腑に落ちない結末
フェルに拳骨を落とされたヘンジとカグヤ、天照に頭を甘噛みされたショウと助手君によると、今回のアキバでの出来事は殆どが狂言事件だったとの事。実はフェルも分身から知らされていたようで、最後まで知らなかったのは俺と天照くらいだったらしい。
道理でさっきから天照は不愉快そうにショウを噛んでいるのか。良いぞ、もっと噛んでくれ。
「イデデデデデデデ!?」
(承知した。暫し、席を離れるぞ)
天照がショウを引き摺って、部屋を出て行く……さっきから助手君が見た事のないコードを俺の四肢の末端や頭に貼っていったり、ヘンジも俺に付けられたコードが繋がっている機械のディスプレイを見ながら、手元のキーボードを操作している。
え……っと、また電気流されそうで怖いんだけど……?
「な……なあ、フェル? このコード、めちゃめちゃ怖いんだけど……?」
「大丈夫です、レイジ様。このコードはどうやらレイジ様の脳波や神経の信号伝達を調べる物のようです。何か痛みが有れば、直ぐに仰って下さい。そこのバカ女を叩き壊します」
フェルはそう言って、俺の右腕の末端を両手で包み込んでくれる。こういうの異世界来てからも初めてだけど……凄い落ち着く。フェルが居てくれるなら大丈夫かな。
「そう信頼していただけると幸せです。はい、呼吸でリラックスしましょう。吸ってー……吐いてー……吸って―……吐いて……ヒッヒッフー……ヒッヒッフーですよ?」
「あれ、なんか違うっすよねー?」
「違うけれど、バイタルが安定してる。今の内にレイジの脳波、神経、傷跡の細かい形状まで解析しきるよ!」
「了解っす!」
そうだ、フェルに見てもらいたい物があるんだった。
「見てもらいたい物……ですか?」
眠くなってきたから……後でな……ごめん…………
「いいえ、今はお疲れでしょうから、お眠りください」
◆
(ショウ、レイジのアレを視たか?)
「ああ……アレか? 今更なんだが、アレに関しては実は千里眼の可能性の1つとして視えていたんだ」
(なんだと!? ならば、アレの正体か何かか分かるのか!? 未知のエネルギーをレイジに与え、暴れさせた邪悪な気配の正体は!?)
「アレの正体は……アレ…………は!」
「ショウ……手が震えてる」
「いや、大丈夫だ。アレの正体は……俺が視たのは、レイジだ」
(レイジ……だと!? 気配だけは感じ取れたが、あの邪悪さはレイジの性質とはほぼ真逆であったぞ!?)
「あの黒い義手とダークピンクのオーラには見覚えがあった。あのレイジは確かに可能性の1つで潰えたはずだった……!」
(レイジの可能性の1つ? どういう可能性を辿れば、コチラのレイジがああも狂わされるのだ!)
「俺達が危惧してたあの未来だ。俺達では無いけれど……フェルがレイジの目の前で死んだ。そうして狂ったレイジがアレなんだよ!」
(そうか……この事はレイジとフェルには伝えるな。我からシェーンに相談しておこう)
「伝えても……大丈夫だよ」
「カグヤ?」
「内緒でも大丈夫。伝えても大丈夫。だって……レイ君も、フェルさんもお互いに支えあえるから」
「…………かもな」
(フッ……そうかも知れぬな。しかし、レイジには伝えるな。自分が最愛の者を喜んで傷つけようとしたなど伝えれば落ち込むだろうからな)




