7.新たな決意
私はロレンス・クラム。アルカディア様の従者です。アルカディア様は一昨日からおかしくなり、ついに昨日倒れてしまったのです。少し連れ出しすぎましたかね、反省しています。私としては倒れる前にみせた悲しそうな顔がとても気になっているのですが。
「アルカディア様……。」
ついこの間までの彼女は一般的な貴族令嬢といった風で、私は特に仕事に関係のない話はした事が無かった。そんな彼女がいきなりドS女王になるなどと言いだして、私は少し心配しつつも何故か嬉しく思ったのです。
「ロレンス?」
起きたようですが、まだ顔色は悪いようですね。私は人の気持ちを気遣うのはそんなに得意ではないので、ここは言ってしまいましょう。
「もし、何か悩んでいる事があるのなら、言って下さい。」
こんな事を言うのは初めてなので、緊張しました。何やら驚いたような顔をなさっていますが、私に話して下さるでしょうか。
「あの、信じられないとは思うんだけど……。私は生まれる前の記憶を一昨日とり戻したんです。それで、その記憶の中にはこの世界の未来の事もあるの。そして、私はカルロス、ロラン、ハル様、アルバート様、シャル様のどなたかに愛されるのだけど、その結果私は死んでしまう。それを避けるには、私がこの五人に対して主導権を握らなければいけない……。」
そんな話があるなんて信じがたいが、彼女の顔を見るに本当の事なのだろう。でも、何故主導権を握らなければいけないのか、何故彼女が愛される結果死ぬのかが分からない。
「信じますよ。で、何故主導権を握ろうという発想に?」
「私が殺される理由は恋人によって様々なんだけど、例えば私には婚約者がいるじゃない。そのせいで私と結婚出来ないから自殺とか、私の事が好きすぎて殺すとかなの。それらは全て私が相手の全てを受け入れられなかったから。相手に私が主導権を握っていれば、きっと誰も死なずに済む。」
「そうでしょうか、貴方が主導権を握っていたとしても変わらないと思いますけれど。それに、仮に貴方がそうだったとしたら、何をするのでしょうか。」
「それは……。私を諦めさせたり、とか。」
「それでは、悲しみのあまり亡くなられるということもありますよ。」
「っ。じゃあ、どうすれば!!」
「アルカディア様、ドSとは自分が悪役を引き受ける事でその他の人々の平穏を生み出す、いわば最も人の事を考えている人、だと私は思っております。それだけの覚悟がありますか?」
きっと、お嬢様ならドSになったとしても、それだけの覚悟があれば人に恨まれずに誰も亡くならない結末を見つけられると思いますが。
「分かったわ。私は、悪役になってみせるわ!でも、ロレンスだけは私の事を嫌いになることは許さないから。」