ダグラス:目標
「はぁ……」
学園の中庭で噴水の縁に腰をかける。
「まだ、勝てないか」
ペンギーと一緒に、この世界を冒険して巡る。
これは俺がこの世界に来て、初めて決めた事だ。
このままで良いのだろうか?
俺には前世の記憶がある上に、ブラック企業の女神から転生特典で戦士として最高の身体をもらった。
これだけの絶大なアドバンテージがあっても、彼女に勝てない。
このままではいつか、ペンギーに愛想を尽かされるのでは無いか。
「ダグラス君、何をしている?」
そんなことを考えていると、アンガスに声をかけられる。
「ああ、いえ」
「悩みがある様なら、私の部屋で聞こう」
「平民とはなるべく関わりたく無いのでは?」
「ああ、その通りだ」
「俺は平民ですよ」
「だが、この学園の生徒でもある。生徒の悩みを解決するのは教養ある貴族にして、学園の教員である私の責務だ。早く来たまえ」
アンガスの部屋で紅茶を飲みながら、悩みを打ち明ける。
もちろん、転生の事は伏せてだ。
「つまり、君は幼馴染のペンギー君に一度も勝てない事に悩んでいると」
話を聴きおえた彼は、優雅に紅茶を飲みながら問いかける。
俺は椅子に座ったまま、それに答えた。
「はい、このままじゃ置いて行かれるんじゃ無いかと」
「……はじめに、事実を明確にしておこう」
彼はそう言うと、紅茶のカップをゆっくりと皿に戻す。
「現時点で、君たち二人は私より遥かに強い。だから……私にも答えは解らない。一緒に考えながら進める事になる」
つまり、一緒に俺がペンギーに勝つ方法を考えてくれるつもりだ。
オリエンテーションでの自己紹介では傲慢な貴族だと思っていたが、思っていたよりずっと良い人だな。
「お願いします!」
「まず、目標を決めよう」
「いつまでにペンギーに勝つか、と言う事ですか?」
「その通りだ。ちょうど、二ヶ月後にファイタークラスの中間試験がある。当面の目標は、そこでペンギー君に勝つ事としよう」
二ヶ月後、ペンギーに勝つ。
これからも彼女と一緒に、対等にいる為に。
絶対に、達成してやる!
「まず、身体能力の面では君の方が強い。合っているか?」
「はい、その通りです」
「純粋な技量の面ではどうだ? 彼女の動きは技術の基礎を習得している様には見えないが」
「高次元すぎてそう見えますが、ペンギーの強さはむしろ圧倒的な技量にあります」
「ふむ……。彼女は身体能力で劣る部分を、あの奇抜な動きと天性の感、天才的な技量で補って君に勝利している訳か」
あの読み制度の高さは、本当に感だろうか。
博打が大きいのは確かだが、彼女にはもっと、確信がある様な気がする。
「概ね、その通りです」
「私が思うに、彼女の戦闘スタイルは非常に高度で協力だが……その分、強さを成立させるのがとても難しい様に思う」
それは、その通りかもしれない。
ペンギーの戦闘スタイルは尖りすぎている。
逆に俺は丸く納まりすぎていて、クラーケン戦でそれを少し自覚した。
「ですが、彼女の立ち回りはそれらを上手にカバーしていて、俺には崩せません」
「それは、ファイターとしては、だろう?」
「そんな……!」
声を荒げる俺に対して、彼は落ち着いて続けた。
「君の悩みは”彼女に負け続けたままだと隣に立つ資格が無くなる”だろう? それなら、ファイターとしての戦いに拘る必要は無いはずだ」
「……良いんですか?」
「私はファイターの担当ではあるが、君の担任でもある。それに、ファイターの科目でも他のスキルの使用は禁止していない」
「それで、具体的にはどうするんですか?」
「……それは、これから二人で考えよう」





