リリス&リオ編 2
「ねぇねぇリオ君! 次、あれ食べようよ!」
「いいね! 美味しそう!」
零が病室で連れ去られた時、ちょうどリオとリリスは(クレア)の隣の街、(ガルステタ)に来ていた。そこは貿易で栄えた街で、高級ブランド品が並ぶ一角もあれば、外国料理専門店が立ち並ぶ一角もある。二人は、外国料理専門店の街道を歩きながら、至る所から香ってくるいい匂いに心を弾ませていた。
「コレください!」
「アイヨー。毎度アリー」
台湾料理の店で、小籠包を購入した後、広場のベンチに腰を下ろし、できたてアツアツの小籠包を口に入れる。
「ハフ、ハフ……んまぁ~」
「美味し~ねぇ~」
一度モチモチの皮を噛み切れば、中からアツアツの肉汁が溢れ出し、言い表せぬ程の美味しさと幸せが心を満たす。
「あ、リオ君。提案があるんだけど、いい?」
「はひぃ? (何?)ひひはん(リリさん)」
口の中で小籠包をモグモグさせているリオに、フフッと顔を緩ませながら、とりあえず小籠包を飲み込んでもらうまで待つ。
「ぷぁ……ゴメンね。何? 提案って」
「あのさ、リオ君って、ずっと初期装備のままじゃん?」
「あ、確かに」
リオは、少し大きめの初期装備の袖を指先でヒラヒラさせる。黒と茶色をメイン色とし、膝や肘の部分にサポーターのような金具が着いている。
それを見て、リリスが一言。
「だからね? 今から、リオ君の新しい装備……というか、服、買おうかなぁーって、思ったんだけど…………どうかな?」
驚きで眼をパチクリさせるリオに、頬を赤らめて顔を背けるリリス。周りからの雑音が入ってくる少しの沈黙。
「リリさん……」
リオの声に、顔を上げたリリスの頬に、リオの指がプニ。と触れる。
「ありがと! ほんッッとうにありがとう! !」
「い、いや! ?そ、そこまでとは思わなかったよぉ!じゃあ、さっそく買いに行こ!」
「うん!」
小籠包の容器を店に返し、二人は駆け足で洋服屋へと駆けていった。
「ねぇねぇ、コレはどう?」
そう言って、リリスが差し出してきたのは、水色のワイドパンツ。リオは、少し考えた後、申し訳なさそうに首を横に振る。
「ありがとう、でも、それじゃないなぁ……」
「ううん。こっちこそゴメンね」
とりあえず適当に選んだ店に入ったものの、そこが結構大きい店で、なかなか決まらない。
「うーんんんん…………ん? あっ……コレいい……リリさーん」
あまり大きな声を出さずに、少し離れたところで難しい顔をしているリリスに声をかける。リリスは、コク。と頷いて、スタスタと急いで駆け寄ってくる。
「何? なんかいい服見つかった?」
「うん、コレがいい! 動きやすそうだし」
そう言ってリオが見せたのは、黒の長袖、同じ色のタイツとハーフパンツ。綺麗に折り畳まれたそれを、リオは嬉しそうに撫でる。
「確かに、リオ君似合いそう。フフッ……なんか、零とそっくりだなぁ」
「なんで?」
首を傾げるリオに、リリスは続ける。
「だってね、零、動きやすいって理由だけで、毎日ジャージなんだよ! ?」
「そうだったんだ! ?僕と姉ちゃんはあまりジャージ着なかったなぁ」
「そうだよねぇ、毎日なんて着ないよねぇジャージなんて。じゃあ、試着して、買っちゃおうか」
うん。と答えたリオが試着室のカーテンを閉めた後、リリスは周りの棚に入った服を見上げて、ほぇー。と小さく感嘆の声を上げた。
「リリさ~ん、どうかなぁ」
そこには、黒一色の装備を纏ったリオの姿があった。そして、黒の長袖が何気に肌にピッタリとフイットする仕様で、リオがクルっとまわると、背中とお腹が露出する仕様になっているようで、慌てたリリスは試着室に入ってきてしまう。
「えっ! ?ちょ、リリさん! ?」
「リオ君、上になにか着るものがないとダメだよ! こんなピッタリしてるもん!」
「わ、分かったから、とりあえず落ち着いて試着室から出て!」
「あっ…………ゴメンねぇぇ! !」
顔から火が出る勢いで、リリスは試着室を飛び出す。
結果、裾がヒラヒラするように作られた長袖を上に着る用として購入し、二人は周りの目を気にしながら店を後にした。
「ゴメンんんんー」
「ううん、大丈夫だよ、リリさん。あと、本当にありがとう。服のお金、リリさんに出してもらっちゃって……」
日が落ちて、辺りに街頭やら提灯やらの灯りが燈る頃、あらかじめ予約しておいた宿への道を歩いていた。
申し訳なさそうにシュンとするリオに、リリスはワタワタと弁解する。
「い、いやほら、リオ君まだ十分にお金持ってないし、小籠包のお金は出してもらったし! 気にしなくてもいいよ!」
「…………リリさん、ありがとね」
「う、うん!」
(ちきしょーリオ君可愛すぎかよォォ)
内心リオの可愛さに嫉妬したリリスだが、可愛いから、リオ君なんだな。と改めて考え直し、宿へと入った。
「右から三体。あ、追加で二体! 気をつけて!」
「了解、このまま仕留めちゃうね」
リオが新装備を購入してから数日後、とある民からのクエストに、二人は来ていた。
リオの能力、‘悪魔の血’によって形成された片手槍を構え直し、新しい装備になったリオは走り出す。
「Guaaaaaaaoooッッ! ! ! !」
前方から、サンドリザード特有の攻撃の黒と赤のブレスが向かってくる。それを確認した直後、片手槍の先端を射出し、岩壁に突き刺してかわす。その後、また射出して地面に着地。完全に後ろをとった。
「喰らえっ…………」
Lv2貫通弾をホルダーから取り出し、片手槍をレールガンへと変形させる。弾を5発、形成した入口に滑り込ませると、頭に向かって発射する。発射された弾は、空気を裂いて飛んでいき、サンドリザードの頭を撃ち抜き、吹き飛ばす。
「良し! OKだよ、リオ君!周りに敵影なし!」
「了解! 一気に畳み込んじゃおう! あとは任せるよ!」
リリスは、力強く頷いて、詠唱を開始する。
「空前の奇跡を、ここに……汝らは、未来を背負いし、英霊なり!奇跡を見せよ、〔レーヴァ・ディヴァインメント〕! !」
リリスの周りに光の円が現れ、それは極太の光の柱を出現させると、サンドリザードの群れを包み込み、塵一つ残さず蒸発させる。
『Quest Clear! Congratulation! !』
クエストクリアを示すブザーが鳴り響き、宝箱がドンと落ちてくる。
「やったね。さっさと詰めて帰ろう」
「そうだね。今日はどこかで夕飯食べようよ」
報酬のコインはリオに多く入るようにし、自分はドロップアイテムを重視してもらうようにしてある。
貯まっていくコインを見て、リオは提案した。これくらいあるなら、大丈夫だろう。
「リリさん、今日は僕が夕食のお金を出すよ。結構お金貯まってきたし、服にお金出してもらった恩があるし。イヤ……かな……?」
「ううん! じゃあ、ごちそうになろうかな!」
リリスの笑顔に、リオは大きく頷いてリリスの手を引いてステージからクエスト受注所に戻り、夜の街へと繰り出していった。




