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ダグラス:対決

■Side-ダグラス


 学園の訓練場。

 俺は肩で息押して、汗を拭う。


「ダグラスは飲み込みが早いね」


 同様に汗を拭き取りながら、サムが口を開いた。

 ペンギーに勝つことを決意してから二ヶ月間。

 アンガスと作戦を練り、基礎能力を上げる為にサムに稽古を付けてもらっている。


「だが、これじゃまだペンギーには届かない」


「……」


 俺の言葉にサムは困った様な表情を浮かべて、俺の頭を優しく撫でる。


「焦る必要は無いさ、君はよくやっているよ」


「だが、俺は転生者だ。それなのに、ペンギーに勝てない」


 サムはこの世界で唯一、俺が転生者であることを知る人物だ。

 彼女は俺の言葉に何かを言いかけて、飲み込む。

 しばしの沈黙のあと、問いかけてくる。


「あの時、君は僕より強かったかい?」


 今から、半年ぐらい前。

 革命の最中で俺とサム敵同士として対峙した。


「いいや、まるで勝てる気がしなかったな」


「だが、勝利したのは君だ。君には君の強さがあって、ペンギーちゃんにはペンギーちゃんの強さがある」


 俺の強さ、か。







 中間試験は、初回の講義で行われた様な階級別の総当たり戦だ。

 学園内で一番大きい訓練場を貸し切り行われる。

 ファイター科を受けていない生徒も、なぜか集まっていた。

 武装は生徒の自由。


「危険じゃ無いのか?」


 俺の疑問に、レジーナが小気味よく答える。


「あっち見てみて」


 神官服に身を包んだた男女の一段が何やら準備をしている。

 確か、プリースト科の連中だな。


「もしかして、回復魔法の訓練も兼ねているのか?」


「元々、この学園の母体は神官の育成機関だからね」


 知らなかった。

 言われてみれば、建物のレリーフとかはそれっぽかったな。

 怪我をしたら危ないとかではなく。

 積極的に怪我をして欲しいって訳か。







 俺とペンギーはお互いに、全勝だ。


「次、ダグラス君とペンギー君」


 ついに、きたか。

 アンガスの言葉に、お互いに練習場の中央へ移動する。


「今日は、勝つぞ」


「負けないよ」


 ペンギーも今日は本気装備だ。

 お互いに武器を構えて、緊張した空気が流れる。


「始め!」


「がぁぁぁぁあああ!」


「うぉぉおおおおお!」


 アンガスの合図と共に、お互いに攻撃を仕掛ける。

 大鉈とハルバートが激しくぶつかり合う。

 何度かガラスが破れる様な音が発生する。


「なんっ……」


「おりゃぁぁあああ!」


 俺はこの戦いに向けて”ヘイストインナー”と”不倒鎧”を用意した。

 まだペンギー程、使いこなせていないが。

 二ヶ月間、しっかりとサムに仕込んでもらった。


 どこまでも思い通りに動くこの体と、さらに自由度を上げる二つの魔法。

 俺の動きは格段に良くなった。


「まけるかぁぁぁぁぁあああああ!!!」


 ペンギーの動きが苛烈さを増す。

 攻防の中で、彼女の思いが伝わってきた。


 焦燥に、恐怖。

 そっか……お前も、俺と同じだったんだな。


「くっ!!」


 彼女の大鉈には、重心を自在に変更するスキルがある。

 変幻自在な動きが、動きを読みにくくしていた。


 まだ、届かないのか。

 彼女の攻撃に、俺は徐々に追い込まれていく。


「がぁぁぁぁぁああああ!」


 やはり、俺ではペンギーには勝てない。


「アンチ・マジックフィールド!」


 ファイターとしてはな!


 俺がマギテックの科目も受講している。

 前世の電子回路の知識と合わせて、新しい魔法を開発した。

 一定空間内の魔法を大きく減衰させる魔法だ。


 まだまだ実験中で、攻撃魔法相手にはちょと制御が甘くなる程度だし、ヘイストやバランスの魔法も完全には消しきれない。

 だが、この世界で唯一、ペンギーにだけは有効だ。


「なんっ」


 突然の事に、ペンギーがバランスを崩す。

 彼女は強い。

 だけど、その強さは……彼女の卓越した技量によって辛うじて成立している。

 常人が同じことをやっても、ただの愚行にしかならない。


 この魔法は未完成だが、一瞬だけ、彼女の技量を揺らがせる事ができる。


「これでどうだぁぁああ!」

 

「ふん!」


 渾身の一撃。

 彼女は大鉈を手放し、腰の剣を振り抜く。

 攻撃の起動を逸らした。


「まだまだぁ!」


 そのままさらに踏み込み、タックル。

 生まれて初めて、ペンギーへの有効打を出す。

 軽い衝撃のあと、彼女の体が冗談みたいに吹き飛ぶ。


「おりゃぁぁぁああああ!」


 対応される時間を与えるな!

 この時、この瞬間しか、今の俺には勝機が無い。


 体制を立て直される前に、追撃する。


「はぁ、はぁ……」


 気づけば、俺はペンギーを壁際まで追い詰め、ハルバートを突きつけていた。


「勝者、ダグラス」


 アンガスの声が、どこか遠くに聞けた。

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