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15せンチのおはよう  作者: 蔵樹 賢人
水曜日
9/11

第9話 嫌いじゃない

「おはよーございまーす」


「おー、シンジ、シンジ。心配したよ。やっと来たよ」

「何言ってんだお前。まだ九時前だぞ」

「だってほら、お前いつも早いじゃん。そんで、昨日のことあるしさ。ほら、カノンだって朝から泣きそうだしさ」


 カノンは席から赤い腫れた目でチラチラこっちを見ていた。


「なんだあいつ。なんであんなにブス顔なんだよ」

「バカ、お前、何でそういうこと言うんだよ」


 めんどくせーな。


「カノンっ」


 カノンが顔を上げる。嬉しいような悲しいような変な顔だ。


「お前、ブスだぞ」


 カノンの目から、ぶわっと涙が溢れてきた。ハンカチで口を押さえて何か叫んでる。


「どえずっ」


 最後は聞き取れない。もしや、どS?

 カノンは席から駆け出して部屋を出て行った。


「なんだあいつ」


 突然タケシのげんこつが頭に飛んできた。


「いってーっ。なにすんだよっ」

「お前!バカか!もうちょっとやさしさはねーのか」

「ないわ、そんなもん」


 くそ、めんどくせーぞ。俺は介抱もしねーし、なぐさめもしねーんだよ。


「おい、カノン」


 俺はカノンを探しに行った。どうせ女子トイレだ。


「おい、カノン、出てこいよ。おーい、カノーン」


 後ろから頭を殴られた。


「あんた、バカ?トイレの前で名前叫ばないでよ。恥ずかしいじゃない!」

「おお、お前どこにいたの」

「給湯室よ」

「ああ、びっくりしたー。後ろから殴るなよな」

「あんたが言う?こんなにグサグサいじめといて。よく言うわよ」


「だって、お前ブス顔だからよ」

「あーーーー、また言ったーーーーーー」


 カノンは「バカバカ」と言いながら、俺の顔や胸を連打した。


「やめろって。やめろ」


 カノンは叩きながら泣いていた。まったく。中学生か。


「嫌いじゃないよ」


「え?」


「嫌いじゃないよ。嫌いにもならない。だからあんまり酔っ払うな。あーいうのダメなんだよ。それだけだ」


「え?え?」


「じゃあな」

「じゃあな、って、どこ行くの?」


「俺、今日、会社休み」


「シンジ!」


 俺は後ろ向きで手を振ってエレベーターに乗った。

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