪として禁止されている。そもそも魔物とは人間の言う信頼関係など成り立たない。

 最初は願いを叶えるようなことはするが、魔物の基準で叶ったと判断されれば、それ以降はいいように利用されるだけ。


 そして魔物がかなり強い力を持つものであること、相性、人間側が強い負の感情を抱いていることなど、細かな条件が合わないとできないものだと聞いている。


 これはわたしが大魔法使いを目指すきっかけになった絵本の、魔王がなんなのか気になって調べた時にたまたま読んだ本に書いてあったものだ。


(あのときは、あくまで知識の一つとしてそうなんだ、程度にしか思わなかったけれど……)


 あのとき、私とテオ兄を囲んだ魔物たちを思い出す。そして学園の森でも。同じなのは黒の魔女がいたということだ。


 人間が魔物を操ることができるなんて聞いたことがないし、記憶を思い出してからはおかしいとは思っていた。あまり考える時間もなかったから、調べることもできなかったけれど。それを命じていたのが魔物だとすれば、辻褄が合う。


 低位の魔物に知能はないが、上位になればなるほど知能もついてくる。あの場にいた魔物達は上位種だったが、さらに強い魔物の命令なら聞いてもおかしくはない。



「あなたは、一体……」

「……ここまで気づいたのはあなたが初めてだし、冥土の土産として教えてあげるわ。私はね大昔に封印されたのよ……あのときは魔王とか呼ばれたかしら」

「──え?」

「あの忌々しい奴らに復讐することだけを胸に、永い時間を耐えていたわ。そしたらある愚かな女が失恋したと泣いていたのよ。甘い言葉をいくつか囁いてあげたら簡単に誘いに乗ってくれたわ」



 幸いその女は魔力量が多くてね。とても助かったわぁ、などといいながら楽しげに笑っている。


 しかし私は別のことを考えていた。


(もしかして……あの絵本は、実話なの……?)


 すると私の心を読んだかのように、黒の魔女は忌々しげに言い放った。



「数百年ぶりに世に出たら、思い出しただけでも腑が煮え繰り返る出来事が絵本になっていてね。本当に腹が立つ。私は倒されたことになってたのよ……封印がせいぜいだったくせにね」



 低くて地を這うような悍しい声に、ぞくりと鳥肌が立つ。



「あのジャネットとかいう女も、嫉妬っていう愚かな感情からすぐ誘いにのるし、アンドリューって男も

そう。シャルロットもね。みーんなプライドは高い癖に単純で馬鹿みたいよ。まぁ扱いやすくていいけどね」

「どういう、こと……?」



 側妃だったジャネット様と、現在エスパーダ公爵でレイの義父であるアンドリュー様と、私の知っているシャルロットのことを言っているのか。


 口からは信じられないのも相まって疑問が溢れたが、頭の中では点と点が線で繋がっていった。



「今の話でわかったでしょ?私はこのネージュラパンの国王をつかってジャネットとアンドリューと関わったことがあるのよ。シャルロットはご存知の通りだと思うけど……ジャネットはずっと今の国王が好きだったみたいだけど、全く脈なしでね。嫌いな女と結婚してとっても恨んでいたの。そしてアンドリューは次男ってだけで公爵位を継がなかったと思ってたみたい。この人も好きな人がお兄様の婚約者だったらしいわ。それでお兄様を恨んでいたみたい。あんな能無しにはどちらにしても無理だと思うのだけど。そこで少し力を貸してあげたのよ」

「どう、して……そんなこと……」



 そんなことがなければ私は孤児院にいることもなく、お母様も亡くなることもなく、家族と過ごせたのでないか。

 テオ兄も私と会うことはなかったかもしれないが、命を落とすこともなく。

 レイも虐げられることもなく、家族と幸せに過ごせていたのではないか。



「そんなの、面白いそうだからに決まっているじゃない。それに負の感情は私の糧になるのよ」

「……糧?」



 なに馬鹿なことを聞いているんだ、とでもいいたげに返されて、今まで感じたことがないほどの怒りが込み上げる。



「あら、それも知らないの?魔物はそれぞれ好みはあるけど負の感情があればより強くなるのよ。私の場合は「嫉妬」が好きなんだけど……だからそういう人間には敏感なのよ。いくら表面上繕っていても目を見ればすぐにわかるわ」



 あれはおもしろかったわぁ、と話を締めた黒の魔女は一転、私を温度のない目で見据えた。


 今までのことは全て黒の魔女によって引き起こされたことなのか。



「まぁ昔話もここまでよ。お前の魔力さえあればこの傷は治せるし、私は新たな力を手に出来るのよ!」

「そんなこと……」

「ふふっ、8年かけてやっと完成したんだから……楽しみにしていてちょうだい?」




読んでいただきありがとうございます!

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