落ち込んだって良いのです
またもや、手足を持って、大地に降り立っている感覚。またこの夢か。ただでさえ、手足のヒントも、戦闘手段も奪われているのに、こんな夢……良い気分ではないな。
「だとしても……創造 : 剣 : 付与 : 自動反応」
多分、あの影はまた現れる。現実で戦えないのなら、夢の中でくらい戦ってやる。
今の服装は白と黒のチェック柄のパジャマだが、強くイメージをする事で、フェルの作ってくれたコートとマントに変化した。
「ーーーーーーッ!」
声とは言えない悲鳴と共に、背後から影が襲い掛かってきた。だが、声に対して、剣に付与された自動反応が発動。白い光を剣が纏い、勝手に動いて影の一撃を受け止めた。
コイツ……よく見れば、スカートを履いてるような……いや、上半身の姿がハッキリしないから分かんないな。もしかしたらそういう鎧やコートに見えなくもない。
「ふざけんなぁ!」
影の剣……だろうか? とにかく武器を払いあげ、蹴り飛ばす。霧の塊のようで柔らかいとも硬いとも言えない感覚。
不気味過ぎる。正気じゃ無くなりそうだ。
「これでどうだ!」
剣を振り下ろし、影を頭から股まで真っ二つに切断する。手応えこそ気持ち悪いがなんとか倒せた……のか?
なんだ、不意打ちさえ受けなければ、案外倒せるんじゃないか。
「ーーーーッ!」
「馬鹿な!?」
斬った影がぐにゃりと歪み、2つの人影になった。剣が反応して、右側の影を切り裂いたが、左の影が背後に回って羽交い絞めされた、切り裂いた筈の影は、今度は一つにくっつく。俺をあざ笑うかのように、ウネウネと揺れていた。
こいつは、何なんだ。俺の夢なのに勝てる気がしない
「こ……で、……た……………のに…………」
影が何か言っている気がするが、それどころではない痛みが俺を襲った。ぐちゃりという音、急速に灼けた様に熱くなっていく腹部、体の中の何かがパキリと砕ける音。これは多分、魔核を砕かれた感覚……なんだろうか。痛い、熱い、痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い!
夢だって言うのに、俺の夢だって言うのに、なんでこんなに痛いんだ!
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」
女性のような、男性のような不気味な笑い声を聞きながら、意識が遠のいていく。四肢がズルリと落ちていく感覚。
魔核が砕かれるのはこんなに痛いのに、四肢が落ちるのは痛くないんだ……な…………
◆
フェルが……俺を覗き込んでいた。窓から光は差し込んでいるが明るくはない。まだ夜なのだろうか……
あの黒い影は…何なのだろうか。勝てないし、夢なのに痛みを与えてくる。
「レイジ様、魘されていましたが大丈夫でしょうか?」
「ちょっと怖い夢見たんだ……」
フェルは俺の頭を持ち上げ、その下に膝を置いて俺の頭を乗せた。
膝枕……なんか、心が落ち着く。
「昼間に聞いた事がショックだったんでしょう。ですが私がついています。落ち込まないでください」
「フェル……」
フェルの手が俺の頭を撫でる。小さい頃から地球の母さんとは喧嘩してばかりの俺には初めての感覚。
恥ずかしくて、気持ち良くて、不安や疲れが取り除かれていく感覚。
「さぁ、このまま私の膝で眠ってください。今度は良い夢が見れますよ」
段々、眠たくなってきた……フェルには悪いけど、このまま……
「…………」
「もっと私に頼ってください。私には……それしか無いのです」
この影、書いてて怖い……←




