ダグラス:最上位戦
「次は、最上位だ」
最上位は俺と、ペンギー、他の生徒が二人の合計で四人。
それぞれ、総当たりで試合を初めていく。
「ダグラス君、どうだった?」
二人の生徒と戦い、アンガスから意見を求められる。
「全体的に思考が浅いのと、勝利を模索する姿勢が足りない様に感じました」
最上位だと自負するだけあって、二人とも技量、身体能力、共に高水準だ。
だが、ペンギーやサムに比べれば遠く及ばない。
まあ俺はその二人に勝てないんだが。
「君は話が抽象的だな」
「えっと……」
俺が言い淀んでいると、今度はペンギーが口を開いた。
「戦いが上手な方が勝利する訳じゃない。戦いに強い方が勝利する。お互いの力量差を感じたなら、それを踏まえた上で勝てる方法を模索するべきなのに、二人は自分のやりたい事のベストを尽くしただけだった」
おお、ペンギーがかつてない程の長文を喋っている。
しかも俺が言いたいことを的確に表現していた。
ペンギーは説明したがらないだけで、説明できない訳じゃない。
意外に、教える才能が有るよな。
「……次は、ダグラス君とペンギー君だ」
訓練場で、ペンギーと対峙する。
今までのゆるゆるとした空気が一瞬で消し飛んだ。
思えば、ペンギーと真面に模擬戦をするのは一年半ぶりか。
「はじ」
「がぁぁぁぁああああああ!」
アンガスの掛け声に合わせて、ペンギーが突撃してくる。
外見だけを見れば守ってあげたくなる様な可愛らしさを持っているのに、中身は鬼神のごとしだ。
武器は模造品の剣と短剣。
山賊時代の武装だ。
「め!」
「ふんっ!」
俺も模造品のハルバートをくるりと回して、柄で短剣を弾く。
そのまま武器を一回転させて、今度は刃の方で虚空に攻撃を放つ。
木材同士が打つかる乾いた音が響く。
彼女の攻撃が一度で終わるわけがない。
これは読みだったが、ほとんど確信を持っていた。
「ぐっ」
メタモル込みでも、力は俺の方が強い。
武器の撃ち合いなら俺が勝つ。
ペンギーの剣を大きく弾き飛ばし、咄嗟に身体をひねる。
俺の動体があった位置を、短剣が通り過ぎて行った。
手に持っている短剣とは別に、隠し持っていたんだろう。
「がぁぁああ!」
追撃を防いだ彼女は、今度は恐ろしく低い姿勢で突っ込んでくる。
身長差もあって、やりにくい。
それに、順当に対応すれば確実にやられる。
「おりゃぁあ!」
普通にやって勝てないなら、普通以外のことをするしかない。
”全力攻撃””オーガ・アーム””ペネトレイト”三つのスキルを内包した一撃を、地面に放つ。
ガラスが破れる様な音が響き、大地が割れ、大きく隆起する。
足場を悪くするのは一長一短だが、ペンギーに自由に動かれるよりはましだ。
同時に巻き上げた砂塵と風圧が彼女の小さくて軽い体を吹き飛ばす。
「いつまでも負けっぱなしだと思うなよ!」
大勢を崩した彼女へ、今度は俺が飛びかかる。
彼女は不安定な足場に何とか着地し、早口で詠唱を唱えていた。
「ゲイル・レーザー!」
「しゃらくせぇ!」
指向性を持った竜巻が彼女の手から放たれた。
足場が悪い事もあって身体が持って行かれそうになるが、無理やり踏ん張ってペネトレイトで相殺する。
身体能力によるゴリ押しだ。
「がぁぁぁぁあああ!」
攻撃の隙をついてペンギーの剣が迫る。
ハルバートで迎撃。
近距離戦に持ち込もうとする彼女と、それを防ぐ俺。
激しい攻防が続く。
ペンギーは強い。
山賊にいた頃からずっと、そう思っていたが、数々の経験を積んで相対し、改めて思う。
以前より、その強さを明確に認識できる。
「うおぉおおおおおおお!」
「がぁぁぁぁぁああああ!」
お互いの武器と武器が交差する。
「ど、どっちだ……?」
俺は悔しさで、膝を付く。
「くっそ……!」
勝ったのはペンギーだ。
彼女は強い、だが……その強さを測れる位置まで、俺も強くなっていた。
以前より勝てる可能性があっただけ、悔しさがこみ上げてくる。
「ペンギー君、彼の敗因は何かな」
アンガスが、ペンギーに尋ねる。
彼女がそっぽを向いて、一言。
「やだ」
耳の動きによると、身体能力を生かした立ち回りは良かったが、最後は奇をてらい過ぎて強引すぎたらしい。
やっぱりそうか。





