14-10 虚ろなる魔女
東京都内の、新築アパート。
そこで同棲を始めて1年。
3LDK間取りの、その家に住んでいるのは、ケイとジェシカの2人だけだ。
ケイはアルトローゼ王国の騎士として働き、ジェシカは魔術学会の若き天才学者として、忙しい日々を過ごしていた。慌ただしいながらも、自宅で過ごすときには仕事を忘れ、互いに恋人同士の時間を過ごしている。なれ初めは、ケイからジェシカへの愛の告白。エヴァノフ企業国での旅を通じて進展した関係が、互いを異性として意識させ、昇華させた。
……整理できた情報は、それくらいだ。
ダイニングテーブルを囲んで、ケイと向かい合ってトーストをかじる。微笑みかけてくる恋人と2人きりであるという状況にドギマギし、ジェシカは頬を熱くしながら、終始、うつむき加減でいた。緊張のあまり、ちゃんと食べたという実感がないまま朝食を終える。そうして2人は、仕事の服装に着替えた。
ケイは黒のスーツ。
ジェシカも、女性用のスカートスーツである。
フォーマルな格好になり、2人は家を後にした。
そうして閑静な住宅地の真ん中を、並んで歩いた。
最寄りの駅で、違う方向の電車に乗ることになるが、ホームまでは一緒なのである。
朝早くともなれば、ゴミ出しの主婦や、通学中の学生たちの姿が見受けられた。
近所の人に挨拶され、ジェシカはぎこちない挨拶を返す。
ふと、隣のケイが手を握ってきた。
指を絡ませた、恋人つなぎである。
「はわっ! はわわわわ……!」
予期せぬことに驚いたジェシカは、ますます赤面しながら狼狽えてしまった。
それでも嫌ではなかったため、手を振り払うことはしない。
むしろ、とても嬉しかったのだ。
今朝から妙に慌てている様子のジェシカを見やり、ケイは苦笑した。
「本当に、今日はどうしちゃったんだよ、ジェシカ。なんか、同棲したての頃って感じで、いちいち初々しい反応してるみたいに見えるけど」
「そそ、そんなことないわよ! こ、こうして、手、手を繋ぐのだって……慣れっこだし!」
怪しまれないよう、ジェシカはケイの手を強く握り返した。
ケイは不思議そうな顔を返したが、微笑んで言った。
「まあ良いさ。なんかいつもに増して可愛いし」
「う、うん……ありがと……」
また可愛いと言われて、ジェシカは茹で蛸のように耳の端まで熱くして、俯いてしまう。
「同棲したての頃か……。あの頃は大変だったよな。近所の人たちが、ジェシカのことを子供だと勘違いしててさ。オレがロリコンの性犯罪者だって疑われて、通報されただろ」
「わ、私は大人よ! ケイより精神年齢は年上なんだから!」
「そうそう。でも魔人族を見たことある人って、東京には少ないし。肉体年齢と精神年齢に差がある種族なんだって、わからなかっただろ。まあ、こうやって一緒に並んで歩いてると、今でもたまに、若干の犯罪臭は自分でも感じてるんだけどさ」
「な、なら手を離したって良いわよ。また知らない人たちに見られて、通報されたくないでしょ」
「オレは構わないよ。ジェシカとずっとこうしていられるなら、捕まっても」
「~~~っ……!」
ケイが言うこと、やることに、いちいちドキドキさせられてしまう。
ジェシカは視線を逸らしながら、高鳴る胸の鼓動を必死に押さえた。
そうしていると、やがて駅に着き、改札をくぐってホームまで辿り着いた。
電車は数分でやってくる。
その間、2人は手を繋いだまま、ホームに並んで立っていた。
「ねえ、ケイ」
「ん?」
「……アデルは、最近、どうしてる?」
「アデル?」
恐る恐る、ジェシカはそれを尋ねた。
ケイが愛しているのは、アデルのはずだ。ジェシカではない。
それなのにケイはさっきから、アデルのことなど一言も口にしないのだ。
