取り引き ①
開いて下さりありがとうございます!
短編「私の10年を返していただきます」の付随作品です。短編の方を先に読んでいただければ、より楽しく読んでいただけると思います。
「父上!お話があります」
テオドールは現場を目撃したその足で、国王である実父の元へ向かった。
「どうした?」
「僕の婚約の件についてです」
執務室のデスクで書類を片手にしていた国王───レオナルドはテオドールの方へ視線を向けた。
「学園を卒業するまで婚約を待ってもらってもいいでしょうか」
「それは……一国の王となる者の意見、としてか?」
威圧的な声と雰囲気にテオドールは思わず後ずさりした。それらしい案を出したとして、抜け目があったら即却下され、二度とこんな機会は無くなるだろう。
「……ち、父上はドルファン伯爵家を王族に率いれたいのですよね?」
「あれだけの知能を持った家系を勧誘したいのは確かだ。しかし、それと何の関係がある」
「あの家は今まで握れる弱みがなかった。しかし、その弱みを見つけたのです」
「ほう?それで、その弱みと言うのは?」
「言いたくありません。話してしまったら、父上は直ぐに解決していまいますから」
「まぁ違うとは言えないな」
「待ってもらうのに無料でとは言いません。父上が話していた王位を弟でなく、僕が引き継ぎます」
今まで王位なんて興味がなかった。王位継承の為の知識はもちろん、その他に至るまで学ぶ気すら起きなかったのだ。
(しかし……僕の変な興味ある無いで、あの子を救えるのなら。僕は何度でも興味も、プライドだって捨てられる)
「分かった。許可しよう。しかし期限は必ず守れよ?18歳になって卒業した日、お前の有無なしに婚約し、そのまま王位を継いでもらうからな」
「はい。テオドール・ロア・ウィリアムの名にかけて」
◇◇
「良かったのですか?王子とはいえ、まだ子供の彼とあんな事約束して」
テオドールが出て間もなく、レオナルドの秘書兼護衛を務めているポールは訝しげに問いた。
レオナルドは最後の書類に印を押すと
「あいつには王になる素質がある。そしてあいつが狙っているリリーフィア・ドルファン伯爵令嬢にもな」
面白そうにケタケタと笑った。
レオナルドにはテオドールが考えている事、その全てを見抜いていたのだ。全て分かった上でテオドールとの取引に応じた。
「あいつが初めて自分で考えて、動いたんだ。王となる前に親として、これ以上の喜びはそうない」
そう話すレオナルドの顔は息子を愛するただの親の顔だった。
この人もこんな顔ができるものなのだと、ポールが感心したのもつかの間
「まぁ失敗しそうだったり、あいつが挫けそうだった時は……発言には代償が付き物だと教え込むつもりだがな」
(この親……息子を崖の上から吊るして楽しむタイプだ)
悪役顔を最大限発揮しながらほくそ笑むレオナルドを前に、ポールは呆れた顔を浮かべた。
10話程度で完結予定でしたが、完結できそうに無いので20話程度に延長することになりました。
次話は
リリーフィアが努力するお話です。
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