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夢に向かって猪突猛進な『不遇』王女には事情がある!?〜孤児院出身の王女は愛されることには慣れていません〜  作者: はな
最終章

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58、再会から一転



「ここ、は……」



 寝た状態で辺りを見回すと、地下牢のような場所だった。

 じめっとかび臭く、奥の方は薄暗くてよく見えない。

 少し遠くに小さな明かりが等間隔に何個かぼんやりと灯っているだけだった。


 どうしてこんなところにいるのか。


 意識が徐々にはっきりしてきて、自分の身に起こったことを思い出した。


 深夜にお父様とお兄様が帰ってきて、話を聞いた。まさかお父様とお兄様、そしてレイが反乱に参加するとは思わなかったけど。


 事の次第と経緯を聞いて、最後には私は泣き出してしまったのだった。


 本当はとてつもなく嫌だった。

 それでも自分のできることで、大勢の人が守れるならと思って。

 これまでは自分が死ぬことに対してはなんとも思わなかったのに、レイがいるから。


 レイのおかげで死にたくないと思うようになった。


 お父様とお兄様からも大切に思われていることを痛感した。それでも反乱に参加するなんて、やり過ぎだし、普通はありえないことだと思う。


 ここ1週間、会えなかった理由もわかった。私の先触れに対する返事は、おそらく宰相がしていてそうで。


 もう後悔はしたくはないのだという2人の言葉を聞いて、会ったことのないお母様を想った。


 そのとき、もう気持ちを抑えることなんて、できなかった。

 嬉しさや申し訳なさ、色々な気持ちでいっぱいになって、涙が止まらなくなってしまった。



「私、みんなに、恩返しがしたくて……こんな私を、大切にしてくれて、想ってくれて……嬉しかったから……」

「こんな、なんていわないでくれ」



 お父様は私の頭を優しく撫でてくれて、お兄様はまるで「大丈夫だ」と言うみたいに、ぎゅっと手を握ってくれた。

 泣き止もうとしても涙は余計に溢れてくるばかりで。


 その優しい手つきも「うん」という相槌も、優しい表情も、何もかもが嬉しくて、気が付けば私は子どもみたいに声を上げて泣いていた。



「みんなを、守りたくて……私がみんなを守れるならって。私の役目だって、思ったの……それなのに、こんな風にされたら……」

「……うん」

「みんなと、離れたく……なくなっちゃう……」

 


 生きたい。死にたくないと思ってから、自分は弱くなってしまったと思う。



「うん……それでいいんだ。これからも、一緒に過ごそう」

「……うっ……ひっく……」

「そうだよ。まだルーナの人生の半分しか一緒にいないんだから。離れるわけないだろう」



 お父様とお兄様の言葉が嬉しくて幸せだと思った。もう泣くことしかできない私をお父様は優しく抱きしめてくれて。なかなか涙は止まらなかった。


 最近、涙もろくなってしまっている気がする。


 そして話が終わって落ち着いたころには、もう日が昇るところで。

 今までの様々な緊張がほぐれたのか、強烈な眠気が襲ってきた。

 考えてみればここ数日、忙しくも悩んでいたせいで、碌に眠れていなかった。泣いてしまったことがトドメとなったのか、眠くて眠くて仕方ない。


 眠気に耐えていたところで、私の様子に気がつき、その場で解散になった。そして、お兄様が部屋まで送ってくれたのだ。


 次に起きた時にはもう夜だった。たくさん寝て目が冴えていた私は、バルコニーにでて夜風に当たることにした。


 そこに現れたのが黒の魔女だったのだ。


 深夜の出来事を思い返して胸が温かくなり、早くレイも帰ってこないかな、会いたいな、なんて思っていたときだった。



「はぁ……この城の結界も強固で肩が凝るわね。思ったより時間がかかったけど……あぁもう、お喋りしている時間もあまりなさそうね。もう気づかれたのかしら。そろそろ行きましょうか、王女様?」



 その言葉に返事を返す間もなく。



「な!?……え?……な、に?」



 気づいたらその場に倒れ込んでいた。世界が、揺れている。

 急激にやってきたひどい眩暈に吐きそうになる。耳鳴りのようなものまで響き始めた。

 わんわんと耳の中に異音が反響し、突然の眩暈と嘔吐感が私を襲った。



「もうすぐあなたは気を失うわ。次に目覚めた時にたぁくさん、お話ししましょ?」


 そんな軽い口調とは裏腹に、これまで見たことがないほど冷え切った眼差しに、心臓が跳ねる。


 彼女の表情や視線からは強い恨みが感じられ、ぞくりと鳥肌がたったところで。


 意識が途切れた──




 そして今。私が転がされている床は、少しごつごつした石造りのようで。硬いところで寝ていたからか、体のあちこちがものすごく痛い。


 痛む体を叱咤して起き上がったところで声が聞こえた。



「気が付いたかしら?」

「っ!?」



 聞き覚えのある声に、はっと声のした方を見ると思った通り、黒の魔女だった。



「……黒の魔女」



 真っ黒な服を着た学園の森で会った女は満足そうに笑った。


(テオ兄のはこの人のせいで……!!)


「そんなに睨まないでくれる?安心して?全部終われば、安らかな気持ちになれるはずだから。それまでは……まぁ、ご想像におまかせするわ。まぁ私もわからないもの」

「……私をすぐに城に戻して」

「あんなに苦労したのに、はいわかりましたって言うとでも?大丈夫よ。最後にはテオバルト殿下が……テオ兄だったかしら?待っててくれているわ」



 この人は、最終的には私を殺すつもりだということはわかった。

 わかっていたことだけれど。


 どうするか。手には魔力封じの手錠が付けられており、足は自由だがこの状況で何ができるか。


 考えている間にも、黒の魔女は言葉を続けた。


「8年前……あのときの恨みを忘れたことはないわ。私の美しい顔に……よくも醜い傷をつけてくれて……」


 そう言われて改めて見ると、8年前はしていなかった顔左半分には仮面がついている。


(……私が付けたとでも言うの……?)


 身に覚えはないが、魔力が暴走しかけた時に悲鳴を聞いた気もする。だいぶ昔のことで曖昧だけど。

 


 彼女はコツコツと足音を響かせながら、少し歩いて立ち止まり、後ろを向いた。



「この日をどんなに待ち侘びたか……何をしてもこの傷を消すことできなかった……でも、同じ魔力なら……」



 そう言って彼女は再び私を振り返ったときには我慢をはずしていた。

 その顔をみて息を呑んだ。


 ──その顔は顔半分ほどが焼け爛れたようになり、瞼もなく眼球は剥き出しになっていた。

読んでいただきありがとうございます!

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