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異世界であり、ゲームであり、理不尽であり。  作者: 吉野紘貴
俺には能力がないそうで
3/10

こっちの俺


「着いたね、怜雄君!」


 めっちゃニコニコしているこいつが口調からして、アクリによって俺がここに来てしまったのは、ほぼ確実だろう。


「『着いたね、怜雄君! 』じゃねーからぁ! ここどこだよ……! そうだ、俺は屋上から落ちて───いや、落とされて……。死んだのか、俺!?」


「怜雄君、質問が多いよ。死んだか死んでないかに関しては、半分そうで、半分違うって感じかな」


 アクリは質問が多い俺に対して半分呆れてるのかもしれないが、こっちは屋上から突き落とされた挙句、よく分からないとこに連れてこられたのだから仕方ないとしか言いようがない。


 アクリは歩き始めたので、この世界に関して右も左も分からない俺はとりあえずついて行きながら、


「……半々ってどういうことだ?」


「あ、だいぶ落ち着いたね」


「そりゃ、落ち着かなきゃ何にも進まないからなぁ。こう見えて推薦で選ばれた学級委員だからな」


ちょっと嘘をついた。

 落ち着かなきゃ何も進まないのは分かっている。けど、落ち着いているかと言われれば、正直違う。


「そういえば、そうだったね。んで、半々って答えた理由? まず半分そうって言ったのは、君は『向こうの世界では死んでるから』。そして半分違うって言ったのは『こっちの世界では生きているから』、かな」


「向こうで死んでる!? っざけんなよ!! 俺の母さんや父さんは死んだ俺を今見てるってことか!? アクリッ、お前……!!」


 俺はアクリにつかみかかる勢いで怒鳴った。実際に胸ぐらをつかんでしまった。


 アクリは悲しそうな顔をしてうつむいた。


 あまり仲良くなかったとはいえ、母さんも、父さんも俺に優しくしてくれていた。そんな両親が死んだ俺を見て悲しんでいる。そう考えると胸が痛かった。


 今、現在俺は生きているから、死んだということに関しては、あまりよく分からなかった。けれど、俺が大切なものをいくつもいくつも失ったのは確かなんだ。


 さらに死んだということは、アイツともお別れになるが、アイツは俺を頼っていた。下手をしたらアイツは死んでしまうかもしれない。俺から大切なものだけではなく、関係のない命まで奪いやがって……!!


「そんな怒らないでくれよ。君が親と仲良くなかったのは知ってる。でも、それでも仲の良しあしで決められる問題じゃなかった。ごめんね」


「……もういいよ。確かに俺は母さんとも父さんとも仲良くなかった。家にいても顔を合わせるのは家から出入りする時くらいだった。」


 俺は呑み込むしかない現実を呑み込むのは得意だ。


 今回もそうだ。

 親が死んでる自分を見て嘆いている。付き合っていた人も失った。心の支えだったアイツも居なくなった。

 だが、それは今としてはもう変えがたい事実。仕方がない。呑み込むしかないのだ。どんなに喚いても、嘆いても、叫んでも、俺は救われない。……誰もいい思いはしない。


「よし、オールオッケ―だ。俺もついに異世界転生っていう感じか? こりゃお前みたいなやつじゃなくて、もっとかわいい感じの子に出会って、恋をして、無双して───っていうのが典型的なパターンかな」


「怜雄君って本当に切り替え速いよね。向こうでも、皆の前で話すときはしっかりしてるのに、友達の前ではおちゃらけて、場を沸かせる。君を連れてきて本当に良かったと思っているよ」


 アクリは道端に転がっている石ころを蹴飛ばしながら歩いている。


 俺は正直言って、この現状が怖かった。


 本当なら何か知らないこの世界で、どこか分からないところに向かって思いっきり走り出して、そのまま命を燃やし尽くしてしまいたいと思った。

 もう何もかもよくわからない。けれど、俺は自分を偽ってしまう。いつだか、先生に「君は自己犠牲が過ぎる」と言われたことを不意に思い出した。

 これも自己犠牲なのだろうか?


 そうしたら本当はこんなのすべてが夢で、本当は昏睡状態に陥っているだけだとオチにはならないだろうか。正直そんなオチのラノベだったら、作者に抗議のメールでも送ってやりたいくらいだが、実際自分が体験しているとなるとそうなるように願ってしまう。


 だが、クヨクヨしていても仕方ない。


 俺は自分で言うのもアレだが、頭はいい方であるし、回転も速い。

 だからこそ、事実を突きつけられるのは周りより早いが、呑み込むのも早い。


「仕方ない。別の策を考えよう」とすぐに考えなおせる。


 今だってそうだ。


 ただのカラ元気でしかない。でも今はそうするしかないんだ。


「んでさ、ここはどういうとこなんだい? ここって俺みたいな平凡、真面目、無垢、純粋な青年が無双できるような異世界なのかね?」


「その楽観的な性格どうにかならないもんかね。───ここは僕の知る限りでは君の世界でいうとこの『ゲーム』かな。それもRPGものの」


 別に楽観的な性格はしてないんだけどな。


 これでも、中学校の時はいろんなことか抱え込み過ぎて、一時期学校に通えなくっていた時期もあったくらいなんだから。


 今のだって正直言って、立ち直っている訳じゃない。状況を呑み込んだだけでなんだ。最善の選択しかできないんだ、俺は。


「いやいや。どちらかというとお前が楽観的なんだと思うんだけど。ってかゲーム!? やったね。あのさぁ、特に黒い剣士が活躍するVRMMOものとか大好きなんだよね」


 学校の図書委員をやった時にあまりにも沢山の人が借りるもんだから、気になって読んでみた結果、見事にドはまりしたのはいい思い出だ。最新刊まで四であったからこそ、最後まで読みたかった。──いや、最後なんてくるのかな? あの作品


「そりゃよかった。んじゃさ、早速なんだけど右手を左に払ってみてくれないかな? ステータスっていうだけでもいいよ」


「そいっ」


 言われたとおりに左手を右に払った。


 すると、青みがかった半透明の板が出てきた。ますます、それっぽくなってきたじゃないか。


「ちょっとみーして」


 アクリが横から覗いてくる。俺は歩くのを止めてアクリに見せる。


 俺はアクリが自分のステータスであろうものをまじまじと眺めている情景に、ステータスを見せるのはいい行為なのだろうかと頭を悩ませていると、


「うわぁぁ。なんだこのステータス。ひどいな。変わってるし……。とにかくほら、ちょっとここ見て」


 人のステータス見た、第一声が「うわぁぁ」って、ひどいじゃないか。

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