ペンギー:光の差さない世界
難しいことは、全部、ダグに任せておく。
どうやら、城攻めをするらしい。
もちろん私は、最前線だ。
「んふふふー」
思わず、口角上がってしまう。
はやく、この武器を振り回したくって仕方がない。
「おい、あれ……」
「ああ、鉄腕だ」
「心強いが、どうしてこんな最前線に……」
周りの人が何か言っているけど、気にしない。
もうね、気にするとね。
私の歌があっちこっちで、流れてるのとかね。
考えないといけなくなるからね。
「武器を取れ、市民らよ。隊列を組め、進め、進もう! 汚れた血が、我らの畑の畝を満たすまで!」
ダグが宣言して、指揮棒を振り下ろす。
「がぁぁぁあああ!」
戦場を、駆ける。
空から雨の様に矢が降ってくる。
大鉈を傘の様にして、突き進む。
眼前に、スタアトの防壁が見えた。
突撃の勢いそのままに、飛び上がる。
「がぁぁああ!」
空中で、一回転。
大鉈を振り下ろす。
強い衝撃が、腕に帰ってくる。
重心を先端に寄せた、最大火力の一撃。
防壁は一撃で裂けた。
「お、おい、入ってきたぞ!」
「がぁ!」
一番近くにいた兵士を、今度は剣の様に鋭く切り裂く。
「おい、こ、こいつ!!」
「て、鉄腕だ!」
「鉄腕が出たぞぉぉおお!」
さあ、私が最強になる為の糧になってもらうよ。
ダグと一緒に、魔道バイクに乗って砂漠を疾走する。
ところでダグは、どうして魔道バイクの操縦方法なんて知っているんだろう。
最近の冒険者は、魔道バイクぐらい普通に乗りこなすのかな?
まあ、ダグだし。
初めて触って動かせても、納得できる。
「ダグ、誰かいる」
直後、閃光が走る。
それはバイクを直撃して、大爆発。
私とダグは空に放り出される。
「んっ」
直後に、バランスを発動して、姿勢を安定させる。
だけどバランスは慣性までは消してくれない。
地面に、大鉈で一撃。
「えいっ」
慣性を持ったまま、もう一度、空に上がる。
早口で、詠唱。
「ゲイル・レーザー」
前方に衝撃派を発生させて、さらに慣性を潰す。
「リピート」
もういっちょ。
「リピート」
ちょっと、位置調整。
着地する。
ガリガリと砂煙を上げながら、両足でブレーキをかける。
数メートル進んだところで、やっと止まった。
ダグは、大丈夫だよね?
「ペンギー、大丈夫か!」
「うん」
大丈夫だったみたい。
これ、人によっては命の危機だったと思うんだけど。
やっぱり彼、天才だよね。
「全く……悔しいけど、陛下の人を見る目は確かな様だね」
ダグの言葉の、何がサムの琴線に触れたのか。
私にはわからない。
だけど、彼女を本気にしてしまった。
今まで、路傍の石でもみている様だった彼女が。
今、明確に、私たちを敵として捉えている。
「ひっ」
思わず、らしくも無い、悲鳴がこぼれた。
私は、相対した相手の実力と、個性がわかる。
そしてそれは、可視化する。
このイメージは思いの外、重要で、相手のユニークスキルの予想にも役立つ。
「ペンギー」
見えて、しまった。
いいや、見えたけど、見えない。
光の無い、真っ黒な世界。
もぞり、もぞりと、巨大な、何かが移動している。
それは移動するたびに、あらゆる物を轢き潰していく。
暗く、深く沈殿し、重く粘性を帯びた、何か。
この世界に、何一つ、期待していない。
だから、彼女の世界には光がなく、特性が見えても、何も、視認できない。
「だ、だめっ、ダグ、これは、闘っちゃダメ!」
今まで、色んな相手と戦ってきたけど。
こんなのは、見たことがない。
ランキング落ち……しくしく





