表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
借物  作者: ほの、
PR
11/17

その11

 私には思い返せる過去がない。自己否定心から生まれ、あれを殺すためだけの存在でしかない。殺すことを思い直された時、私は何のために在るのか、わからない。

 探偵についていくことを決めたのは、役割が要ったからだ。何かに属せればそれで良かった。そうしないと自分が消えてしまう気もした。探偵は私の性分に合っていた。細かい違和感に気づく。感情に流されない。相手の弱みを見つける。でもそれらは私の物ではない。主人がそう設計したから、そう動く。

 鏡を見る。切れ長の目、まっすぐな鼻筋、すっきりとした輪郭、艶のある髪。この容姿だって私の物ではない。男の理想を詰め込み、設定として出力しているだけだ。

 それでも自殺は叶わなかった。絞首、異物飲み込み、オーバードーズ、投身、刺殺。そのどれも未遂に終わった。準備はできても実行には移せない。きっとこれは怪異の特性によるものなんだろう。私がどれだけ望んでも、主人が望まない限り自死は許されない。私はどこまでいっても怪異なのだ。


「どうしたんですか? その子」卯月は少女を見て言った。

 稲荷が連れてきた少女は高校生ほどに見えた。ジーパンに白シャツ。表情のない顔には土がついていた。

「迷子の子、拾ってきてん」

「……猫じゃないんですから」

 卯月は少女の元へ駆け寄り、顔を覗き込むように屈んだ。

「お母さんとはぐれちゃったの?」

 少女は頷いた。

「どこではぐれちゃったか覚えてる?」

 少女は頷いた。

「じゃあ、お姉さんたちと一緒にお母さんのとこに行こっか」

 ほんの少しだけ戸惑った後、少女は頷いた。

「ほな、そっちは君らに任せたわ」

「……また別行動ですか?」佐藤は訊ねた。

「いや、まあ、ぶっちゃけ面倒くさいというか…… まあ、僕は僕なりのアプローチで親御さん探しとくから」

 佐藤はため息をつきながら立ち上がった。そうして三人は車へと向かった。私も外へ出ようとすると、稲荷に呼び止められた。

「葉月ちゃん、頑張ってな」

「迷子探しに頑張ることがあんのか?」

「多分な」

 私はヒラヒラと手を振り、事務所を後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