第11話 15センチのおはよう
「おは……おお!なんでお前がいんだよ」
「えへへ。おはよう」
「まったく。俺の朝のひと時を邪魔すんなよな」
コーヒーメーカーに水を入れてると、カノンが寄ってきた。
「コーヒー、淹れてあげようか」
「ん、ああ、出来んのか」
「大丈夫大丈夫。任せなさい。カプセル入れればいいんでしょ?簡単よ」
「ちょっと待て、それ緑茶」
「うわ、うわわ。危ない危ない」
「何が簡単だよ。頼むよ」
「えへへ。ごめーん」
コンビニで買ってきたサンドイッチとオレンジジュースを広げる。カノンも同じものを買ってきてる。どこで情報仕入れたんだか。
いい香りがしてきた。
「このコーヒー美味しいねー。びっくり」
「おい、なんで先に飲んでんだよ」
「えへへ。美味しい」
「まったく」
「一緒に食べていい?」
「ああ」
「美味しいね」
「そうだな。ってちょっと近くね?」
「いいじゃん」
「近いよ。15センチは開けろよ。ほらこの定規が15センチな」
「もう。そうだ、今度、私がサンドイッチ作ってこようか」
「いらん」
「なんでよ!私ウマイヨ、ゼッピンヨ!」
「なんでカタコト風なんだよ。俺はサンドイッチ好きじゃねーんだよ」
「だって、毎朝食べてるじゃん」
「いいんだよ、そういうことは。もう、朝の時間を邪魔すんなって」
「邪魔?」
「邪魔じゃねーよ」
「ほんとに?」
「ほんとだよ。ちょっと待ってろよ。やることあんだよ」
俺はスマホのアルバムを開いた。エリが笑っていた。
「誰?」
「元カノ」
「へー、かわいいね」
「ああ、かわいいよ」
「何?なんで微笑んでんの?元カノの写真見て微笑むってどうなの?あ、毎朝見てたの、元カノの写真だったの?」
「だから、いいんだって。ほっとけよ」
俺はアルバムの写真を全部消去した。
「あー!なに?え?なに?消しちゃったの?」
「うるせーよ」
「え?私が茶化したから?え?え?」
「ちげーよ。気持ちの整理だよ」
「気持ちの整理……?」
「昨日、彼女の一周忌だったんだよ。だから今日整理した」
「えと……」
「何?」
「えと……」
「だから何?」
「ごめんなさい」
「なんで?」
「なんだか……ごめんなさい」
「バカか」
ガチャ。ドアが開いた。
「おー、お二人さん、おっはよー。朝から二人きりで何してたの?いいねー」
「アホか」
「あらー、朝食もお揃いじゃないですかー。カノーン、やりますねー」
「うるさい、バカっ」
「あー、誰かさんのおかげで、朝の時間は終わりだよ。はい、片付け片付け」
「えー、もう終わり?」
カノンはつまらなそうだ。
「こういう時間は嫌いじゃない」
「え?」
「嫌いじゃないから」
「え?なに?いまの。ちょっと待って、できてんの?」
「でも15センチは開けろよ」
「どうかなー」
完




