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息遣い『僕と彼女の四季巡り』  作者: 珀武真由
34/34

 エピローグ 四季逡巡─息吹

おはようございます。

 いままでお付き合いありがとうございました。

 この話はこれで完結です。

 ではでは、

今回もおつき合いの程よろしくお願いします。

 


 僕と彼女のあいだにある

 ──息吹(いき)


 今日も隣で安らかに寝つく彼女に、僕は安堵する。

 以前、不眠に悩まされていた僕は彼女のおかげでいつの間にか普通に眠れるようになった。

 それに今や、チビ達もいてくれる。


「ぅん!」

「!」


(息が漏れただけか……かわいいな)


 僕の眠りは相変わらず浅い。何かあると直ぐ起きる癖も治らない。良いのか悪いのか、でも眠剤に頼っていた頃に比べればマシだ。


「ん……」


(今日は息漏れが多いな─、それも笑み付き艶っぽい)


 僕の彼女は子どもを生んだにも拘わらず体型も顔の瑞々しさも、何一つ変わらない……、と思うのだが。

 本人は目皺が増えたとか、シミがどうとかぼやき、顔の手入れを欠かさずしている。


(女性って大変だな)


 横にある寝顔に安堵するも、僕の心臓は高鳴っている。


(……犯したいなぁ)


 「彼女」は「奥さん」になっても僕にとってはまだ「彼女」だ。

 以前、彼女がよくぼやいていた通り僕は、エロ魔人らしい。

 彼女にまだ触れ溺れたい。しかし、そうもいかない現実の歯痒さが身に染みる。


(致し方ないかぁ、チビは授かり物だからな)


 子ども達が寝入るのを見計らい睦事に入るが少し、物足りない。

 そりゃあ昔のように悦には、浸れないだろうよ。


(うんうん)

 と、納得している僕の横で、のそのそと動く心地よい感触がある。

 

「……あれ? 寝ないの」


 眠そうな彼女は瞼をこすり、僕に寄り添う。


「いや、寝るよ」


 僕がキスをすると返してくれる、そんな彼女が好きだ。


「明日は久々の、二人だね」

「うん、でも大丈夫?」

「大丈夫でしょう。四人の古参方が見に来てくれるから」

「ふふ、あの子達。リュックにおもちゃ詰め込んでたわよ」

「かわいいな」


 小さいながらも自分達のしたいことをきちんとする、あの子達が可愛いと思うのは親バカだからか?


「今、あの子達の事考えてる?」

「あれ、わかった?」

「うん、顔に出てるもの」


 目元を緩ます奥さんに僕は相槌をうつ。微笑する彼女に僕は、見惚れた。


「チビ達、起きてこないよね?」

「どうして」

「──我慢できないから」

「アッ!」


 この先も僕は彼女を貪るだろう、肉体の繋ぎも心の(つなぎ)も今までより深く……。


 その日の夜は久々に長い時間、まったり甘く過ごした。


(うぅう、体が重い……!)


 目を開けると息子のクリンクリンと澄んだ黒い瞳に僕は、嚇された。

 いつからいたんだろう。僕の胸上でおもちゃの剣を振り回し、頭を何回か小突いていたらしい。


「えいっ、えい」

「イタッ……、痛いよ、おはよう」


(柔らかいおもちゃで良かった)


 挨拶を交わすとチビ助の体がふわっと、浮いた。僕は「ん?」と考え、訊き慣れた笑い声を耳にし上半身を起こした。


「息子の……裸より、奥さんの裸が見たかったなぁ」

「あ”?」

「冗談だよ。今度いつ孫が出来るんだ。楽しみだな」

「まったく! いつだろね?」

「ほぉら、ちび。おまえのパパすっぽんぽんだぞ?」

「すっぽんぽ─ん!」


 父さんの口調をマネし、はしゃぐ息子がいる。僕はその無邪気な反応に頬を緩めた。


「何勝手に寝室に入ってるのさ」

「だってなぁ、騎士さまがパパ、パパ言うから」


 我が子を肩車する父は僕の知る父とは違い、鼻の下を伸ばしデレデレしている。孫には甘くなるとは訊くが本当にそうらしい。

 だって今の父は孫に骨を抜かれ、威厳もなにもない。


(丸いなぁ。僕の小さな時もあんな感じだったのかな? 何せよ喜んでるからいいか)


