大人の恋心 32
32.
" Disadvantage Childhood 恵まれなかった子供時代 "
「ふふっ、びっくりしますよね? お家大好きだった人が家族嫌いな人の話。
私の母親と年の離れた姉は、子供の頃ずっと私にとって脅威でしかない存在
だったんです。
嘘のように聞こえるかもしれませんが、私は彼女たちからの
愛情というものを一度も感じたことがないんです。
記憶の中の私はいつも彼女たちから叱られて、泣いていたり
悲しんでいたり苦しんでいたり。安らぎを覚えたり、幸福を感じたり
っていうことが、いくら記憶を辿っても・・ないんですよね」
ほとんど初対面の、しかも異性、それも紹介とはいえ見合い相手の
ような人に、私は何でこんなことまでって思うようなところまで
踏み込んで話してしまったのだろう。
家族家庭に恵まれ、仕事や容貌に恵まれ順風満帆な人生を
年相応に謳歌している青年小野寺さんには、めったなことでは話せない
自分の負の部分を話せてしまえる何かがあった。
結婚前提で付き合っている恋人でもなく
だからといって全くの赤の他人でもなく
それなのに・・釣りで仲良くなった釣り友達のような関係性も相まって
私は誰にも話してこなかった家族の事情を話してしまった。