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夢に向かって猪突猛進な『不遇』王女には事情がある!?〜孤児院出身の王女は愛されることには慣れていません〜  作者: はな
第二章

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27/69

26、????視点




 最初に彼を見つけたのは私だったのに──




 今まで秘匿されていた王女のお披露目会。お父様から実は孤児院にいたという話は聞いていた。あまり興味はなかったけど、参加は必須だったから王宮に向かった。

 王女が来るまで待っている時、手持ち無沙汰のためあたりを不自然にならないよう見回すした、すると、ある1人の人物が目に留まった。


 その時、思ったの。


 あの今にも折れそうな体をしていても、損なわれることがない美貌を持った彼。

 

 彼を私のものにしたいと──



 お父様に彼は誰か聞くと、エスパーダ公爵家のレイモンド様だという。

 同じ公爵家で釣り合いも取れているし婚約者にちょうどいい、そう思ったのも束の間。

 


「彼は魔力なしだから、関わってはいけないよ」



 お父様は昔気質のため、魔力に重きを置いている。そのため出た言葉だったのだろう。


 私にとってはそんな粗末なことを気にしなくていいと思っていた。

 しかし、子供だった私はお父様がダメと言うものに、お父様の目の前で近づくことはできなかった。


 ゆっくり時間をかけなきゃいけないのかもしれない。幼いながらもそう思い、考えていたときにあの女がやってきた。


 ウェーブがかった淡いピンクブロンドの髪に大きな空色の瞳。

 王族の証である金冠の瞳を持ったその少女は不安そうにしていたかと思うと、すぐに立て直した。笑顔を顔に貼り付け挨拶して、近くにいた人と話し始めた。


 それだけだったら、何も思わなかったのに──


 何を思ったのか、あの王女は私のものになる予定のものを横から奪っていった。

 孤児院育ちのあの女もあの見た目に惹かれたのだろう。忌々しい。


 でも私も彼女もまだ子供。いつか奪ってしまえばそれでいい。

 それまでは彼にもいい印象を持ってもらって、好意を持ってもらわなければ。そう、思っていた。


 そのためにはすこし癪だけど、王女という立場を振りかざしているあの女にもいい顔をしておかなければならない。


 婚約者候補というよくわからないものになったこともあり、彼に近づくには王女にも近づかなくてはいけなくなってしまった。



 そして年月が過ぎ、彼は魔力なしと言われていたころから大きく変貌を遂げた。国一番の騎士、英雄などと呼ばれるようにまでなった。


 それは喜ばしいことなのだが。みんなが彼に注目しはじめた。

 魔力なしと言われていた頃は関わろうとすらしてなかった分際で。


 私を彼の美貌と名声だけを目当てにした、ぽっと出の女たちと一緒にしてほしくはない。

 幼い頃、彼の美貌に一目ぼれした身ではあるが、相応しい女であれるよう日々精進してきた。



 そんなある日、お父様から呼び出された。嫌な予感がした。



「お前に、婚約の申し込みが来ている。……意味は分かるな?」

「……はい」



 ギュッと目を瞑って頷いた。


 私ももう16歳。公爵令嬢で婚約者がいないほうがおかしいことは分っていた。

 分かっていた事ではあったが、胸が締め付けられるように痛んだ。


 私の想いを知っているお父様は申し訳なさそうだった。

 最初に関わってはいけないといったのはお父様だから。



「よろしい。では下がりなさい」

「……おやすみなさいませ、お父様」



 挨拶をして、父の部屋をでる。なんとか自分の部屋に戻ったがそこまでだ。

 足元から崩れ落ちた。



「どうして……?」



 押し付けがましくない程度に、それでも精一杯好意を伝えてきたつもりだ。

 そしておそらく彼も私に好意を持っているだろう。

 あの女の護衛騎士でもあるから2人きりではないが、一緒にいるときは表情がやわらかいもの。


 学園が始まると彼に毎日会える。それだけが楽しみだった。あの王女もどきも一緒なのは嫌だったけど。

 最初のほうはいつも月1回のペースで招かれるお茶会の時は見かけるだけだった。あの女が彼を我が物顔で独り占めしていた。そのせいでちゃんと話すことができたのは狩猟大会から。それ以降は誘えばときおりお茶会にも来るようになったが、彼はどんなときでも聞き役であった。

 だんだんと男らしい体つきに成長しているのに損なわれない美しさ。幼いころに私が思ったことは間違いなかった。



「レイモンド様……」



 初めて彼が微笑んだのをみたときには、息が止まるかと思った。

 どんな女を目の前にしても表情一つ乱さない彼が、私の前で見せた笑み。

 それは私が見たいと思っていたものに他ならなかった。それを見せてくれたのだ。


 もう私と彼の想いは同じだと確信した。

 しかし彼はいまだにあの王女もどきに付き従わなければならない。


 悪いのは全て、いまだにレイモンド様を縛り付けているあの忌々しい王女もどきだ。



「許せない……」



 彼は私のものなのに。彼の隣は私の場所なのに。胸の中に小さな炎が燃え上がる。それはあっという間に燃え広がり、瞬く間に私自身をも埋め尽くした。


 私はその激情に身を任せ、拳を握りしめる。表面では笑顔を張り付けながら、心ではただひたすらに女を睨みつける。


 そう思っていた時に、声をかけられた。



「あなた、あの王女様のこと、嫌いではなくて?……少しお話いいかしら」



 なんでわかったのか。そのときはそう思ったけど間違ってはいない。

 話しかけてきたその女をみつめると、笑いながら話し出した。



「ふふっ別にあなたに損になるような話ではないわ。私、孤児院育ちのくせに王女面しているあの女があまり好きではないの。あなたもそうなのかと思って」

「……そんなこと……ないわ」



 女がそう言うという事は、自分が嫉妬に狂っていたのがバレたという事だ。

 隠していたはずなのに。

 何とか誤魔化そうとしたが、簡単に躱されてしまう。



「嘘をおっしゃい。あぁ、隠さなくても大丈夫よ。あなたと私は同じで、あの女が邪魔。ただそれだけなのだから。あの女がいなければ、彼の隣にはあなたがいたかもしれないのよ?」

「……それは」



 それは私も思っていることだ。それ以上どう言葉を返すか迷う。

 そこを女は一気に畳み掛けてきた。



「ね?私とあなたは理由は違うけれど、それでもあの女が好ましくないという意味では同じなの。あの女がいなくなればいいことばかりだと思わない?ね、それくらいなら私たち、色々と協力し合えると思わない?」

「協力……?」



 妙にひんやりと感じてしまった言葉に、つい問い返してしまう。

 女はふふふと蠱惑的な笑みを浮かべた。



「実は、ある方があの女を欲しがっていてね……」



 そして聞いた話には驚いたが、これであの女を私の前から消すことができる、と思った。そう思った途端笑いが込み上げてくる。



「ふふっふふふっ。いいわ協力してあげる。その代わり、絶対に成功させなさいよ」

「もちろん。……私も成功させなきゃいけないのよ」



 にんまり笑ったのは私か、それとも女か──



 そのときはまさかあんなに使えない男爵令嬢をつれてくるなんて思いもしなかったけど。


読んでいただきありがとうございます!

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