天の岩戸を攻略せよ 2日目開始
フェルが夢に出てきた。俺の手足があって、魔力もあって、レオもネルガも居なくて、ハインリヒの少し小さな一軒家でフェルと2人で暮らす夢。平凡なままの俺なら見れたかもしれない夢。でも、きっと続かなかっただろう。だって、平凡なのは俺だけだ。特殊なフェルはきっと平凡から離れていく。
だから、これで良い。手足が奪われていても、魔力が無くても、普通ではない知り合いが居るこの現実でも、フェルが平凡から離れないでくれるなら、夢の光景なんていらない。
「起きてる?」
「ああ、今準備している」
ドアがノックされ、カグヤが声をかけてくる。右腕の太陽の腕の感覚を確認し、体を起こす。
義手付けっぱなしで寝ちゃってたか。右だけなら大丈夫か。足と違って、常に動かすわけじゃないし今日も戦闘は少なめだろう。今日中に2階層までは辿り着いておきたい。
「さて……と?」
俺には異空間収納なんて使えない。この野営部屋に置いておけば保存されるらしいので、軽く荷物の整理をしとかないと、少しでも体の負担を減らして、少しでもダンジョンの探索を進めたい。
とにかく、左肩と左の義手は置いていく。氷属性の闘気で防腐しておかないと、後が困る。刀も2本持ってきていたけど、片方は置いておこう。水筒の中身は新しくしておかなきゃな。
「ママだよー……」
くだらない事を言いながらカグヤが入ってきたので、無視。寂しそうにいじけているけど、荷物整理は命に関わることだってあるから仕方ない。
簡易食事は一口サイズのチョコが8個、干し肉が14つ、沢庵をほぼ1本分……ダンジョン内で少しずつ補給するための物だ。
「朝ご飯用意できてるよー」
「了解」
◆
朝食を済ませ、準備も終わり、この野営部屋の外に出る。カグヤが小さく呪文を唱えるとドアは白い魔力に包まれて、元の札に戻る。
ドアの近くにはモンスターは居ない。野営部屋の近くにはモンスター払いの匂いを散布しているらしい。ショウの作った野営部屋は本当に凄いな……
「準備出来たよ、レイ君」
呼ばれ方は気にしないでいただきたい。こう呼ばせないと、自称お義母さんが拗ねたまんまだったからであって……耳かきと膝枕心地よかったです。年齢だけなら年上だったし、地球じゃ有り得ない主人公的な美少女お義母さんな感じで嬉しかったし……人の暖かさに弱いな、俺。
「今日までに2階には辿り着こう」
「うん、任せて。絶対に守ってあげる」
それ、本来は男の台詞なんだけど……やっぱ、情けねぇな、俺。




