第29話 結城 独逸商人と交渉
9月のある日
”ゆうき”
日本橋の骨董屋から柄の組みひもがくれない色になった、刀剣ができる日なので姉さんは仕事の帰りによって気分よく原付自転車で帰ってきた、、背中のリュックに桜や梅の花柄の刀剣袋を差し込んでいた、刀身が少し短いのでちょうど柄の部分が頭に出るぐらいリュックとサイズ感はあっていた、花柄の刀剣袋もサービスで作ってもらったらしい、、よく気がつく店主だと思った。早速、刀を取り出してさっちゃんに見せていた、、さっちゃんは夕飯の支度で忙しくて、、「じゃまばすんでね~だ~、あっちいってくんろ!!」といって姉さんに文句をいった、
そして今度は俺のところに持ってきた、うん?、、あれ~?、、と思いながらちょっと貸してと姉さんから刀身を受け取り耳をすました、、やはり聞こえる、、じじ~がうれしそう~にしている声が、俺はその刀身を両手に握り目の前に持って来て静かに目をつむり強く集中して心で問いかけた、、、20分程
姉さんは不思議な顔をしておとなしく俺を見ていた、、
さっちゃんの「だんなさ~めし、できたべ~」で俺は話しをやめた、、、、
そしてご飯を食べながら、姉さんに教えてあげたこの刀がこれまでどうしてきたか、、壮絶な物語を、、、そして最後は田原坂の激戦地での両軍が見つめる中での代表果し合いとなったことや、隠れていた狙撃兵10名の一斉射撃で刀の先が欠けたことなど、、姉さんは涙を流しながら、、「さっちゃんおかわり~」と3杯めのごはんを頼んでいた、、
(泣くか~食うかどっちかにしろ~)片山久安じじ~
そしてこの取り付いている名前を言ったら姉さんは「めんどくせ~名前だな~,う~ん、”安じ~”でいいよ、うん、、こいつは”安じ~”だ!」と名をつけた
悪い物が取り付いているわけでなく、逆にねえさんに何かあれば目をつむって刀を握っているだけで姉さんの体を勝手に動かし天下一の居合で切っちゃうと言ったら姉さんは「切っちゃうのはまずい、まずいよ~この時代でも人殺しになるから、、峰打ちよ いい”安じ~”峰打ちだからね、」ほら~結城からも言っておいてよ~、、俺はもう一度、目をつむり集中してつながったどうもこちらで姉が言っていることはみんな伝わっているようだ、、そしてお願いが一つあった、「ねえさん、、”安じ~”たまに血がみたいって、、手術室でも持っていけば~”安じ~”喜ぶよ~」
「え~しょうがないな~」と言いながら、”安じ~”が取り付いた刀を片時も離さず、、寝る時もいっしょだった。、、、
次の日のお昼の手術室
え~先生それ刀ですか~、お弁当を食べ終わりみんなでお茶を飲んでいた、、私がもってきた花柄の刀袋をのぞいていた、、私は婦長さんにそういえば、、午前中の手術の止血ガーゼはどうしているの、と聞いたらそばの汚物缶を指さした、、私は手袋をして少し血がついたガーゼを取りだし刀身を抜きそこに近づけた、、そのとき刀身が細かくバイブレーションした、、それを見た手術場のみんなは、、なに~それ~おもしろい、、わたしにもやらせて、、わたしにも、、だ~れも怖がらなかった、、すっかり、みんなのおもちゃになってしまった”安じ~”である、、、、”安じ~”はそれから毎日、手術場で最高の祝福の時を過ごしたのである、、、
9月のある日
”結城”
俺はついに独逸の商社の支店長ナインハルト・フォン・ヘルマン卿のホームパーティーの招待状を関係者にお願いしてやっと手に入れた。白人が人で日本人はサルと思っている奴らだ、俺みたいなものは絶対呼ばれない、、俺は関係者を通じて””村正”をヘルマン卿にプレゼントしたいという話しを伝えてもらっていたのさ、、これで俺は堂々と奴と面会ができる、
それで姉さんにその話をしたら、、、、、言わなければよかった、、、
「私も行く! 絶対にいくから!本場の独逸ビールが飲みたい、、本場のソーセージも食いたいよ、、ねえ~連れて行ってよ~、、」
俺は姉さんにこの時代の独逸人についてよ~く聞かせ英国人を嫌っていてクラシックだけが音楽だと思っている人達で日本人の女でもどんな嫌がらせをするかわからないよ、、といったら「大丈夫、”安じ~”も連れて行くから、、、」
も~これはなにを言っても駄目だな~と思い、、、考えた、、、俺は刀いがいにピアノで何か弾こうと思っていた、英国の歌は御法度だ、そして管弦楽組曲に日本でカバーし大ヒットしたあの曲を弾こうと練習していた、姉さんにその話をした、、姉さんはガッツリ乗ってきた、俺はスマホの曲をすぐに独逸語に訳した楽譜を渡し二人で練習した、、、、
