光を喰らえ
真横のガラスが開き、人型の影が立ち塞がる。女性……? 視界に靄がかかって、女性の顔も……と言うか、記憶にも靄がかかってる。視界から色が奪われて、心から感情が奪われる。音が聞こえず、匂いが消える。
視界には白と黒が残されて、感情からは怒りと多幸感が埋め尽くしていく……これは……?
(力を得るには大きな喪失と力による快楽が定番だ。一時的な物さ。気にする事なんて無い。思う存分、力を振るえ。この力は俺が俺を憎み続ける限り無制限だ)
「魔力、神力、そして闘気でも無いですね……それに何かと会話をしているようです。天照様は何か分かりますか?」
人型の影の横には、大きな四足歩行の獣のような影が並び立つ。こいつらが俺の倒すべき敵だっけ? 分からない……分からないから、この力を振るえば良いのか?
(いいや、奥の人影が分かるか? そいつらが俺を引き寄せるほどに、お前を怒らせた原因だ。しかし、目の前の2つの影はお前を邪魔するだろう。さあ、どうする?)
どうするも何も……俺は今怒っているんだ。多少の八つ当たり位、目を瞑ってもらおうか。殺しさえしなければ、別に良いだろ。
(…………生温いが、そんなものか。で、俺の力の使い方は分かるのか? 丁寧に教えてやるほど、俺は優しくねーぞ?)
いいや、自然と理解できてる。他人とは思えないほどに、フェルの闘気みたいに優しく寄り添ってくれる。何かを憎んでるなんて間違いじゃないのか?
(……クク、クハハハハハハハ。俺が優しい……だと? 余計な事を言うな。その力も時間制限はあるんだぞ?)
それもそうだな……じゃあ、暴れるか!
「記憶が一時的に封じられているようです。来ます!」
(ええい、妙な物に力を借りおって、止めるぞ!)
オーラを身に纏い、腕を前に向ける。天照の闘気では無いが似たように扱える。いきなり威力が高そうなやつでも大丈夫だろ。
「憎悪黒烈弾!」
魔力や闘気ではない黒きオーラの玉を2発、目の前の影にぶっ放す。獣は何かで壁を作って防ぎ、人は直接腕で弾いた。威力は前より高いのに、簡単に弾かれたな……
前? 前って何だっけ?少し記憶の靄が晴れた……のか?
(あんまり記憶を隠しても壊れるからな……教えてやる。その前という感覚は正しい。ふむ……天照の力よりは上か……どうだ? 怒りは晴れるのか?)
一番最初はよく聞こえなかったが晴れる筈が無いだろ? ……天照、それがお前の憎む何かの名前か?
(あまり気にするな……俺については詮索をするな。力を貸すのはこれ限りなんだからな。お互いにお互いを知る必要は無い。棚から牡丹餅とでも思っていろ)
「敵は天照様を知っているようです。心当たりは?」
(いや……似たような力としては魔王の国の守護神ヘルか……我が母、イザナミ位だが……違うな。今の一撃、神性を感じなかった)
右手に一切真っ黒な球を創り出す。獣も人も、攻撃を見逃さないように球を見つめているが……地面に叩き付けると、視界が黒一色に染まっていく。
色の奪われた俺は関係ないが、色が見えるお前らにはどうかな?光を呑みこむ小さな爆弾だ。
(しまった! 目を伏せろ!)
「憎悪光喰!」
ハッ……貰ったな!




