竜退治の騎士
「青空のまぶしいレストランが舞台で『雨』が出てくる切ない話を6ツイート以内」でという短編創作お題から考えた804文字のファンタジーです。
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「竜退治に行く騎士団を見送りに行こう!」
大通りから子どもたちの声が聞こえて、私は肩が震えた。
子どもも大人も竜退治に行く勇敢な騎士たちを見送ろうと広場へと集まっていて、普段は賑やかなレストランも今日は静まり返っている。
その様子を眺める私に、レストランのオーナーが声をかけた。
「行かなくていいのか?」
「……いいんです」
そう答えて、ゴミを片付けるために裏口から外へ出た。
路地裏で見上げた空は、私の心とは対照的にまぶしい青空が広がっている。
込み上げてくる涙を堪えていた時、一番会いたくて、そして一番会いたくない声が聞こえてきた。
「カレン」
振り返ると下町の路地裏には不釣り合いなくらい、立派な騎士団のマントを羽織った姿があった。
「出立する前に会いたくて抜けてきた。どうして俺を避けるんだい?」
見送りにも行かない私に対して、変わらず優しい声。
「……名誉ある竜退治を任されたあなたに、私は相応しくありません」
「そんなことはない。俺には君だけだ。必ず竜を退治して君の元へ帰ってくるよ」
懐かしい温もりに抱きしめられて、堪えていた涙が零れそうになる。
半年前、国王陛下が乗った馬車が襲撃を受け、町の警備隊に所属する彼が偶然通りかかり助けた。
国王陛下はその腕を絶賛し、竜退治の騎士に抜擢された。
警備隊の若者が竜退治の騎士に選ばれるなんて、下町の皆が喜んだ。
竜を退治した騎士には美しい王女様を降嫁させるなんて噂もある。
下町の恋人なんて足枷にしかならない。
彼のためにも身を引こうと思った。
でも……本当は、危険な竜退治なんて行ってほしくない、功績よりも無事でいてほしい、そして――王女様を選ばないでほしい。
そんな言葉を必死に飲み込んで、触れたことのないほど上質なマントを抱きしめた。
「ご武運を……」
私には無事を祈ることしかできない。
去っていく背中を見送りながら、先程まで晴れていた青空からぽつりぽつりと落ちてきた雨粒が、私の頬を濡らした。
読んで頂きありがとうございました。




