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夢に向かって猪突猛進な『不遇』王女には事情がある!?〜孤児院出身の王女は愛されることには慣れていません〜  作者: はな
第三章

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37、心配?

ルーナリアに戻ります



 遡ること数分前──



 ゆっくりと目を開ければ、見覚えのあるいつもの天井が目に入った。



「……ん…………」



 なんだか随分眠っていたような気がして、頭がぼうっとする。

 それでも胸に広がるのは喪失感で。


 私の目が覚めたことに気づいたのか、ナタリーは泣きながら駆け寄ってきた。



「姫様っ!!お体は大丈夫ですか?」



 その勢いに驚いたもののゆっくりとベットから起き上がる。


 ひとまず返事を返さなければ、と思う。のだが。


 『笑っていて』


 テオ兄のその言葉が思い浮かぶも、表情を作ることができなくて。



(……笑うって何だっけ。どうやって笑っていたかしら)



 しばらく間が空いた後に、やっと思い出した笑顔を浮かべて返事をする。



「………大丈夫よ。ずいぶん寝ていた気もするのだけれど……」



 ナタリーは私の顔を見て目を見開いている。何かおかしかっただろうか。思わず首を傾げてしまう。

 するとナタリーは慌てて答えた。


 あれから私は3日意識を失っていたらしい。医者に診てもらっても身体に異常はなく、原因はわからないという結果だったそうだ。



「レイモンド様もとても心配をしていらして……!!ずっといらっしゃったのですが、今はたまたま、少し外しているのですが……本当に、目が覚めてよかったです……!!」



 ナタリーは目に涙を浮かべてる。



「……そう……ごめんなさいね」



 私のことで時間をとってしまい申し訳ない。その思いから謝るも、ナタリーは涙目で眉間に皺を寄せて変な顔をしている。すると、ひとまずはお父様に報告して、お医者様を呼んでくるといって急いででていった。


(前にも、こんなことがあったわね)


 ふとここへ来たばかりの時のことを思い出す。


(あのときは、何が何だかわからなかったなぁ)


 ここにいてはいけない気がして。いきなりお父様だとか姫だとか言われた。


 懐かしい、とは思うものの、そもそも私がここにいるのは間違いなのでは。もっといえばテオ兄を死なせてまで、私は──


 そんなとき、ノックの音が響いて思考が途切れた。ノックの音がしたことを認識するのに時間がかかった。


 目が覚めてから、自分のことなのにこの感情も、体の感覚も現実味を感じられない。まるで膜に覆われているかのようだ。それはなんだか常に防御結界の中にいるみたいで。


 ただただ思うのは、私がいなければこんなことにはならなかったのでは、ということ。



 もうナタリーが戻ってきたのか。それにしてはとても早い。そういえば返事をしていない。ひとまず返事をしなければいけないか。



「はい」

「……ルーナ、レイモンドだ。……入って、いいか?」

「……どうぞ」



 声がうまくでなかったけれど、レイならいいかと入室を許可した。

 静かに扉が開いてレイがゆっくりこちらに近づいてきた。

 レイはずっとそばにいてくれたとナタリーは言っていた。


「……レイ、おはよう。私3日も寝てたのね。自分でもびっくりだわ」



 レイは目を見開いて固まってしまった。ナタリーと同じ反応である。

 何か顔についているのか。たしかに目が覚めてから鏡もみていない。さぞひどい顔をしているのだろう。


 鏡でもみようかと思ったところでレイが声をだした。


「目が覚めて、よかった。……みんな、心配していたんだ」

「……心配?あぁ、心配……そうね、心配をかけてごめんなさいね」



 心配とは。そういえばナタリーもそんなことを言っていた。そうか、たしかに3日も目を覚さない人がいたら心配もするのか、と納得する。

 私のことで時間を使わせてしまったのが、とても申し訳ないと思ってしまう。


 しかしまたしてもレイは変な顔をしている。私にしかわからないかもしれないけれど。


 すると扉の外から足音が聞こて、ノックの音がして扉のほうを振り向いたと同時にバンっと扉が開き、お父様が息を切らして入ってきた。



「ルーナ!!!」



 先ほども思ったが、やっぱり思い出してしまうのはこの城に来た時のこと。8年も経ったと思うが、人の本質は変わらないのか、同じことをしている気がする。



「……お父様。ご心配をおかけして申し訳ありません。診察はこれからですが、体調は大丈夫です」

「……ルーナ?本当に大丈夫か?無理はしなくていいんだよ?」



 きちんと笑顔で言えたはずなのだが、お父様も変な顔をした。そしてさらに心配してくる。そんなに心配されるようなことは、していないはず。やっぱり一度顔を洗ったほうがいいかもしれない。

 


「お父様……昔と、同じですね」

「昔?」

「ええ。私が初めてここに来たときも、足音が聞こえたと思ったらノックが聞こえて、バンっと扉を開けてました」

「そ、それはすまないな。驚かせるつもりはなかったんだ。当時も今も……」



 そんな話をしていると医者が来た。ナタリーも続いて入ってくる。診察のために一度ここにいる人たちは、ナタリーと医者以外は追い出されてしまった。









読んでいただきありがとうございます!

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