ダグラス:”水雷龍”ガノスオウガ
■Side-ダグラス
「何とかなるもんだな……」
思わず、感嘆の声をあげる。
サフェスアロイを解体して得た素材のほぼ全てが、ジャイアント・ハルキゲニアに乗った。
俺の言葉に、レジーナが答える。
「多分、積載量も考えて手配してくれたんじゃ無いかな?」
「当然といえば当然か……そもそも、出る前に考えておくべきだったんだが……」
ノダ……あいつは、ちょっと何考えているか分からない所があるよな。
「なに、問題が無いうちは悩む必要は無いさ」
そう言ってサムが軽快な身のこなしでハルキゲニアに飛び乗り、手綱を握った。
「まあ、今考えることでは無いか」
それに習って、俺たちも乗り込んでいく。
「次は、湖だったな」
「ああ、今晩にも着くと思うよ」
サムの操縦で、ハルキゲニアが走り出す。
火山を降り、密林を抜け、夕暮れには湖にたどり着いた。
全長の長いハルキゲニアは密林を抜けられるか疑問だったか、器用に体をうねらせる事で通り抜ける。
マジで、運搬能力が高すぎる。
「なあ、こいつの賃貸料ってどうなってる?」
「私は……聞いて無いね」
「僕も知らないよ?」
「……」
これだけ優秀な乗り物(生物)を、何の対価も無しに借りられるはずがない。
「これは、やられたかもな」
俺の言葉に全てを察したのか、レジーナが額を押さえながら答える。
「ギリギリ、許せるラインを突いてくるのがいやらしいね」
「全くだ」
「ダグラス君……あれ」
彼女が示す先に、大きな影が見えた。
遠目で分かりにくいが、全高は六メートルぐらいか。
サフェスアロイよりはひとまわり程小さい。
全身が鱗に覆われ、二足歩行の恐竜の様なフォルムをしている。
前足は翼の様に大きなヒレが生え、尻尾は尾びれになっていて、背びれも付いていた。
「あれが……そうか」
「”水雷龍”ガノスオウガ」
ガノスオウガは俺たちに気づかずそのまま湖へと入っていく。
しばらくその様子を見送ってから、レジーナに問いかける。
「この位置は、大丈夫か?」
「ちょっと、危ないかも」
「しかし、密林の中も安全とはいえないしな……」
「あそこは?」
そう言って、ペンギーが遠くを指差した。
湖は大きな鍾乳洞と繋がっていて、かなり高い位置に大きな横穴が見える。
「よし、今日はあそこでキャンプをしよう」
翌朝、俺たちは鍾乳洞の中にある大きな湖の前に来ていた。
「外の湖とここは、中で繋がっているのか」
昨日、遠目で見たガノスオウガが悠々と泳いでいるが見える。
レジーナはバックを下ろし、中からボールの様な物を取り出した。
「今からガノスオウガを湖から地上に引っ張り出すね」
「それ、何なんだ?」
「サフェスアロイのアレ」
「ああ、そりゃぶちぎれて出てくる訳だ……」
「えいっ!」
レジーナがボール状に固めたアレを湖に何個か投げ込む。
底まで見える様に澄み切っていた湖が、一気に焦げ茶色に染まっていく。
「ギィィィイイヤヤァァアアアアアアアアアァァァア!!!!」
甲高い咆哮と共に、水面からガノスオウガが飛び出してくる。
「がぁぁぁああああ!!!」
その飛翔に合わせて、ペンギーも飛び上がる。
空中で正確に対象を捉えた彼女が大鉈を振るう。
「ギュイィアアアアアァアア!!」
ガノスオウガは腹部から尾にかけてを深々と切り裂かれ、空中で姿勢を崩す。
そのまま地面に激突し、鮮血を撒き散らしながら地面を魚の様に跳ねる。
「今だ!!」
千載一遇のチャンスを逃すまいと駆け寄って、俺とサムで大きなヒレをズタズタに切り裂く。
「ギィィイ!!」
ガノスオウガが立ち上がり、ぐるりとその場で一回転する様にして俺たちを振り払おうとする。
「くらえ!」
迫りくる尾ひれに対してタイミングを合わせて、ハルバートを叩き込む。
ガラスの破れる様な破裂音と共にスキルが発動する。
強力な鱗を貫通し、尻尾を切り落とした。
「ギィアァァアア!!」
再び体勢を崩して、ガノスオウガが横倒しになる。
「がぁぁぁぁあああ!」
「うおぉりゃぁあああ!」
いける!
この場で決めるつもりで、攻撃を叩き込む。
「ギィイイイ!!」
「離れて!」
バチバチバチ!
スパーク音が響く。
「ギィァァアアアア!!」
咄嗟に距離を取るが、間に合わない。
ガノスオウガの全身から放たれた電流が、水を伝って俺たちに流れ込む。
「ぐっ」
ガノスオウガがゆっくりと立ち上がる。
追撃されると思ったが、そうはならなかった。
体を引きずるいようにして、湖の中に入っていく。
「……逃げられたか」
しばらくして、体が動ける様になって立ち上がる。
かなり追い詰めたと思ったんだが、惜しかったな。
「大丈夫、多分……昨日の湖に行っただけだと思う」
「追いかけよう」
全員で鍾乳洞の中を走り抜け、先日見た湖へたどり着く。
「いたぞ」
湖の先には、ガノスオウガが体を引きずる様にして陸地を歩いていた。
「まだ見つかってない、全員、私に突いてきて」
レジーナの先導で、ガノスオウガの後を付けていく。
やがて巣の様な場所にたどり着くとその場に体を倒した。
「……」
全員がレジーナの方に視線を向ける。
彼女は静かに、うなずいた。





