ダグラス:出港前夜
■Side-ダグラス
「よし、完成だ……!」
ヴォイテクが加わってから、造船の作業は劇的に進んだ。
なにせ、今までは試行錯誤の連続だったのが、答えがわかる状態になる。
「小官も、これほど早く出来上がるとは思っておりませんでした」
できたのは、ちょっと豪華なイカダの様な物。
五人が乗っても十分、耐えうる広さを確保している。
「でも、これで本当に大陸までつけるの?」
不安そうに言うレジーナ。
それに対して、ヴォイテクは明瞭に答えた。
「星の位置、当時の状況から見て、おおよその位置は掴めております」
ちなみに、推進力には俺の作った魔道回路を使っている。
どうして前世の回路記号が今世で物理的な効果を発揮するのか。
不思議でならないが、今はとにかく便利だ。
「出港は、早朝を予定しております! 運が良ければ、日没前に大陸が見えるかと!」
「それなら、今晩はパーティだな」
「賛成!」
この無人島で行う、最初で最後のパーティは大いに盛り上がった。
娯楽は少なかったが、その分、お互いをより良く、知ることができる。
「たとえ離れ離れになってもつながっている二人の絆! 小官は、小官は……!」
話の流れで、俺とペンギーのこれまでの話をヴォイテクに語った。
お酒も入っていないのに、泣き上戸みたいになっている。
なんと言うか、俺とペンギーもとても気まずい。
お互いに相手を直視できなくなっている。
「ちょっと、夜風に当たってくる」
そう言って、俺はその場を離れた。
夜の砂浜を、ゆったりと散歩する。
「ダグ」
ふと、後ろから声がかかる。
ペンギーだ。
「ペンギーか、どうしたんだ?」
「……最近、あまり二人で話せてなかったから」
山賊の頃は、ずっと二人だけで話していた。
革命後は、レジーナやサムがいたし。
遭難してから二人でゆっくりと話す時間なんて、全くなかったな。
「悪いな、あまりちゃんとした冒険できてなくて」
俺の言葉に、彼女は首を左右に振る。
「ダグのせいじゃ無い。それに……今の状況も、それなりに楽しい」
二人で並んで、夜の砂浜を歩く。
「この島での生活は、窮屈じゃ無いか?」
「窮屈だし、不便だし、飽きた」
「ははは、そうだよな?」
「でも、皆と一緒なら、そんなに嫌じゃ無い」
「そっか……」
彼女は、我慢が大嫌いだ。
自分がやりたい事は全て実行し、やりたく無い事は全てやらない。
それでも、彼女がワガママに映らないのは。
彼女のやりたい事に”誰かを助ける”が含まれていて。
やりたく無い事に”自分だけが得をする”があるからだろうな。
本人に言ったら、否定するかもしれないが。
根が、優しすぎる。
「ダグは、どう? 私の事、気にしすぎて窮屈になってない?」
ほらな。
まあ、普段の言動を見るとそうとは解らないんだが。
「俺も、ペンギーと同じ気持ちだ」
思わず、隣を歩く彼女の頭を撫でる。
彼女は何も言わず、それを受け入れていた。
「それなら、良かった」
「明日からは、また新しい冒険の始まりだ」
「うん!」