そこに違和感を感じずにはいられない。
「アデルって……誰のこと?」
「誰って……!」
予期せぬ返事に、言葉を失ってしまう。
ケイが返してくる表情から、ジェシカが口にした人物の名を「知らない」というのが見て取れる。その反応だけでも、目の前のケイにとって、アデルは見たことも聞いたこともない人物であるのだと、察するには十分だった。
本当に知らないのか。
忘れてしまっているのか。
状況はよくわからない。
ケイが乗る電車が、ホームへやってきた。
名残惜しそうにジェシカの小さな手を離し、ケイはそれに乗り込んだ。
「先に行くよ。今日の帰りは、少し遅くなるかもしれないから。夕飯は先に食べてて良いよ」
電車の扉が閉まり、ケイは微笑みと共に手を振った。
そうして別れた後、ジェシカは1人、ホームに残され、神妙な顔で青ざめた。
「……内心で思い描く楽園を再現して、理想の世界を形作る。どう考えてもここ、トウゴが囚われていた”人工天国”ってヤツよね」
自分を取り巻く、得体の知れない日常。
そのカラクリについて、賢いジェシカは、すでにおおよそ見当がついていた。
「アタシはたしか……魔術で胸を撃ち貫かれて死んだはず。それが最後の記憶。なのにこうして……生きてる? 理屈はよくわからないけれど、普通に考えれば、わざわざレルムガルズへ不法侵入したアタシを、こうしてここで生かす理由なんてないはず。アタシの命に価値を感じる敵がいるとしたら、それはグラハムくらいだけど……。ならこれはつまり、グラハムの仕業?」
ジェシカは、ケイと繋いでいた手のひらを見下ろした。
まだ残っている温もりを寂しげに見つめ、呟く。
「これが、アタシの思い描く楽園……アデルがいない世界を、アタシが望んでいるってこと……?」
罪悪感。
「だとしたらアタシ、なんて嫌なヤツ」
◇◇◇
セイジの銃で、わざと胸部を一発撃たれる。
そうして仮死状態になり、トウゴは再び、EDENの仮想現実へ入り込んだ。
意識と共に薄れた視界。
その後、すぐさま目の前が明瞭になり、気がつけばトウゴは繁華街の中央にいた。和、洋、中華。様々な国の特徴を持った建築様式で、所狭しと建造物が建ち並んでいる。あらゆる国の文化をごちゃ混ぜにした、統一感のない雑多な大都会の景色が広がっている。
レルムガルズの中枢エリア、通称“ロビー”だ。
数時間前に訪れた時とは様相が異なり、街には一般国民の姿がほとんど見受けられなかった。
閑散とした通りを前にし、レオが呟く。
「秘密の侵入口から、無事に潜入できたようだ。予想通り、国民の大半は、緊急避難プロトコルの影響で強制ログアウトさせられているみたいだな。一般人も、警備兵も、ほとんど残っていないだろう」
「喜ぶわけじゃねえが、ミズキが異常存在たちを引き連れてきたおかげってか。この様子なら、王宮ももぬけの殻になってんじゃねえのか?」
「緊急避難プロトコルの時にも、常駐兵は残る仕様になっている。王宮の護衛がゼロになっていることはありえないだろう。だが、少数精鋭でなら突破できる可能性は高い」
話をしていると、唐突に呼びかける声が聞こえた。
「レオ様!」
通りの物陰から、ぞろぞろと武装した魔人族の市民兵たちが姿を見せた。
いずれもタクトのような杖を手にしており、軍隊と呼ぶには、軽装な出で立ちである。
20人ほどだろうか。中には知った顔も混じっている。
雪山の小屋のワールドで出会った、反体制派の戦士たちだ。
「ローガ王の待ち伏せにあって、死中にあったと報告を聞いていましたが、よくぞご無事で!」
「ザリウス様は、いずこへ!?」
群がるように集まってくる仲間たちへ、レオはザリウスの状況を説明した。
