レイジ“男爵”の領地視察
あっさりと盗賊を縛り上げ、ソリに乗せてロープで馬車にくくりつけ、引き摺っていた。
良かったな……ケツを直接、引き摺られずに済んで。
「……着いたな」
「着いちゃったな……」
ミハエルが言う通り、俺は一つの街に着いていた。読めない文字がデカデカと書かれた旗をフェルがこっそりと、耳打ちしてくれた。
ようこそ、スギヤの街へ。と書かれているらしい。止めて、凄い恥ずかしい。
「私は一度、領主の館を見てきましょう! 皆様は観光しててください!」
筋肉車を引いていたネルガが、良い汗かいたと笑顔で額を拭っている。そのまま、背を向けて何処かへと、まあ領主の館へ向かっていった。
「フェルさん! 今日は私がレイジさんの車椅子押したいです!」
「え……それは……その……」
マリアちゃんの申し出に、フェルは少し言葉をつまらせる。
「どうした? 別に今日くらい良いじゃないか」
「りょ、了解致しました……」
あれ? 俺、なんかミスった? なんで、フェルはそんなに落ち込んだ顔をしてるんだ? ミハエルは何でそんな残念そうな目を向けるんだ。俺なんか間違った事言っただろうか?
「レイジ、大変だな……」
「え……?何が?」
ミハエルが慰めるように肩に手を置く。
え、やっぱ、俺なんかミスった?
◆
マリアちゃんに車椅子を押してもらい、スギヤの街を見て回る。
ピグマの引き継ぎの書類に書いていた酷い政策の通りだったとしたら、それにしては活気溢れる街だな。
「良い街ですね! レイジさん!」
マリアちゃんが俺に声をかけると、周りの人の視線が俺へと集まる。
あっ、これバレた……?
「車椅子に銀髪のメイド……」
「手足を隠した少年……」
「間違いない! レイジ男爵だ!」
街の人々の声が大きくなってくる。迫り来る人々を前に、フェルがしっかりと立ちはだかってくれた。
「領主って……凄いな……」
「いや、これは予想以上だ。普通領主は好まれるか、嫌われるかなのかは当然だが、このレイジの人気ぶり……ピグマは相当嫌われていたようだな」
この街の人の大歓迎に、流石のミハエルも驚いているようだった。
それにしても、嫌われすぎだろ……まあ、街の人の期待に輝いた目……ちょっと嬉しいかも。
「レイジ男爵、特産品の香辛料を使って鶏肉を焼いたものです。食べてみてください」
1人の青年が差し出したのは紙で包まれた鶏肉だった。
この時代で香辛料を特産品に出来るのは普通なんだろうか?それなら、ピグマが稼げていたのもよくわかる。
「フェル、金払っといてくれ。ミハエル、受け取ってくれるか」
「勿論です、おいくらでしょうか?」
「いえいえ、領主様からお代は受け取れません!」
「それなら、このマリアへと買ってあげる事にします。それなら良いでしょう?」
ミハエルが鶏肉を受け取り、フェルは既に料金を渡していた。戸惑う青年だったが、お礼を告げ代金を受け取ってくれた。
「……美味しいな。このような辛すぎず旨味を引き立たせる香辛料は……ここの領地の特産品だったのか。噂以上だ」
「あーっ! 俺の肉!?」
ミ、ミハエルに肉取られた……