 僕は二人を直視し、額に手を当てフッと笑った。完全に布団から起き上がった僕に、父からとある衣装が渡された。


「ほら、寝坊助、着替え」

「ありがとう」


 父さんから、着替えを受け取った。その服は……。


「うむっ、まぁ、馬子にも衣装」

「馬子って─、云いいや。()()さん驚いてた?」

「おお! 煌びやかな目ん玉がいつも以上にクリクリだった」

「それは良かった。サプライズの甲斐があったよ」

「あれは泣くぞ?」

「どうかな? だと嬉しい」


 渡された服を着終えた僕に息子は「パパ、おうじ!」と首を傾げ、長い睫毛をパチパチ何回も瞬かせた。


「カッコイイ?」

「うん、でもヘンなの」

「変か、フフ。おまえも大きくなったら多分着るよ?」

「え~どろあそびができない」

「しなくていいよ」


 どうやら、おチビちゃんは余所行きの服を着せられた時に叱られる言葉が頭に、焼きついてるらしい。

 感心、感心─と、思っているともう一人おチビちゃんが現れた。

 小さいお姫様の登場に僕は綻んだ。

 双子は本当に似ているが、僕の所は性別が違うので助かっている。


「パパ~、おひめさまがいるよう」

「お姫様? キミではなく?」

「うん、キレイなの」

「それはそれは」


 僕は娘の言葉に喜んだ。だってお姫様の正体は……と、ニヤけていると僕を眺め、普段と違う装いに目を輝かす子がいた。


「あれ、パパ、おうじ?」

「そう、王子。似合う?」

「ヘンなの~」

「変?! ママはお姫様なのにパパは変なの?」

「う~んねぇ、しろいおうまは?」

「馬?!! ハハハ」


 わが家自慢のチビ助はおっとりとハツラツに分かれている。女の子と男の子だから、性格が余計別々に見えるのかな。


「キミもママとお揃い。お姫様だ、かわいい」

「へへへ」


 白いパーティードレスを着る娘のスカートレースがフワフワと、足を動かすたび小刻みに揺れる。

 ちょこちょこした動きがお人形みたいだ。


(かわいいな)


 この歳の子どもは着せ替えが楽しめて嬉しい。奥さんも喜びながら服を着せている。

 特に女の子は可愛い。大きくなったら奥さんに似て美人に育つのかな、なーんて父親の色眼鏡か。


「さて、お姫様(ママ)を待たしては怒られるな」


 僕はチビ達を両腕に抱え、着替えを済ませた彼女の元へ向かった。

 リビングで腰掛けるウエディング姿の彼女に僕は、心がときめいた。そんな年甲斐もなくと、思われるかもだが本当に目を奪われた。

 頬の色は化粧(チーク)で判らなかったけど、照れていることがすぐ僕に伝わった。


「二人で……出掛けるんじゃなかったの?」


 僕を見るや奥さん(彼女)は立ち上がり、裾を踏んだ。


「危ない!」


 僕は子を腕から降ろし、急いで彼女の身体を庇った。

 僕は彼女に心酔している。受け止めた瞬間理性(タガ)外れた(とんだ)