全員が神妙な顔になり、時間的余裕がないことを理解する。
レオはレジスタンスの面々を見渡し、言った。
「やはり皆、この好機を逃さずに集まっていたんだな」
「はい。我等は元より少数。数で現王の勢力に及ばない以上、この非常事態に上手く立ち回り、逆転を狙うしかありませんでした」
「国家存亡の危機の中、こんな火事場泥棒のような所業を行うのは、正道に外れますが……やむを得ません」
「急ぎ、カースグリフの槍のデータを入手しましょう。そうすれば、この窮地をひっくり返すことなど容易いでしょう。我等も王宮へお供します」
急に増えた味方を見渡し、トウゴは苦笑して言った。
「味方が増えるのは、ありがてえことだな。よし、さっさと王宮へ向かおうぜ、レオ」
「待て、トウゴ。その前に、これを渡しておこう」
レオは、レジスタンスの仲間が用意してくれた、拳銃を手渡してくる。
「この仮想現実世界に、現実世界の武器を持ち込むことはできない。だが、ハッキングによって敵の魂データを傷つけられる”情報武器”であれば、現実の武器と同様の取り扱いで、相手にダメージを与えることができる。お前は魔術が使えない人間だ。ここでの戦いで、これは役に立つだろう。お前にも使い方がわかりやすいように、銃の姿形として造形してもらってある」
「へへ。ありがてえ。やっぱり、こいつがねえと落ち着かないところだったぜ」
トウゴは拳銃を受け取り、レオへ礼を言う。
そうしてレジスタンスたちと共に、行動を開始した。
目指すは王宮である。
◇◇◇
閑散とした街の中では、こそこそと身を隠したり、目立たない裏道を進んだりする必要はなかった。トウゴたちは堂々とメインストリートを駆け抜け、一気にレルムガルズの王宮へ向かった。やがて見えてきた目的地は、異形の様相であった。
「見えてきたぞ! あれが、レルムガルズ王宮だ!」
「こりゃあすげえ……! ”継ぎ接ぎ城”とでも呼べばいいか?」
ここまで駆け抜けてきた街の風景が、様々な文化を混ぜこぜにしたものだったように、城の外観も、和、洋、中華などの、様々な様式が混ぜ合わさっている。中華の王城を土台として、その上に中世の城がそびえ立ち、屋根は瓦になっている。建築法に準拠しているか怪しい、めちゃくちゃな構造とデザインの、大きな建物だ。物理法則の通用しない、仮想世界ということもあってか、やりたい放題な建造物だった。
……城門は開け放たれており、周囲を守備する護衛兵の姿は見当たらない。
「緊急避難時にも、護衛の兵士は少しばかり残っているはずって、言わなかったか?」
「そのはずだが……妙だな。まるで無人のような静けさだ」
トウゴたちは、容易く城内へ入ることができた。
地平線まで続いているのではないかと思うほどに広い、大広間。
そこを見渡してみても、敵兵の1人の姿さえ見当たらなかった。
「――――ククク。また来ると思っていたよ、盗人の諸君」
「!」
トウゴたちへ呼びかける声。
それは妙に見下した口ぶりの、知っている高慢な男のものだった。
大広間の中央。トウゴたちの行く手の虚空に、光が迸る。直後、そこには無から生じた、巨大な鉄扉が現れた。重厚な金属音を漏らしながら、ゆっくりとその扉が開かれると、向こう側の空間から、トウゴが予想した顔が、歩み出てくるのが見える。
「この声、やっぱりてめえかよ、グラハム」
「これはこれは。かの有名なお尋ね者、峰御トウゴに、顔と名前だけでなく、声まで憶えられたとは。有名人に知られているというのは、つまり光栄に思っても良いことかな?」
ボサついた赤髪が、渦巻く炎のように立ち上がっていた。頬が痩けている、不健康そうな細身の少年。グラハムは皮肉で返した。
