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夢に向かって猪突猛進な『不遇』王女には事情がある!?〜孤児院出身の王女は愛されることには慣れていません〜  作者: はな
第二章

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29、魔法実技の演習




 そして当日。


 夏に差し掛かる前の森は、春の花の残っている木も点在していた。足下にも色とりどりの花びらが落ちていて、色とりどりの地面のおかげで森の中だというのに暗さを感じさせなかった。

 


 私たちは4人でグループを組み、森の中を進んでいた。



「あ、青いリボンがあったわ」

「じゃあ方向はあちらですね」



 唯一実戦経験があるレイと索敵魔法が得意なフェリシアが、先頭を歩いてくれている。

 王女と隣国の王太子が一緒だといかんせんこうなってしまうものなのか。

 私も先頭に行きたいといったが、却下されてしまった。

 先に進んで待っていてくれる2人をみて、自分が勉強ばかりで外にでていないことを痛感する。

 テオドール殿下は私に合わせてくれている。



「改めて、お誘いありがとう、リア。なんか森の探検みたいで楽しいね」

「はあ、はあ……そうね。普段は森に行くこともないから……はあ、はあ、わくわくよね」



 しばらく歩いているが、見かけるのは小物の魔獣で角ウサギや牙狸ばかり。襲ってくるどころか、私たちに気づくと逃げ出すのである。まさしく演習とは名ばかりのハイキングになっている状況だ。

 しかし、普段勉強ばかりで運動不足な私はそれどころではない。テオドール殿下はなんともなさそうだけれど。

 しばらくそんな会話をしていたが、ふとテオドール殿下がレイをみたあとに真剣な顔で私を見つめた。



「ねぇ、リア。彼が君の婚約者候補ということはわかっているのだけど……」

「はぁ、はぁ、え……?」

「まだ、候補ということは、正式な婚約者ではないのだろう?」

「……そういうことに、なりますね」



 たしかに、彼の言う通り、候補ということは正式な婚約者ではないことを意味する。婚約式も上げていないのだから。

 やはり、私ももう16歳。この中途半端な関係はどうにかしたほうがいいのかもしれない。


 そんなことを考えていると、テオドール殿下は続けた。



「僕はね、この国に留学するにあたって、今は休戦中のこの国に、互いの国の和平のために行くという名目で留学が許されたんだ。今後、平和条約を結んでこの休戦中の状態を脱したいと考えている」

「そうですね。そうなれば一番いいと、私も思います」

「一番手っ取り早いのは何かわかる……?」

「え?」

「……でも、それだけじゃなくなってしまった」



 気が付けば足も止まっていた。気もそぞろになりつつも返事を返したが、頭ではレイとの関係を考えていた。疑問を投げかけられ意識が戻ったのもつかの間、私のことを熱のこもった目で見つめるテオドール殿下と目があった。


 この目は見たことがある。誰だったか。


 でもテオドール殿下がそういうことを言い出すのはなぜか。そして彼に対するレイの失礼すぎる態度も思い出す。謝っておいたほうがいいだろうか。



「あ……いつもごめんなさいね、レイの態度が……」

「え?急に話が変わったね。あれは僕も分かっていてやっているからいいよ。彼、面白いね。わかりやすくて」

「お、面白い……?」



 未だかつてレイを面白い人といった人とは会ったことがなかった。

 不思議に思いつつも、感じ方は人それぞれかと思いなおす。

 そんなレイはテオドール殿下が私と話すたびに、こちらをじと目で振り返るのだ。



「面白いかはともかく、わかりやすい?基本はあまり表情を変えないと思うのだけど……」



 私は付き合いも長いから無表情でも読み取ることができるけど、他の人からしたら無表情を極めている人にしか見えないと以前、誰かが言っていた。

 


「ふふっ彼はわかりやすいよ。君のことに関しては特に」

「私のこと……?」

「うん、みてて……ちょっとごめんね」



 そう小声でいったテオドール殿下はちらっとレイをみた。その視線にレイも気づいたようで、眉間にしわが寄ったのが見えた。

 そういえばいつからだろう。レイがこんな顔を見せるようになったのは。


 そして私の手を取とりテオドール殿下は自身の頬に触れさせた。

 私はまさかこうするとは思わず驚きから目を見開いてしまう。



「なっ」

「しっ!彼をみてみて」



 そう言われてそっとレイのほうを視線だけ動かし伺いみた。そんなレイは目を見開いたかと思うと、すごい勢いでこちらに向かってきた。


 

 しかしそこで耳をつんざくような警報音が鳴り響いた。それは以前、王城で聞いた音とも似ている。

 貴族の子供たち多く通う学校のため、警備も厳重であるこの学園には、何かあったときに警報が鳴るようになっているとは聞いていた。


 それがこれなのだろうと理解するのと同時に、自分たちの周囲に不穏な気配を感じた。


 先ほどまで少し先で呆れたようにこちらの様子を見ていたフェリシアが、顔色を変えて急いでこちらに来た。



「……まずいわ、囲まれてる。それに、この気配はおそらく上位種ばかりだわ……」



 おそらく魔物のことなのだろう。何故いきなり現れたのか。何故いないはずの上位種がいるのか。疑問ばかり浮かぶが、明らかな異常事態に背中に冷や汗が流れる。



 警報音が鳴ったことでテオドール殿下につかみかかる勢いだったレイは切り替えたのか、私のそばに来た。けたたましくなる警報音はいまだ鳴りやまない。



 



読んでいただきありがとうございます!

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