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レイジ、今更気付く

◆   …場面転換


▽▽▽ …過去へ遡る


△△△ …過去から元の時代へ


 で、やってみようと思います。

 レオが料理の盛られた皿を俺の前に持ってくる。そのまま密着する程に席を近付けて座った分身のフェルが手にした食器で食べさせてくれる。


「……で、ミハエルとマリアは何しに来たんだ?」


 確かに護衛をするとは言ったが、ユリウス王はまだまだフェルに頼むほどでは無いから、もしもの時に呼ぶって言ってたし……はっきり言ってここに来る理由なんて無いはずだ。


「そりゃあ、新しい男爵様へのご挨拶は、王族としての礼儀だからな」


 ニヤリと笑いながらミハエルは俺にそう言った。そうかそうか、俺が新しい男爵になったから、その挨拶か。まあ、ピグマの野郎から全部奪い取ったんだから、俺が男爵になるのかって……


「嘘おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」


「本当ですよ。レイジさん。もうレイジさんが領主になってると、領地にはお父様からのお触れが出されています」


「領地!? 有るの!?」


「何を今更言っているんだ。男爵なんだから領地くらいあるさ」


 そういやユリウス王があの時何か言おうとしてたような……


▽▽▽


「レイジ君、ピグマ元男爵の領地などは知っているのかね?」


「領地……ですか?」


「私が説明を受けておきます。レイジ様はお待ちください」


「ああ、じゃあ頼む」


△△△


 全部フェルに押し付けちゃったやつだ!? 完全にフェルに押し付けたつもりだったけど、証明書にガッツリ俺の名前書いてあるし!? このままだと俺、領地関係に頭を悩ませるタイプになっちまう!?


「ハッハッハッハッハッハ! そういう事であれば、私にお任せあれぃ!」


「あわわ!? ネルガさんの服が!?」


「チッ!」


 豪快な笑い声がミハエルの足元から聞こえる。立ち上がったのは勿論ネルガ・アノルドだ。思いっきり全力でフロントダブルパイセプスのポーズを取ってくれたので、執事服が弾け飛んだ。さり気無く別の料理を運んできたレオが、風の魔法で服の破片を料理に入らないように床に散らせていた。

 マリアちゃんは目を覆い、ミハエルは気にせずに食事を続けている。フェルが舌打ちしたのは、あの執事服がフェルの創った特製の執事服だったからだ。1時間くらい話して、その後5時間ほどかけて創ったらしいので舌打ちの気持ちも分からなくは無いけど。


「領地に関してはピグマ殿が引き継ぎの書類を作って、この私に預けているのです!」


「あのピグマが?」


 信じられない……あのロリコン(仮)ストーカーデブで語尾がブヒとかいう悪役属性てんこ盛りのピグマが、引き継ぎの書類を用意してたなんて……

 それは、フェルもレオもミハエルもマリアちゃんも大口開けて驚くわ……


「必要でしたら、私が取ってきましょうか?」


「任せた」


「ハッハッハ! お任せあれ!」


 ネルガはズンズンと、扉へ歩いていく。

 いや、まさかピグマがねぇ……? 多分、領地を譲った恩を押し付ける為の物とかだったんだろうけど、その物すら俺の物になってんだから、関係ないよな!



 約1時間後に、ネルガは戻ってきた。食べさせてもらってる俺ですら食べ終わっており、俺なんてウトウトしかけていた……ネルガの笑い声で全て吹っ飛んだけど。


「ハッハッハッハッハ!いやぁ、遅くなりました! 普段はレオに案内してもらっているのですが、私1人では完全に迷子になりますなぁ! 申し訳ありません!」


 ネルガ……お前ここに勤めて何年だよ……いや覚える気がない俺が言えた事じゃないけど。

 ネルガからフェルに引き継ぎの為の書類が渡される。それが机の上に置かれると、この場の全員がその書類に視線を集中させた。


《ピグマ様の領地の回し方》


《まず、税は収入の半分ブ……》


「燃やせええええええ!」


 俺の号令によって、フェルが軽い炎でピグマの書類が燃やしていった。机のテーブルクロスには燃え移らないから安心だね。

 クソ! やっぱりこんなんだったか! あの極悪非道幼女趣味屑野郎を信じた俺が馬鹿だったよ!


「さ、流石に今のは参考にならないな……」


「今からでも仕留めてきましょう」


「いやむしろ、今俺達が発見できて燃やせた事を喜ぼう……」


 ミハエルは呆れ、フェルは大激怒である。畜生、領主のやり方なんてわかんねーよ……もっとそっち方面も読み込んどくべきだったかな。


「でしたら、領地の場所に行ってみませんか?」


 え? マリアちゃん、何言ってんの?


「行ってみましょうよ! 民の声を聞くのが大事って、お父様も良く言っていました」


 うーん…気は進まないけど、とりあえず行ってみるか……何もしないよりはマシだしな。

叫び声は勢いがあって、感情が出しやすくて好きです(別観点)

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