表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者なんかじゃない  作者: ゆきや
エピローグ
PR
32/32

エピローグ

〈エピローグ〉


 タイムカプセルを発掘したあの日から二年半の月日が流れ、春菜は高校三年生になった。


 春菜は花屋でアルバイトを続けながらも、夢や憧れと現実の仕事が異なる事を知り、一度は見失った目標を、別の形で見つけ出せた。


 “樹木医になる”


 それは、カードの力によって植物の命を粗末にしてしまった事への、償いから生まれた感情だった。


 その決意をかつての仲間たちに伝えた。

 夢が変わったのにみんな大いに喜んでくれる。


 そんな中、一人だけ連絡が取れなくなった人物が居た。


――まさか……


 春菜の直感がその人物を連想してしまうのは気にかけている証拠。

 その不安を煽り、嫌な予感をさせるメールの着信を受けた。


 早まる鼓動が抑えきれないまま、春菜はメールの文面を見て愕然とする。


 差出人は風羽子。

 添付ファイルの画像には、道路に生々しい爪痕が残っている。


 こんな超人離れした事が出来る人は一人しか知らない。


「こんな事、出来るのは、ヒイロだけだ……」


 それは最初に、カードの力を得た柊呂が、勇者の剣から放った衝撃波で電柱に着けた傷によく似ていた。


 ただ、あの時と少し様子が異なる。爪痕の周りには血痕や、粘着質のような物体が光を放っている。

 それは柊呂だけではない、“誰か”の存在を示唆しているように思えた。


 春菜はその場に膝から崩れ落ちた。


 柊呂はいつの間にか徐々に春菜たちと距離を閉じ始め、会う事もなくなり、とうとう連絡も取れない状態になっていた。

 学校を退学したとの噂も流れた。

 春菜は柊呂の家まで訪ね、柊呂の安否を気遣ったが、結局、柊呂は春菜に会ってくれなかった。


「二年も経って、どうして……あの時、カードは全部、焼いたのに!!」


 春菜はひと目もはばからず、地面に何度も拳を打ち付ける。


 そして気付いた。

 自分の手首に唐草の模様が現れている事に。


「うそっ……何で」


 急いで手首のボタンを外して腕を顕にする。


 カードに乗っ取られた時に比べればかなり控えめだが、明らかに唐草のタトゥーが腕を這っていた。

 鏡で自分の顔や首を確認し、首に少しだけ唐草のタトゥーがある事を確認する。


 そして、鏡に写る自分の目をじっと見る。片目が緑色に光っていた。


「ハナ子……」

「春菜さん」


 問い掛けに、緑の瞳はしっかりと春菜の名前を呼んだ。


「ごめんなさい。人を乗っ取る程の力を持った私たちは、意識をカードに戻す事が出来なかったようです。万が一、柊呂さんが勇者のカードを目覚めさせてしまうかもしれないと思い、この時まで私は春菜さんの中に残っていました。何もなければそのままで良いと思ったのですが……」

「じゃあやっぱり、ヒイロは勇者の力を発動させたって事だよね?」

「はい」


 ハナ子ははっきりと答えた。


 春菜は少し悩んでから、鏡を見つめた。


「ハナ子、力を貸して。ヒイロを助けたい」

「もちろんです」


 芯のある声が頭にこだまする。


【私は貴方の願いによって生み出されたのですから】


 春菜は軽く微笑んで、ハナ子の代わりに着けていた腕時計を外す。


「ヒイロは勇者なんかじゃない。ヒイロはヒイロだよ!」


 相手が柊呂であるならば、一人だけではどうにもならない事を、春菜はちゃんと学習している。

 春菜は顔を引き締めて立ち上がり、しっかりと携帯端末を握り締めた。


「みんなで、何度だって止めてやるんだからっ!」



 仲間だった柊呂と対峙するために、春菜は力強い一歩を踏み出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