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ダグラス:”強欲”のアモン

■Sideーダグラス


「……冷えるね」


「ああ、そうだな」


 隣に立つレジーナが、息で手を温め、拝むように擦り合わせる。

 真夜中、俺たちは砂漠に立っていた。


 三ヶ月後、サムの予言は現実になる。

 多分、彼女もただの騎士団長ではないのだろう。


「どう、自信の程は?」


 この三ヶ月間、ハザードに向けた準備を行ってきた。

 範囲攻撃が可能な前衛クラスを習得したし、補助アイテムも潤沢だ。


「それは、レジーナが一番よく知っているだろう?」


「ふふ、そうだったね」


 俺たちは雑談をしながら、クラウン・サンドホッパーが来るのをまつ。

 改めて、今回の作戦を思い出す。


 冒険者は三つの陣に別れている。

 先頭がゴールド、シルバー級の冒険者。

 真ん中が、俺たち、アイアン級の冒険者。

 最後が、カッパー、ストーン級の冒険者だ。


 各陣営ではパーティ単位に一定の領域が割り当てられる。

 この作戦には、二つの意図がある。


 一つは、パーティが入り乱れるのを避けるため。

 討伐数が報酬になる関係上、パーティが入り乱れると集計が困難になる。

 人は、弱い生き物だ。

 働かなくても報酬がもらえるのなら、そういう人間は必ず出てしまう。

 画期的な道具でも無い限り、仕方のない処置だろう。


 二つ目は、実力の高い冒険者により多くの魔物を割り当てるため。

 高ランクの冒険者をより前線へ。

 底ランクの冒険者をより後方へ。


 当然、この方法だと漏れはある。

 相当数の魔物が街を襲うだろう。


 なので、あくまで本命は首都の防衛陣地だ。

 俺たちの役目は、そこまでたどり着く魔物を極力減らすことだ。

 政府の失態で陣地の外で戦わされるのに、言いたい事もある。

 だけど、稼ぎ時であることも確かだ。


「……きたね」


 レジーナが、大きな耳をピクリ、と動かす。

 僅かな羽音が聞こえてきた。

 サンドホッパーの進化種、クラウン・サンドホッパーだ。


「護衛は、いらないんだな?」


「うん、ダグラス君は、自由に暴れてきて良いいよ」


 レジーナは、戦闘が強くはない。

 それでも、経験豊富な冒険者で、今ではアイアン級だ。

 制約が無い状況なら、危なげなく成果を出すだろう。


「行ってくる」


「行ってらっしゃい。遅くならない内に帰ってきてね?」


 視界の先には、低空を飛行するクラウン・サンドホッパーの群れがいる。

 彼女の軽口を背に、俺は駆け出した。


「うぉぉぉおおおおおお!!!」


 全身に魔力を循環させる。

 メタモルのスキルと並行して、新しいスキルを発動した。

 俺が新しく習得したクラスは”ドッペルゾルドナー”だ。

 高威力の範囲攻撃スキルを多数持つ、超攻撃的なクラスだ。

 反面、防御面に不安は残るが、俺にはファイターのクラスがある。


「ぎぃぎぃ!」


 突撃の速度のまま飛びかかり、ハルバートを振り回す。

 俺の武器からは赤黒い斬撃状の衝撃刃が飛び出し、魔物を粉々にする。

 ファイターのスキルとドッペルゾルドナーのスキルの合わせ技だ。


「さあ、どんどん来い。今日は無双ゲーの気分だ」





 あれから、どれぐらいの時間がたっただろう。

 深夜に始めたはずの戦いは、気づけば昼過ぎまで続いた。


「こ、この数をお二人で?」


 魔物も来なくなって、適当にくつろいでいた頃。

 冒険者ギルドの人が査定に現れる。

 この人が来れるという事は、町は無事だったんだろう。


 審査員の言葉に、レジーナが答える。


「いや、ほとんど、ダグラス君で……」


 確かに、戦果としては俺が八割、彼女が二割ぐらいだ。

 だけど彼女は終始危なげなく立ち回り、俺のサポートにも回っていた。

 俺と彼女を比べるのは、ゲームで戦闘職と生産職を比べる様な物だ。


「……これなら、10万イェンでいかがでしょうか?」


 相場がわからない俺は、レジーナに視線を向ける。

 俺の視線に、彼女は頷いた。


「それでお願いします」


「では、それで。報酬は所属の宿から受け取ってください」


 審査員はそういうと、足早に立ち去った。

 俺はレジーナに声をかける。


「俺たちも、帰るか」


「そうだね」






 街の方へ向けてしばらく歩いていくと、やがてスタアトの防壁が見えてくる。

 そこには、足の踏み場もない程、魔物の死体が転がっていた。

 魔物が押しのけられている、通り道がなければ。

 俺たちは死体の上を歩いて帰る事になっていただろう。


「おい、まだ一匹残っているぞ」


 遠目にだが、防壁の上に魔物の姿が見える。

 ハンマーヘッドシャークの様な顔。

 ゴリラのように大きな肩と胸と異常に細い動体。

 足は、馬のよう。

 それら全てのパーツが、昆虫を思わせる甲殻で構成されている。


「プフッ……!」


 俺の言葉に、レジーナが吹き出す。

 その態度から、危険は無いことがわかる。


「ダグラス君、あれは魔物じゃないよ。大罪剣の一人”強欲”のアモン。または”両断”のアモンとも言うね」


「獣人はダメなのに、あの昆虫みたいなのは受け入れられているのか?」


「いや、普通に、帝国じゃなくてもアウトなレベルなんだけど。まあ、皇帝グンテはそういうの、考えてないから」


「どれぐらい、強いんだ?」


 俺たちは”希望の剣”に協力することを決めた。

 あの昆虫人間も、いつかは倒さなければならない。


「大罪剣の序列では一位だね」


 俺たちが話していると、件のアモンが武器鉈を掲げるのが分かった。

 脳に、虫のさざめきの様な、不鮮明な声が流れ込んでくる。


「ボウケンシャ タチヨ コタビノ ハタラキ タイギデ アッタ」


 俺たちに話かけているというより、全体に語りかけているのだろう。


「今のスキルは何だ?」


 俺の質問に、彼女は淀みなく答えた。


「アモンが持つ、戦鉄の武器が持つスキルだね」


「指揮官向きの、スキルだな」


「実際、彼はグンテ軍の総司令官でもあるよ」

ダグラスタイム、終了!

次回からはペンギータイムに入ります

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