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孤児院育ちの王女は、護衛騎士の重すぎる愛に気づかない  作者: はな
第二章

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22/69

21、焦げた春の日



 それからは警戒するも何事もなく、とはいかなかった。


 件の男爵令嬢、ルイーズとはその後も何度も顔を合わせることになった。


 私のことは目に入っていないのか、いつも一緒にいるレイに話しかけている。


「あ!レイモンド様!またお会いしましたね!運命ですね!」

「違います」


「あの、このクッキー、作ったのでよければ……」

「結構です」


 何度も同じやり取りが続いた。


「きゃーっ!!……んぎゃ!」

「……」

「いったぁ~いっっ!」



 最後のはなんか、どどどどっと猛スピードで足音が聞こえてきたためレイが身構えたが、一応制服が確認できたからかどうすることもできず。


 そのまま突っ込んでくるところを躱していた。


 するとその正体はルイーズで、尻餅をつき痛いと言いながらも涙目でレイを見つめていた。


 レイは一瞥した後、私を促してそのまま去った。

 まるで「見なくていい」とでも言うように。

 レイは私とルイーズの間へ滑り込むように立ち、そのまま私を促して歩き出した。


 レイも最初はやめてくださいや、離れてくださいなど拒絶の言葉ではあるが言っていたが、今はもう無視である。


 何を話しかけられても反応しない。

 反応するからいけないのかと無視したようだったが、結果は変わらないようだ。


 レイはひらりひらりと華麗に躱して逃げている。


 私がレイにこんな対応されたらしばらく立ち直れない。

 鋼の精神とはこのことかと思いその様子を見守っていると、最後には必ず私を睨んで去っていくのだ。


 何がしたいのかよくわからない。

 私は何もしていないのに。


 ちなみに私は基本眺めているだけになった。


 何か私が口に出すと「ひどい!私が元平民だからって」といつも同じようなことを言われるのだ。

 最初は否定していたが、何度も同じ会話をしたからもういいかと思った。


 最初はレイに引っ付こうとする彼女をみてていると不思議ともやもやしていたが、レイのあまりの対応にそれもいつしか消えていった。


 レイとシャルロットが話しているところを見ると、なぜか胸が苦しくなる。


 その理由だけは、まだ自分でもわからないままだ。



 ◇◇◇


 そしてそんな日々が続くも2週間がたち、今日はこのシュルーク王国の王太子の誕生日である。

 王太子となって初めての誕生日であり、そのお祝いで街中でもお祭りムードが漂っている。

 

 今日は週末で学園はお休みの日である。


「おはようございます、お兄様!!お誕生日おめでとうございます!!」

「ふふっありがとう、ルーナ。朝一番でお祝いしてもらえて、とても嬉しいよ」

「セオドア、おめでとう。ルーナは自分の誕生日のときより嬉しそうだな」


 朝食の席で開口一番お祝いを伝えると、お兄様は嬉しそうに笑った。

 お父様にも少しおかしそうに笑われる。


「お誕生日プレゼントは、今お渡ししてもいいですか?」

「持ってきてくれているのかい?ありがとう」


 そんな雰囲気で朝食の時間は楽しく過ぎていった。

 今日は王太子の誕生日ため夜にパーティーが開かれることになっている。

 私も成人したことで初めて最後まで参加できる夜会となる。


 そのためその準備までに気になっている魔法を試してしまおうと思っていた。



「あ!レイ、逃げて!」

「!?」


 するとドォンという耳をつんざくような爆発音が響き渡った。


「いててて……また失敗したわ。難しいなぁもう…」

「ルーナ……今度は大丈夫と言って早56回だ」

「えーそんなこと言わないでよ!」

「もう“大丈夫”という言葉は信用を失ったな」

「次こそはうまくいくと思ったのよ……」


 2人していつものごとく真っ黒こげになり、レイは私の顔をハンカチでふいてくれる。


「これで成功していたら、誰も苦労していない。今日はもう終わりにして着替えに行こう。まだ昼食も食べてないじゃないか……」

「えっもうそんな時間!?戻りましょう!ごめんなさいね、つき合わせちゃって。レイ、お腹すいたわよね……」

「いや、俺は構わないのだが……」


 その言葉に急いで片づけをしている私をレイは手伝って荷物も持ってくれる。


「それに今夜は王太子殿下の誕生日パーティーだから、もう支度をしないと。女性は時間がかかるだろう」

「あ!!そうだったわ!急がなきゃ……!」


 その言葉に思い出したのはナタリーの言葉。

 顔を青ざめさせて自室への道を急ぐが案の定、顔を真っ赤にしてナタリーが怒っている。


「姫様!!何回言ったら真っ黒焦げになるのをやめてくれるんですか!!特に今日はパーティーがありますと!あれほど……あれほど言いましたのに!!」

「えーん!ごめんなさい!うまくいくはずだったのよー!」

「そのいいわけは聞き飽きました!!姫様はいつもいつも……」


 レイモンドに助けを求める視線を送るも黙殺される。

 見捨てられたルーナリアは、お説教が続いてる中お風呂に連行された。


 湯船で洗われ、温かいお湯の中ぼやいてしまう。


「大魔法使いへの道は遠いわ……」

「まだ姫様は16歳なのですから、そこまで焦る必要はございませんでしょう」

「うーん、そうかも知れないのだけど……テオ兄との約束があるから……」

「それは、まぁそうなのでしょうけど……」


 もう何度目かもわからないやりとりをしている間にも入浴は終わり、マッサージが始まった。

 相変わらずナタリーは手際がいいわ、なんて思っていた時にお腹が鳴った。


「そ、そういえば……あの、ナタリー。私のお昼ご飯……」

「時間が押しているのでございません」

「そ、そんなぁ……」


 容赦のない言葉に絶望し涙目になってしまう。


「……マッサージが終わったらつまめる軽食を用意してます。それまで我慢してください」

「本当!?ありがとうナタリー!!大好きよ!」

「今はマッサージ中なのでじっとしてください!!」

「あたたたっ!」


 抱き着こうとした私を察知したのか偶然か、痛いツボを押された。

 ここは寝不足のツボです、と言っている。


「今日は私が成人して初めて最後まで参加できるお兄様の誕生日パーティだもの!しっかり準備しなきゃよね!」

「そうですよ。だからあれほど……」

「も、もうお説教は大丈夫!そっちはお腹いっぱいよー!!」


 またお小言が始まりそうだったので遮った私は悪くないと思う。


「それに、今日はレイモンド様が贈ってくださったドレスなのですから、レイモンド様のためにもしっかり着飾りませんと」

「そうよね!せっかく贈ってくれたんだもの!ね………」

「え?姫様、何かいいました?」

「いえ!何でもないわ!私も頑張るわ!」

「その調子です、姫様。あとはくれぐれも公の場で素は出さないようにだけ気をつけてくだされば大丈夫です」

「それはいつものことだから多分大丈夫よ!」

「その多分が心配なのですが……」


 そんな話をしながらもナタリーの手は止まらず、どんどんと支度が進められていった。


読んでいただきありがとうございます!

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