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サクラダ家 ~いつまでも制作が完了しないので永遠に終わらない作品群~  作者: K_Take
いつまでも制作着手できそうになく、終わりを迎える以前に始まりそうになかったので、まずは制作することにした
3/5

桜田さんの仕事っぷり

 竹下が、本日配属されて、早二時間。

 仮のパソコンのセットアップが完了し、仕様書や詳細設計などのドキュメントを閲覧中である。

 

 それにしても、暇である。

 今まで、数々の現場を渡り歩いてきたが、いずれも、火を噴いた状態での配属だったため、修羅場も修羅場、ド修羅場に、何の説明も無くボチャンというのが常だった。ひどい現場では、

 「セキュリティーカードの手配が追いつかないので、居室は誰かと一緒に入ってくれ」

 とか決して許されないことを指示される現場もあった。

 配属時に一番火を噴いていた現場としては、「昨日が納期でした」と言ってながら、現在単体テストを実施中という現場に入れられたこともある。

 さすがに当時の上司に相談の上、その日の終電時刻直前に、退去することとした。

 

 竹下は、過去の現場について思い出しつつ、現状の平和っぷりを堪能することとした。

 ここで、うっかり、「平和だ」とかつぶやくと、直ちに忙しくなる法則が発動するので、用心である。

 

 のほほんとしていると、

 

 「こら!また、そんな座りかたして!」

 

 と、女の人が怒る声が聞こえた。

 竹下は、自分が怒られたのかと思い、声の主のほうへ振り向くと、桜田さんが、女性に怒られていた。

 桜田さんのほうを見ると、桜田さんは左脚を立てひざにして、パソコンの操作をしていた。

 

 「安心しろ。ちゃんと靴は脱いで居る」

 「そんな問題じゃないでしょ?」

 「わざわざ、怒りに来たのか?」

 「そんなわけ無いでしょ。新たに入った竹下さんのセキュリティーテストの件」

 「おお、そうだ。ありがとね」

 「あっ。こらっ。ちょっと!」

 

 竹下は、呼ばれるまでは、仮のパソコンで詳細設計などのドキュメントを閲覧していた。

 しかし、その声で、何事かと思って、振り向くと、桜田さんは、ワイシャツの裾をだらしなく出した状態で立っていた。

 

 「やれやれ、いつもすまないねぇ」

 「もう、今日から部下をもったんだから、もっとちゃんとしなさい」

 

 怒っていた女性は、慣れた手つきで桜田さんの腰に手を回し、だらしなく出したワイシャツの裾を、ズボンに入れていた。

 どうやら、毎度のことらしい。

 

 「いったいこんな格好で、何考えているの?」

 「直近では、今朝入った障害対応の件が優先かな。そして、昨日の定時後、別の部署で、うまく行かないと無茶振りされたデータインポートの件と、新たに配属された竹下さんへの仕事の割り振りとか、環境構築とか。その他もろもろ…」

 「あの。もっと、まとめて」

 「行田さんが、「何考えているの?」と聞いたから、答えたんじゃないか」

 「で、身だしなみは?」

 「んなもん、優先度低。最悪手が回らなくても、事故にはならない」

 

 どうやら、怒っている女性は、「行田さん」と言う方らしい。

 あと、桜田さんは、かなり脚が長くて、スタイルが良いのだが、ワイシャツの裾がズボンから出ていることが多く、だらしない状態になりがちで、残念な感じだった。なぜ、スカートでないのかは、座っているときの姿勢から、なんとなく察しがついた。

 桜田さん本人は気にしなさそうだが、特に行田さんが全力で止めることだろう。

 

 いろいろ躓いたが、竹下は、桜田さんからのセキュリティー講習後、確認テストを受け取った。

 問題は、20問で、○×で回答する形式である。解答時間は、20分。

 提出後、1問不正解であったが、基準の合格点だったらしく、晴れて、このプロジェクトメンバー「サクラダ・ファミリア(←作者の脳内での呼称)」の一員となれた。

 それにしても、不正解の1問が、大変気になる。


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