ペンギー:安く買い叩かれて辛い
■Side-ペンギー
気がつくと、そこは馬車の中……の檻の中だった。
周囲には騎士の人がいて、油断なくこっちを監視している。
「起きたぞ」
そう言えば、服が変わっている。
ああ、これ罰袋だね。
頭から全身をすっぽり覆う服で、中から脱ぐ事はできない。
空いている部分は、視界を確保するための穴と、排泄口ぐらいだ。
「ねえ、何処に連れて行かれるの?」
「……」
むか。
思いっきり、檻を蹴飛ばす。
甲高い金属音が反響して、馬車が揺れた。
周囲の騎士も体をビクッとさせて、警戒する。
「ねぇ」
「……スタアトだ」
ああ、バルバナットの首都だっけ。
周りの騎士とそんな会話をしていると、サムが飛び乗ってくる。
あれ、馬車、走行中なんだけど。
「やあ、ペンギーちゃん」
「なに」
「君にも、状況を説明しようと思ってね」
「犯罪奴隷として売られるんでしょ?」
「まあ、そうなんだけど……騎士団としては、君かダグラス君、どちらでも良い」
「ダグは、ダメ」
「僕としても、ダグラス君を助けようと名乗り出た君の意思を尊重したいと思っている。それに、彼は頭が良すぎるみたいだ。奴隷にするには向かない」
彼女の思惑が理解できた。
ダグを助けたければ、大人しく売却されろと言っている。
「分かった。話はそれだけ?」
「……悪いね」
「私は、私のやりたい事をやっただけだから」
「そうか。……幸運を」
彼女はそう言うと、私の乗っている馬車から去っていった。
だから、走行中なんだけど……。
あれから、数日がたった。
眼下にはスタアトの町が見える。
これで、道中のめっちゃ硬いご飯ともお別れだね!
検問をすぎて、馬車を下ろされる。
……訂正。
私が入ったままの檻が、馬車から下ろされる。
下ろされた先で、文官風の服をきた男性が口を開く。
「……ずいぶん、厳重だな?」
「そうだよね?」
騎士たちは私を下ろす間も武器を構えて、臨戦態勢だ。
試しにちょっと動いてみると、ビクッと反応する。
面白い。
「こいつは一人で騎士の十人以上に重傷を負わせています」
「……人類種か?」
「パーソナルによれば、ハーフエルフと」
「……」
文官風の人が、私の方を見て押し黙る。
やがて何かを飲み込んだのか、書類にペンを走らせた。
「領民への略取、騎士への公務執行妨害、罰袋の刑とする。連れて行け」
騎士たちとは、その場でお別れになった。
今度は普通の警備兵風の人に連れて行かれる。
もちろん、檻ごと。
今度は広間の様な場所に通された。
久しぶりに、空をみた気がする。
なんだか、卵の腐ったような匂いがするね。
「へい、こちらの奴隷は……」
地面に引かれたカーペット。
その上に、首輪を付けられた人間が何人も座っている。
仕立ての良い服をきた男たちが、それらを値踏みしていた。
うん、奴隷市だね。
私の入った檻は荷台でゴロゴロと運ばれる。
奴隷市で、一箇所だけステージの様になっている場所があった。
オークションかな。
「では、オークション、午後の部を始めます!」
進行役の人がマイクで声を拡散しながら全体に告げた。
妖精王国から輸入されてくる魔導機械の一つだね。
ステージの下には私の他にも何人か奴隷が並んでいる。
ちなみに、檻の中に入っているのは私だけだ。
差別かな。
「まずはこの獣人……」
次々と奴隷たちが売れていく。
獣人の少女、2万イェン。
中年戦士、4万イェン。
特に特技のない中年、1万5千イェン。
などなど。
「それでは、最後の商品です!」
どうやら、私は最後だったらしい。
厳戒態勢の中、檻が開く。
「す、すすめぇぇ!」
槍を構えた警備兵が五人、私を取り囲んでいる。
声、裏返ってるよ。
「こちらの罰袋……体は小さいですが、十人以上の騎士に重傷を負わせています!」
「「「おぉぉぉぉ」」」
周囲からどよめきが上がった。
その戦績、ダグも一緒だったんだけど。
「お客様、お気をつけください。大変、大変獰猛で、人語を理解しております」
ねえ、だから、扱い。
「それでは、1万から!」
1万2千、1万5千……。
どんどん値段が上がっていく。
「2万5千! 他はございませんか?」
だめ、まって。
まだ、あの中年戦士の値段を超えてない。
何かアピールをしようにも、手枷と足枷があって難しい。
「それでは! 2万5千でハロルド剣闘士ギルド様が落札です!」
くそう、勝てなかった。
あれ、でも、どうして勝たないと行けないんだっけ?





