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大人の恋心 (『あなたに恋しました』スピンオフ)  作者: 設樂理沙


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19/83

大人の恋心 19

19.

" Telephone 電話 "



 私たちはJRの駅までお互いの仕事の話をしながら歩いた。

 話しながら歩いたせいか、あっという間に気が付くと駅だった。



 お互い反対方向なので、改札口を抜けた後、別れた。



 「桂子さん、じゃあ。また電話します・・さよなら」

 彼は手で電話をするジェスチャーをした。



 「さようなら、今日はありがとうございました」



 お互い手を振り合い、笑顔で最後は閉めくくった。


 私はエスカレーターに乗り、心の中で少し嗤った。


 小野寺さんったら、電話しますよと私に電話番号も聞かずに

そう言ったのだ。 


 私に花を持たせる格好の大人の対応だった。


 それでいて電話番号を聞いてこないということで、もうこれきりですよ

と正直に私に彼の意図するところを伝えてきていた。



 『あっぱれでござる』



 気が付くと私は口に出して呟いていた。

 不快感はなかった。

 そして今日使った自分の時間が惜しいとも思わない。



 『知世さん、ありがとう』


 自然と彼女に対して感謝の言葉が出たのだった。


 小野寺さんに話したからというわけではないけれども

翌日、やはり早朝から私は釣りに出かけた。


 最近、以前から欲しかったメタルジグも手に入れてたので

早く使ってみたかったし、昨日の少し非日常的だった特別な時間を

もう一度反芻して、心の整理をしたいということもあって。



 いつものように船で渡り、堤防でショアキングする。


 岸から軽めのジグを使ってひたすら小雨の中、釣り竿を投げた。


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