「ヤバッ」

「なにが?」

「僕が」


 眼前にいる花嫁に僕は周りを気にすることなく、自然に口づけを交わした。


体外(たいぎゃい)にしやぁ~せ」


 僕は母に思いっきり、後頭部を殴られた。


「!!」

「!」


 僕と彼女は赤面し、母はツノを出し、父は呆れていた。彼女の親御さんもこちらを見て、溜息混じりの笑顔を向けられた。


「もう! バカ」

「だって、我慢が」

「もう! そんなことするからほらっあそこ!!」


 彼女の指差す方を向くと、僕たちの双子が愛らしいキスを交わしていた。


「かわいいじゃないか」

「あんっ可愛いけど! あれ、外でしたらどうするのよ」

「あぁ~!」


 綺麗なお嫁さんに叱られる小さな吾子二人は無邪気に笑い、互いが見つめ合うと「チュッ」としていた。

 奥さんは怒るも周りは「可愛い」と言い、和んでいた。


「これは暫く続くぞ?」

「うん、可愛いから僕は許すけどね」


 綻ぶ父の横で、僕も白い歯を見せた。すると「コホ、ン、ン」と僕に言いたげに小さく咳き込む奥さんが視界に、入り込んだ。


「あなたは本当にもうっ」

「まぁまぁ、可愛いからいいじゃない。それより写真撮ろうよ、公園で」

「もう! あなたは……」


 笑う僕らはさておき、少々ご立腹な奥さんは両親に促されていた。


(父さん、泣くどころか叱られたよ)


 外は春、桜が満開の季節。


 薄ピンクの花がひしめき広がる情景ある。彼女と出会い何回も行き来した公園。

 行き交う人や、雑談、遊びで賑わう人達は僕らを注視するや、祝福の賛美を手向けてくれた。若い子達には写真を仕切りに強請られ撮られと、忙しくも気持ちは弾んだ。

 新しい門出とは大袈裟だが、僕たち家族の新しい記念日となった。


「桜、綺麗だけど。もうそろそろ、見納め」

「うん、その前に来られて良かった」


 花散る最中、ウエディングベールを揺らせ顔を上げる美人な奥さんがいる。僕は心情を搦め捕られ、いても立っていられない。


「……」

「……もぅ……そういうことを」


 照れる奥さんの頬はほんのり桜色に染まり、僕たちを彩る景色と同じだった。


「綺麗だ、このまま時間が止まれば良いのに」

「ダメよ。時は動いているから綺麗なんでしょ?」


 彼女にイッポン──、取られた。


 僕と彼女のあいだにある色々な思い、想い出。

 これからも色々な季節を、数々の景色を捉えていくのだろう。


「今日で節目の十年目」

「あらっ、覚えてたの」

「うん、僕が告白した日だもの」

「……もしかして衣装(コレ)はそういう?」

「うん、式挙げてないし、僕なりのなんだけど」

「呆れた」


 惚け顔の奥さんからキスされた。いつもなら「恥ずかしい」とか「外でするモノじゃない」とか、散々怒る奥さんが。


「(──!)心臓が止まった」

「フフ、たまには?」


 一瞬だけど僕の時間が、止まった。


「さて、おチビちゃんは預けたから二人の時間はまだあるわね?」

「そうだね。どこに行く?」


(この先はハッピーでもなくバッドでもなく……)


 どんな終わりがあるかなんてそんなものは分かりゃしない。ただこの先、なにがあっても彼女と共に僕は歩むだろう。


 僕と彼女のあいだにある折々の四季の中を──

 ……巡りたい。


 

 お疲れ様です。今までご拝読ありがとうございます。カクヨムで修正版を公開しております。よろしければぜひ。

 もしかしたら番外編を書くかもしれませんがその時はまたお付き合いの程をお願いします。

最後に。

 ほんとうにありがとうございました。勉強させられました。恋愛小説でここまで続いたのは初めてです。他の作品もまだ上げております。よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] お疲れさまでした!完結おめでとうございます! 季節が巡り、その中で互いの想いを確認しながら結ばれて良かったです。 互いに想い合い、イチャイチャしたり時には文句も言ったりしながらこの二人の時…
2022/12/26 13:00 退会済み
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