24、解放とは
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無事にお兄様の誕生日会も最後まで参加できた。
それはよかったが、ネージュラパン王国のテオドール王太子殿下。
私の動揺はなかなか治らず、夜会中も気もそぞろになってしまったが、レイがファローしてくれた。
そんな私の心とは裏腹に、あっという間にときは過ぎ、週明け。
「本日から1年弱、よろしくお願いします」
黒板の前で挨拶をしているのはテオドール王太子殿下である。私たちと同じクラスになった。歳はたしか2つ上だが、本人の希望で2年生となったようだ。
そうなると、クラスは魔力量と学力から決まるため、こうなるのだろう。
どこの国でも大体、家格にがあがるにつれて魔力量が多い傾向がある。
テオドール殿下は私と目が合うとにこっと笑った。すると違うところからも視線を感じた。そちらをみてみると、レイだった。
(……レイ……?)
どこか思い詰めたような表情で、私を見ている。何かあったのか。
休みの時間になったら聞いてみよう。そう思っていたのだが。
2年生になり、授業も座学だけではなく実技も増えたことで移動教室が多くなった。そのためレイに何も聞けないままお昼休みになった。
(でも食事しながら落ち着いて話せるかな)
そう思っていたところ、レイが教授に呼ばれた。私から離れることに少し躊躇しているようだ。しかし食堂も席が埋まるかもしれないので、席を取っておくことと、学園内だし大丈夫と送り出す。
それでもすぐ戻るといい、ちらちらこちらを振り返りながら走っていった。
そしてお花を摘んでからいくというシャルロットと別れ、フェリシアと2人で食堂へ向かうことにした。
「ちょっと!!待ちなさいよ!」
途中、そんな聞き覚えのある声が聞こえるも私のことではないと思っていたのだが。
「聞いてるの!?そこのピンクの髪のあんたよ!!」
ピンクの髪。それは私のことなのか。そんなふうに呼ばれるのはそれこそ孤児院ぶりなので驚いてしまう。
私個人としてはそれでも構わないのだが、完璧な王女を目指している身としてはどうしたものかと逡巡する。
「……私のことを、呼んでいらっしゃるの?」
「あなた以外にいないじゃない!言いたいことがあるのよ!いつもレイモンド様と一緒にいるのをこれ見よがしに見せつけて!」
「……見せつけているわけではないのだけど。彼は私の護衛だもの」
「いい加減、レイモンド様を解放してあげなさいよ!いつもあなたに付き合わなきゃいけないレイモンド様が可哀想だわ!!」
私の話は聞いているのかいないのか。咄嗟にセンスを広げた。顔半分を隠してどうするか考えている間にも、フェリシアが私の前に立った。
「控えなさい。無礼な。学園の外であれば不敬罪になるところよ。この方が誰だかわかっていて?」
「そ、そんなこと!身分をかさに着てレイモンド様を振り回さないでっていっているだけじゃない!!」
「身分をかさに着るも何も、あなたみたいなひとから守るためにエスパーダ公爵令息がいるのよ」
「うるさいわね!あなたに言ってないのよ!私知っているんだから!レイモンド様は王女様に逆らえなくて嫌々いうことを聞いているって!本当は王女様から離れたいのに、権力があるから逆らえないって
……!!」
私の権力なんて、それこそあまりないとは思うのだけど。と思ってはいけないのだろうか。でもまあ確かに。レイは私の護衛騎士だから私から離れたくても離れられないときはあるだろう。たしかに本人の口から聞いたことはない。確認してみたほうがいいのか。
「……だ、そうだけれど。そうなの?レイ?」
「え!?」
ちょうど用事がすんだのか、急いで戻ってきたレイがちょうど来たため聞いてみる。レイはこの騒ぎの中心に私がいることが分かったのかすぐに隣に来てくれた。
「……そんなわけないだろう。俺が好きで護衛騎士になったんだ」
「……だそうよ?どこで聞いたか知らないけど、噂を鵜呑みにするなんて、バカな子ね」
「……っ!」
最後にフェリシアが追撃すると、ルイーズは何も言えなくなったようで、顔を真っ赤にして黙り込んでしまう。ものすごい表情で私のことを睨みつけると集まっていた野次馬を押しのけて去っていった。
「……なんであんなことを言いに来たのかしら」
「……あとで話そうと思っていたけど、今あなたに関するよくない噂があるのよ」
「……噂?」
「ええ。あなたが王族の権力を使ってレイモンドを婚約者候補兼護衛として縛り付けているって。まあ、それを鵜呑みにしている人はほぼいないけど。ひとりいたわね」
「うーん、でもたしかにそれは否定できないかも……」
レイを助けるためと思ってのことだが、私の一存で婚約者候補にしてしまったのは事実だ。
「それは違う。俺は好きで騎士になったんだ。ルーナが気にすることじゃない」
「……うん。ありがとう、レイ」
そう言ってくれたレイに笑いかけるとほっとしたように微笑んでくれた。その笑顔にどきっとしてしまったのは私だけではないようで。
キャーっと黄色い声が背後から聞こえた。
「……笑った。レ、レ、レイモンド様が微笑まれましたわ!」
「あ、あのレイモンド様が微笑まれるなんて!レイモンド様は端正な顔立ちをされていますから、真顔が一番素敵だと思っていましたけれど、笑顔はなんて破壊力なのかしら」
「心臓が止まってしまうかと思いましたわ」
レイはとても人気があることがよくわかった。
またもやもやしてしまった。これはなんなのだろうか。
「……ここは騒がしいわ。行きましょう」
フェリシアが扇子で顔半分をかくしながらも眉間にしわを寄せてそういうので、おとなしくついていくことにした。
「さすがルーナリア様だわ」
「レイモンド様のあの表情を引き出せるのはルーナリア様しかいないわね」
などという言葉は、残念ながら早々にその場をあとにしたルーナリアの耳には入らなかった。
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「も、申し訳ありません……」
そのころ、退散したルイーズは真っ青な顔で謝罪していた。
「こ、今度こそは必ず……」
「もういいわ。噂を広めることも力を貸したのに……あなたが使えないってことがよく分かったから」
「そ、そんな……!」
「まあ、どうしてもというなら最後のチャンスをあげるわ」
「あ、ありがとうございます……!!」
「それじゃあ………」
そうして告げられた言葉にルイーズは目を見開いた。
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