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ラムネ菓子

 会場近くに着いた俺たちは、まだ花火が打ち上がるまで時間もあることから、出店を巡ることにした。


 出店はざっと遠目から見たところ、たこ焼き、フランクフルト、りんご飴、わたあめ、などの食べ物の店から、射的、輪投げ、金魚すくい、などの遊びがメインの店まで様々な種類があった。


「ね〜、あたしアレやりた〜い!」


 彩香が指を差した先にあったのは、射的があった。


「射的か、面白そうだな」

「でしょでしょ〜!んじゃ、さっそく一緒にやろやろ〜!」


 俺は射的屋のおっちゃんに小銭を渡し、それから射的をする際のルールを聞いた。


 コルク弾は3発。その3発以内で、お菓子や玩具などの標的を狙って撃ち抜き地面に落とすことができたら、その落とした物がもらえるらしい。


 彩香はさっそく射的の銃を手に取り、構えて標的に狙いを定めた。どうやら標的は、箱型のラムネ菓子らしい。


 銃口がふらふらしているのを落ち着かせ、ぴたりと止まったその瞬間、彩香は引き金を引いた。


 ぽんっ!っという軽い音がしたその瞬間、弾は標的のわずか上を通り過ぎていった。


「おお、惜しかったな」

「ううー、くやし〜!あと2回!次こそはっ」


 悔しさを滲ませた彩香は、再び銃口をラムネ菓子に向けた。そしてぽんっ!という音。しかしラムネ菓子には当たらず、弾は少し下へと飛んでいってしまった。


「ラスト!次は絶対当てるんだからっ!」


 そう言うと彩香はこの日一番の集中の深呼吸をして、そして銃口をラムネ菓子に向けた。


「えいっ!」


 と彩香が言うやいなや、弾は軽い音とともに飛んでいき、そしてラムネ菓子に当たった。

 しかし、ラムネ菓子は少しだけ動いてズレただけで、地面に落ちるまでには至らなかった。


「ああ〜!なんでぇ〜!」


 彩香は余程悔しかったのか、足をじたばたさせた。


「本当に惜しかったな、いけるかと思ったが」

「だよね〜!絶対にキタ!って思ったのに〜、はあーざんねん」


 そう言うと彩香は眉を下げてしょんぼりした。

 まったく、しょうがないな。


「俺が取ってやるよ、ラムネ菓子」

「ほんと!?」


 彩香はすぐに目をキラキラさせて俺を見てきた。なんとまあ眩しい期待に満ちた表情だこと。

 こんな彩香を悲しませないためにも、頑張らないとな。


「おっちゃん、俺もやる」


 と言いながら俺は射的屋のおっちゃんに小銭を渡して、銃を受け取った。


 さっそく構えて銃口をラムネ菓子に向ける。それからなるべく身体を前へ乗り出し、ラムネ菓子に近づける。しかし意外と銃口がぶれて定まらない、思っていたよりも集中力がいるんだと気づいた。


 狙うは、ラムネ菓子の箱の上の方だ。上に当たれば大きく揺れて、ラムネ菓子は恐らく落ちる。俺の計算ではそうなるはずだ。あとは俺にその腕があるかどうかだが。


 などと考えているうちに、狙いが定まったので俺は引き金を引いた。


 ぽんっ!と相変わらず乾いた軽い音がして、コルク弾はラムネ菓子の上を通り過ぎていった。


「あとちょっとだったね〜、次こそはファイト!」


 彩香の応援をもらい、気合が入る。

 もう一度集中し、俺はラムネ菓子に狙いを定める。


 ぽんっ!


 コルク弾が飛んでいく。しかし、また外れてしまった。次は右下の方に少しずれていった。


「ラストラスト!がんばってっ!」

「おう」


 俺は目を閉じ深く息を吐き、いま一度集中をした。

 そして銃口をラムネ菓子に向ける。

 ふらつく銃口が、徐々にふらつかなくなっていき、狙いたい場所でぴたりと止まった。


 いまだ!

 そう思った俺は引き金を引いた。

 コルク弾は軽い音を響かせ、ラムネ菓子の上部に当たった。そしてラムネ菓子はふらりとぐらつき、地面にぱたんと落ちていった。


「すご!ほんとに取った!すごいよマーくん!わーおめでとう!」


 そう言うと彩香は俺に抱きついてきた。

 そういえば今は浴衣だった。身体の起伏がダイレクトに伝わる。

 突然の抱擁に照れてしまった俺はばっと彩香を身体から引き離し、「ちょっ、びっくりするだろ」と言った。


 すると彩香は舌を出しながら、「あ、ごめんごめん、嬉しくってつい」と言う。彩香、やっぱりかわいいな。


 まあこれで、彩香が欲しがっていたラムネ菓子を無事に取ることができた。俺としては一安心だ。

 彩香の顔もご満足のようで、にっこにこしている。



 俺に取ってもらったラムネ菓子を俺に見せながら彩香は口を開いた。


「マーくん、ほんとありがとね」

「取れてよかったよ」

「あたし、マーくんのこと、もっと好きになっちゃったかも」

「そうか、それなら尚更よかった」

「かっこよかったよ」


 なんて言葉を交わすうちに、気がつけば花火の時間が近づいていた。


「花火、見に行くか」

「うんっ」


 俺たちは手を繋ぎ、花火がよく見える場所を探しながら歩いていった。

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