当日になった俺はいつものタキシード、、ねえさんは、ねえさんは、軍人、、ねえ~それって、、親衛隊、、、ねえ~ナチスの親衛隊じゃないの~
膝まであるようなヒールのついたピッタリ、足のライン合わせたブーツ、、そしてこれまたぴた~と姉さんのモデルのような足とお尻のラインにそった真っ黒な伸びるデニムパンツ腰にはぶっといベルト、おへそところは学園祭につけたドクロのバックルに左の腰には、儀仗隊がつける腰のサーベルのように長さもちょうどあう”安じ~”をぶら下げ襟が大きく斜めに走るジッパーの黒い皮のライダーズジャケット、、黒いシャツに赤い細身のネクタイ、、真っ赤なルジェーを塗り、、アイシャドーも濃いめ、、、髪をオールバックに固めて、、頭にはマーク少佐からか借りたつばがついた黒い軍帽そには英国近衛師団の記章が、、、、胸にはこれまたマークから借りたわけのわからない記章をそれぽっくつけていた、、、
それでムチをもてば、、、、、、ヤバイ奴
姉さんは言った「ど~せ人間には見られていね~し、サルの日本人がどんな恰好しようが、かまわないよ~独逸人は軍服に弱いんじゃないの~これくらいかましてやらないと~」とヤンキー尚美がそこにいた、、
まちがいなくかっこいい、、俺はドンピシャだが、、招待客には駐在武官もくるし、、わからん、、なんかあったらすぐ追い出そう、、と思い馬車をチャターして俺たちは御邸宅に向かった、、
”ヘルマン卿の邸宅”
ホストのヘルマン卿48歳と奥方のフランシスカ夫人42歳それと長男で今回、たまたま日本駐在武官として来日した独逸帝国陸軍バイエル師団ナインハルト・フォン・クルト中尉23歳、そして、双子の娘ニーナとハイリー 16歳だ、、、ほとんどが独逸人の招待客、長男の関係で若い独逸軍人が1/3ほど来ている、、あとは俺の歌えるピアニストのファンも少々来ており手を振ってくれた、、ほとんど御夫人、、
桐箱に入れた”村正”を丁重にヘルマン卿に「御招待いただきまことにありがとうございます、、これはほんのご挨拶です、、よろしければお受け取りください、、」相手も中身を知っている、、ありがとう、、と言いながら受け取った、、そして俺は、「後でお話ししたい事があります、お時間を少々お願いします、、」と言って顔を見ると、うなずいてくれた、
”ヘルマン卿”
儂はユウキの事は知っていた、デービス・エドワード卿の誕生日のパーティーで英国のつまらない歌で取り入った事は知っていた。そして儂のコレクションにどう~しても欲しかったこの”村正”、(2000万円)だぞ、儂は店主にその額を聞いてためらってしまった買えない事はなかったが、日本人相手にもう一儲けでもしたら買おうと決めていた。それほどの金額の物を儂に会いに来る為にだぞ、、ただその為に(2000万円)こいつ何者だ~後でゆ~くり話でも聞いてやるか、、
長男ナインハルト・フォン・クルト中尉23歳
なんじゃ~この女~すげ~~かっこいい、、こんな軍服見たことね~軍帽もかっこいい~かぶりかたしてる~俺もマネしよ~と、あれ~あの帽子の記章は、、英国近衛師団の記章では~、、まあ、かんけね~けど、、あのジャケットどこで買ったのか後で聞きに行こう~と。
”双子のむすめニーナとハイリー”
挨拶にきたユウキかっこいいオールバックでサムライ、これがサムライよ、、と思っていたら後からきた姉をみて心臓が止まった、、止まったあとズキューンと撃ち抜かれた。なに~この貴公子、男装の軍服貴公子その真っ赤なくちびるに、、鷹のような~瞳、、え、女性よね、、、そんな男性のような恰好して、、素敵、、素敵、初めてこんな人を見るのは初めてあ~いつまでも見ていたい、、名前、、そうよ名前、ナオミと言ったわ、男装の貴公子ナオミ、、すぐ挨拶にいこう、、、
と双子は同じ考えをしていた、、、、
そして姉さんと会場に入った、、え、、姉さんはどうしたか~、みんなからの大注目~~とくに若い女性、双子のニーナとハイリーはドンピシャストライク、、眼はハート、ベルばら、そう、タ〇ラヅカだ、男装の貴公子尚美、、、会場騒然、、、貴公子尚美のブーツがコツコツコツと響いて歩くとその後ろには若い女性たちが挨拶しようとついてくる始末だ、、
