第8話
こんにちは、F星です。第8話です、楽しめていただけると嬉しいです。
勇者やめます。大魔王はじめました。第8話
「……え?」
レナーの顔色が悪くなる、シルバ達は俯くしかなかった。
「じゃ、じゃあ私達、アビド君のお父さん達に指を…うっ…ごめんなさい私ちょっと外へ」
レナーは吐き気を要したのか外に出る。
「つまりあの黒い液体はお前の親が殺されたものだってのか?」
「正確には血です、アビドの親の、いろんな人たちの血が混ざって黒くなってるんです」
シルバの子分が言いにくそうに言った。
アビドは俯いてるだけだ。
「…………………んだよそれ……………胸糞わりぃ」
ツバサは拳を握りしめるしかなかった。何も出来ないからだ。
「なんでだ…なんで…アビドの親の血を使うんだよ」
「分からないです、俺達には何も…」
「お前ら…それを知ってアビドを!」
ツバサは怒りを抑えられないからかシルバの服を掴む…がすぐに手を離した
「…わりい、お前らだけが悪いわけじゃない……あいつんとこ行ってくる」
とツバサはレナーの元に向かった。
「よう、大丈夫か」
ツバサがレナーを探していると、レナーは茂みの方で小さく縮こまっていた。吐いたのだろう少し涙目になっている。ツバサはレナーの背中を擦った
「うっ…おえっ…ツ…ツバサ…うっ」
「情けねーなあ血を操るってのに、ほら水飲むか?」
「…ありがとう、」
「なぁレナー…」
「ゴクッゴクッ…っ、はい」
「提案があるんだが」
「私も1つあります…お先どうぞ」
「アビドを仲間にしないか?」
「ええ………私もそう言うつもりでした」
「さっきまで吐いてたのに逞しいなお前…」
「ツバサこそ、そういうとこ嫌いじゃないです」
二人は互いにフッと微笑み、レナーが落ち着くまで少し空見て家に戻った。
「わり、戻ったわ、なぁアビド…アビド?」
アビドの様子がおかしい、
「俺は…俺は…俺は…」
「アビド?おいアビド!」
「やめろ!俺に触るな!俺に触るな!父さん!母さん!助けて!早く!もうやだ!もういやなんだ、いやだ!いやだ!いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ」
アビドの周りに風が纏う、目の星が強く光る
「アビド君!アビド君!」
「頃合いか…」
レナーがばっと後ろを向くとカタンとアドゥがいた
「カタン…さん、それに…」
「やはり貴方達彼に関わっていましたね、愚かな」
カタンは剣を出しレナー達に向ける
「死んでもらいます。レナー殿、ツバサ殿、そして…名も知らぬ裏切り者ども、さて彼をこちらへ、生贄の頃合いです。」
カタンはシルバ達の方を見下す
「カタン…俺が簡単に渡すとでも?」
「はぁ…良いですかツバサ殿…彼のことなどどうでもいいではありませんか、貴方達はただの旅人、星神様に託宣をもらい前に進めばいい、見過ごせば済む話です。そうだ!見過ごしましょう!つばさ殿!くどくど面倒の臭い。それともここで死にたいのですか?」
「こいつは俺たちの仲間にする、悪いが気味の悪い宗教ごっこはてめえらで勝手にしてくれ」
「ええ、ティモールトゥス家の名にかけて、アビド君は私達が守ります。」
「ふっ…あっはははは!いやぁ面白い、何故ですか?何故その出来損ないを仲間に?してどうするのです?貴方達の足を引っ張るだけですよ、もしかしたらとんでもない災いを呼び込むかもしれない」
「黙れ、それはお前らの決めることじゃない」
レナーとツバサが戦闘状態にはいると
「くどい」
そう言ってアドゥがアビドの両親の血が入った瓶をかざす。
レナーとツバサの体がぐんっと重くなりやがて動けなくなる。
「かっ…体が…まさか…あの時血を混ぜたから…」
「流石は初代様の娘は感が冴えてますね、この瓶に入っている血の主の体を拘束できるのですよ。御二方の血が入っている時点で’’詰み’’というやつです。さて」
そう言ってカタンはくるまっているアビドを気絶させ持ち上げる。
「さてツバサ殿、レナー殿…ここで貴方達を殺すのは簡単です。このまま帰ると約束してくれれば命だけは見逃しましょう」
「はっ、ほざ」
「ふざけないでください…こんなもの…」
固まっていたレナーの身体が徐々に動くようになる。
「馬鹿な…なぜ動ける?まさか…魔王の血だからか?一滴だぞ?たった一滴…」
「ぐぐぐぐぐぐっ……はぁっ!!」
レナーの体が鎖から解かれたかのように自由に動く。
「はぁ、はぁ…」
(レナー……うおおおおおお!!)
レナーを見たツバサはめいいっぱい力を入れるが身体はピクリともしない。
「やめたまえ、レナー殿はまだしも転生者とはいえ君はただの人間…不可能だ。」
「さてレナー殿、ご自由になるのは大したものですが、それで?どうするのです?私達に勝てるとでも?」
「やってみますか?…不可能ではないと思いますよ…」
「…それもそうですねぇならこうしましょう、今から一歩でも動けばアビドを殺します。」
カタンのアビドの腹を締め上げる力が強くなる
「なっ…!」
「そのまま動かないように、それでは、あぁ、あと」
カタンはピタリと止まりシルバ達を見る
「お前達は反乱分子と成り得ます、消えてもらおう」
カタンは軽く剣を振り上げると、空を切ったのになぜかシルバと子分たちの身が切れ血飛沫が飛び交う。
「ぎゃっ…」
「シルバさん!」
レナーは動こうとするもカタンに睨まれ動けない…
「それではレナー殿、ツバサ殿、明日の朝までには消えてください」
アドゥとカタンがアビドを連れて行って去る。
シルバ達子分が何かをボソボソと呟いている
「ごめんなさい…ごめんなさい…アビドなんか見捨てれば良かった…ごめんなさい…オヤジ…おふくろ…あんなやつに関わらなければ…………」
「いやだ…死にたくない…死にたくない、死に……」
涙を流しながら他責や後悔に呟く二人の子分の声を聞くたびにレナーの心は引き裂かれるように痛む
やがて、子分たちの目に光が消えていくのをツバサとレナーは見ているだけしか出来なかった
「………なぁ…ツバサさんよぉ………なぁ聞こえてるか…なぁ…アビドを」
シルバが瀕死の状態で虫のように細い声で話す
「アビドを…助けてくれねぇか……あいつに俺は……何も…して………だから………あんた達が……連れて……」
ツバサの体がようやく動けるようになった頃には膝から崩れ落ちて絶望しているレナーと三人の竜人の死体だけだった。
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