その登場に、トウゴは素早く状況を察した。
「なるほどな。口ぶりから察して、俺たちみたいなのがドサクサ紛れに攻め入ってくるのを見越してやがったな。こりゃあ、待ち伏せと思えば良いか?」
「野蛮な割に、頭の回りは早いようだねえ。その通り。ローガ様の不在を狙って、レジスタンスや君たちのような不届き者が、カースグリフの槍のデータを狙ってくる可能性が高かったからね。僕がこうして、精鋭を連れて、直接お相手してあげようと待っていたのさ」
グラハムは肩をすくめると、真顔で告げた。
「下々の兵に任せるよりも、自分でやった方が余程、効率が良くて信用できるから。大事な仕事は、常に自分の手でするものだよ」
「テメエは、いつも厄介な時に現れて、厄介な妨害をしかけてきやがるな」
「ハハ。僕の賢さを誉めてもらっているのだと、思うことにしよう」
レオが小声で、トウゴに警告してくる。
「おい、敵の人数は少ないようだ。だが気をつけろ、トウゴ。以前に遭遇した”水の刀”を使う女もいるぞ」
レオが視線で示す先。グラハムの隣りには、以前に見たことがある少女がいた。エプロンドレスを着た、人形のように愛らしい赤髪の少女だ。だが、その眼差しは陰鬱に陰っており、大きな日本刀を大事そうに抱きしめていた。
「たしか、アリアとか呼ばれていたか。厄介な魔術師が2人かよ」
「いや、どうやらまだ他にもいるみたいだぞ」
レオの言葉に遅れ、扉の向こうから3人目の人影が現れる。
その姿を見た途端、トウゴは驚愕した。
「なっ!? あれは……!?」
思わず、頓狂な声を漏らしてしまう。
長く伸ばした、赤色のロングヘア。気が強そうな目付き。ロゴス聖団の修道服姿だ。大きなツバの三角帽子をかぶっている。修道女であり、魔女であるような出で立ち。それは、トウゴがあまりにもよく知る顔である。それがグラハムと並んで、自分の前に立ちはだかる場面など、想像してもいなかった。
言葉を失っているトウゴに代わり、レオが冷や汗交じりに、苦い表情で言う。
「まさか……雷火の魔女、ジェシカ・クラークだというのか……!」
「レオが言っていた通り、本当に生きてたのか!? でも、どうしてジェシカが、あのグラハムって野郎と一緒にいやがる!」
ジェシカの眼差しは虚ろで、冷ややかにトウゴたちを睨みつけていた。
グラハム、アリアと並び立ち、臨戦態勢を取るべく杖を構え始めた。
「どうも、敵側についているように見えるが……!」
「俺たちと……戦うつもりなのか、ジェシカが」
「状況はわからんが、来るぞ、トウゴ! ぼーっとするな!」
ジェシカの周囲に、青い光の文字が一瞬だけ輝き、掻き消える。
すぐ後、ジェシカが掲げた杖の上空に、特大級の火球が生じた。
それは、たった1人の少女が創り出すにしては、あまりにも非常識な威力の魔術だ。
あまりにも大きな火球。その破壊力を想像したレジスタンスの面々は、見ただけで絶望し、全員が表情を凍らせてしまう。見るからに強力な魔術。それをかわすのは間に合わず、防ぎきれるほどの防御魔術も持ち合わせていない。回避も防御も不可能となれば、ただの一撃で、自分たちは消し飛ばされてしまうだろう。それが見てわかったから、誰しも恐怖せざるをえない。
「あれはヤバい! でかすぎて避けられねえぞ、どうするレオ!」
「くっ! まさに一撃必殺の威力! ジェシカの魔術とは、敵に回すとこれほどまでに厄介な……!」
勝ち誇った笑みで、グラハムはジェシカへ命じた。
「さあ、やりなさい。我が愛しい人形よ」
命じられたジェシカは、感情のこもらない表情で、ポツリと呟いた。
「広域殲滅魔術――――灼熱彗星」
