ダグラス:ブラック企業が憎い
■Side-ダグラス
いつも、一日かかっていた薬草採取の依頼。
レジーナと二人なら、半日も掛からなかった。
スタアトの町に戻ると、彼女は依頼の報告や素材の売却があるといって別れた。
今は冒険者の宿で、彼女の帰りを待っている。
「おまたせ、ダグラス君。はいこれ、分け前ね」
硬貨の入った袋を渡される。
日本では、こう言うのを直ぐに確認するのは失礼にあたる。
だけどこの世界では、確認しないとむしろ不審がられるらしい。
「なあ、レジーナ。俺の方が多く無いか?」
依頼の報酬が600イェン。
これを折半して300イェン。
魔物の討伐には報酬がついて、50イェン。
魔物の素材を売却した値段が、20イェン。
だけど俺の手には、410イェンが握られていた。
「え?」
「俺の取り分は、335イェンのはずだ」
「ああ、説明してなかったね。獣人は依頼分配一割減、討伐、素材報酬なしなんだよ」
「それは、法律で決まっていて、従わないと罰則があるのか?」
「いいや、別にそう言う訳じゃ無いけど」
「それなら、報酬をきっちり半分にしよう」
俺は75イェンを取ってテーブルにおく。
「えっと、お姉さんの話、ちゃんと聞いてた? 獣人は……」
「聞いたし、理解もした。だけど、世の中的にどうなっているかと、実際には何が正しいか、は別のことだろ」
「だ、だけど……」
「俺は、大した働きもしていないのに立場だけで報酬に差をつけるやつは地獄に落ちるべきだと思っている。俺の方が多くなる理由があるなら考えるが」
俺の言葉に、レジーナが困った様に頬を掻いた。
「ほら、ダグラス君のおかげで依頼を受けれたと言うか」
「今日、依頼を取ってきたのはレジーナだし、薬草の群生地に案内してくれたのもレジーナだ。薬草の種類を知っていたのもレジーナで、採取量もレジーナの方が多かった」
「だ、ダグラス君がいたから危険な採取地に行けたし?」
「レジーナ一人なら、確実に逃れたし、あれぐらい、一人でも倒せたんだろ」
「……ぷふっ」
突然、彼女が堪えきれないといった様子で吹き出した。
「……どうしたんだ?」
「だ、だって。ふふっ。あはは。ごめん、ちょっと、まって」
しばらく、彼女はケラケラと楽しそうに笑う。
「なんで私、自分の報酬を減らす理由を探してるんだろうって思ったら、おかしくって!」
彼女はそういうと、テーブルに置かれた硬貨を受け取った。
「じゃあこれは、受け取っておくね。返してって言っても返さないからね?」
良かった。
細かいやつだと、思われたかもしれない。
だけど、ブラック企業で過労死した俺にとって、譲れない部分だった。
「おはよう、ダグラス君」
「ああ、おはよう、レジーナ」
翌朝、冒険者の宿でレジーナと挨拶を交わす。
今日もこれから、クエストだ。
「昨日の感じからすると、もうちょと大きい依頼を受けても良さそうだよね。何か、希望はある?」
「なるべく報酬が多くて、昇給の審査に響きやすいのが良い」
「おっけー。任せて」
「……選んで取れるのか?」
「まあ、確実……とは言わないけどね?」
「レジーナ」
「うん、何?」
「ありがとう」
「えへへ、お姉さんに任せてよ」
そう言って、クエストボードの前に並ぶレジーナ。
その姿は、まるで歴戦の勇士の様に頼もしかった。
「じゃじゃーん」
程なくして、レジーナが依頼を持って帰ってくる。
女神かな。
「サンドホッパー十匹の討伐、交通費込み、剥ぎ取り権あり。3000イェン」
「……」
「あれ、物足りなかった?」
「いいや、凄すぎて言葉を失っていた」
「ふふ、ダグラス君となら、今後はもっと良い依頼も受けられると思うよ」
もしかして、俺の力量を考えて。
依頼を選んだ上で、このクオリティなのか。
凄まじいな。