俺と姉さんはボーイさんから独逸ビールをもらいメイドさんから念願の本場のソーセージを取り皿にいれてもらった。空いてるテーブルに座った、姉さんはソーセージを一口食ってはビールをグビグビ、一口食ってはグビグビ、、、、周りのタ〇ラヅカファンの目を気にせず堪能していた。
”ヘルマン卿”
ホストの開宴の挨拶も終わり、、、、家族とのテーブルで桐箱から刀を取り出した、刀身を抜いて右手に持ちじ~と見いって悦に入っていた、これだよ、、この波紋、、これはりっぱな芸術品だ、、これは儂のコレクションの中で一番だ、、あの日本人のサル、ユウキは何を相談したいのか、まあ儂ができる事は
何とかしてやろうか、、、、
姉さんは腹を右手でポンポンと叩いて、食った、食った~と言ってご満悦だった。それからが大変だった姉さんが食べるのを待っていたんだろう、、”ヘルマン卿”の双子の娘ニーナとハイリーを先頭に会場にいたティーンエイジャーはほぼ並んでいた。
真っ赤なルージュで妖艶な笑みを浮かべ姉さんは立ちあがった。俺は姉さんの元へやってくる少女達の熱心な思いを通訳していた。姉さんは知っている独逸語の単語をくりかえすだけ、、
”Wie geht’s?|元気?、Danke schön|ありがとう、Tschüs|ばいばい”
この3語だけで会話がなりたった、、、、恐ろべし男装の貴公子尚美、、
散々サインやら握手をして、少女たちが自分達のテーブルに戻ったら、、次はドイツ軍団がやってきた、、長男ナインハルト・フォン・クルト中尉を先頭に
”Wie geht’s?|元気? Danke schön|ありがとう Tschüs|ばいばい”
またしても、これだけで姉さんは逃げ切った、、、、
長男クルトからはそのジャケットどこで買ったの~?と聞かれ、、、姉さんに伝えたら ”UENO、、AMEYOKO”とクリスに返事していた、、、、、、
まじか~間違いないが、、あと6~70年後だろ~と俺は思った、、
(彼ら若い士官たちは尚美の影響を受けて第一次世界大戦が始まったとき将校の間では皮ジャンのジャケットが大流行した。、、、)貴公子尚美のパパ
宴もたけなわになり、、ピアノ弾きの俺の事を知っている酔ってきた客がさかんに「ユウキなんか歌ってくれ、、」とあっちら、、こちらから、、リクエストがやってきた。
俺は立ち上がりホストの”ヘルマン卿”を見ると弾くようにと目であいづを送ってきた、そして自ら立ち上がり拍手をしてきた。、、それをあいづに他の客たちも拍手をし始めた。
姉さんも立ち上がり互いの顔を見て頷き二人でピアノのそばに行った、、、、ピアニストは立ち上がり一礼をして下がった、、俺は彼のぬくもりが残る椅子に座り姉さんを見た、、また見た、、二度見した、、、いつの間にか俺のお気に入りのレイバンのサングラスをしていた、、このやろう~と思ったが、軍帽を斜めにかぶりなぜかカッコよかった。
そして俺は静かに奏で始めた、、、そして姉さんの素晴らしいドイツ語での歌声が奏で始めた、、、、
イギリスの作曲家ホルストの管弦楽組曲『惑星』より
第4楽章「木星」別名”ジ〇ピター”
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Ev~~~y day ~~ list~en t~~ my h~^rt♪♬~
♪ひ~~じゃ~~い~♪~
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深~~~奥で ~~が~てる♪~
果て~~い~~越~て~~星が♪~
出~~奇跡 ~~教~て~~る
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Ev~e~~y day ~~ list~en t~~ my h~art
♫~♪~
♪ひと~じゃ~ない♪♬
この宇~~~御~~~に 抱~れて♪~
私の~~~手で~ 何~で~~~の?♪~
痛~~~~~~~ そっと目~~閉じて♪~
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姉さんと俺の伝説の第2章が幕をあげた、、、、、、
つづく、、、、、、
”結城”
このあと涙を流し感激した”ヘルマン卿”から速攻で試薬を取り寄せてもらう事になったよ、、、土産にソーセージをこれでもか~ともらたよ、さっちゃんと姉さんとなぜか正岡先生と渋沢先生が遊びに来て1日で全部食っちまった。