死刑宣告のような呪文の後、燃えさかる火球は、勢いよくトウゴたちめがけて放たれる。視界を埋め尽くすほどの火の塊に迫られ、その熱を感じながら、トウゴは覚悟を決めざるを得ない。
その時、割り込む少女の声が、大広間へ轟いた。
「――――石壁の鎧!!」
トウゴやレジスタンスの眼前を守護するよう、床が隆起し、瞬時に岩石の防御壁を構築する。火球のサイズに負けず劣らない、そびえ立つような巨壁だ。それが迫りくる火球を受け止め、蒸発して威力を相殺する。火傷しそうな熱気の中、溶岩のように赤熱化した壁の破片が飛び散り、降り注いでくる。
尻餅をついているトウゴを、レオが手を貸して、起こしてやった。
立ち上がるなり、トウゴは目を瞬かせて固いつばを飲み込む。
「か、かなりヤバかった! 俺たち、助けられたのか……?!」
「今の女の声は……」
「トウゴさん! レオさん! レジスタンスの皆さん!」
助太刀してくれたのは、案の定、知っている人物だった。
レジスタンスたちの背後。城門の方から、杖を手にしたメガネの少女が駆けつけてくる。
その見慣れた顔を確認するなり、トウゴの表情から笑みがこぼれた。
「良かった! ジェシカが生きてたんだから、やっぱりエマも生きてたのかよ!」
「はい、おかげさまで! 私は何とか無事です! まだお姉ちゃんが生きているおかげですよ! それよりも……」
遅れて駆けつけたエマは、トウゴとレオに並び立ち、姉の方を見る。
苦しげに眼差しを歪めているエマへ、トウゴは尋ねた。
「エマが生きてるわけだし、じゃあ、あれは間違いなく……ジェシカで良いんだよな」
「なぜだ。ジェシカは、トウゴや俺たちの味方のはずだったろう」
エマは、悔しげに歯噛みして答えた。
「敵に思考を奪われ、操り人形にされています……!」
「思考を奪われてるだと!?」
「はい。全部、あのグラハムって人の仕業です。あの人に、お姉ちゃんの魂は分解されて、精神と情報に分かたれてしまっているんです! そもそも、壊れていた魂を修復できる技術もすごかったんですけど、まさかこんな芸当までできる人が、この世にいたなんて……驚きですよ。あの人、普通じゃない才能があります。たぶん、お姉ちゃんに負けないくらいの、天才なんだと思います」
「エマにそこまで言わせるくらい、賢いわけか。でも性格に難がありだから、だいぶやべえヤツってことにもなるぞ」
トウゴの相づちに、エマは苦笑して続けた。
「とにかくお姉ちゃんの精神、つまり記憶と心は人工天国に拘束されています。そしてアレは……精神を持たない、空っぽのお姉ちゃんというデータなんです。それを、あのグラハムって人が好き勝手に動かしているんです! 以前の雨宮さんと、似たようなものですよ……!」
「言いなりにするために、ジェシカの中身を抜いて操り人形にしてるわけか? なるほど、たしかに前の雨宮みてえじゃねえか。あいつってたしか、ジェシカに執着していた、キモいストーカー気質の野郎だったよな」
エマは余裕のない表情で、トウゴとレオへ目配せをした。
そうして真剣な口調で、懇願する。
「私1人じゃ、あの3人をどうにかすることができなくて、困っていました。でも、皆さんがこの城へ入っていくのが見えたから、駆けつけたんです。トウゴさん、レオさん! どうか、私のお姉ちゃんを助けるのを手伝ってください! お姉ちゃんの魔術は、私が何とかしますから!」
「どのみち、アイツらを突破しなければ、カースグリフの槍のデータにはたどり着けない。ここは一戦、交えるしかないぞ、トウゴ」
「みたいだな。こっちは、あんまり時間をかけてられねえってのに。だいぶ面倒な状況にしてくれるぜ」
トウゴは苦し紛れの、強がった笑みを浮かべて言った。
「3対3だ。何とかなるだろ」