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零&ユラ編

どうも、おはこんばんにちわ。栗餡でしっ。

今回から、新章『修行の旅編』に入ります!

メインは、零&ユラですが、ちょくちょく番外編的なノリでリオとリリス、セレーネ、カムル、ケイマのチームも載せていきます。

それでは、最後までお付き合いくださいませ。

鳥のさえずりがこだまする森の中の一本道を、二人は黙って歩いた。特に話すこともなし、話す話題もなし。

(お腹すいたな…………)

(何か食べたい…………)

「「何か食べよう」」「か。」「ではないか。」

揃った。二人は顔を逸らし、また黙って歩く。

「……………………」

「……………………」

無言の時間。さっきまで聞こえていた鳥のさえずりも、もう聞こえなくなってしまった。目の前には、寒い空気の中で輝く針葉樹の葉に乗っている雫。

「…………何か食べよっか。」

「……………………あぁ。」

道から外れ、ちょうど良い高さの岩の上に座る。空気の冷たさを物語るように、岩も氷のように冷たい。ユラがそれを感じた時、零が投影魔術でレジャーシートを投影する。

「ほい。ちょっとゴメン、降りててくんない ?」

「分かった。」

ストンと衝撃を和らげながら着地する。零は、岩の上にちょうど被さる大きさのレジャーシートを投影するように調節しているようで、難しい顔をして唸っている。その様子を見て、ユラは少し笑えてきた。

「フフ…………」

「ん ?ユラ、笑った ?」

「スマン、お前の顔を見ていると、可笑しくてな。難しい顔をしているものだから。」

「むぅ。これ…………くらいかな。OK。いいよー。」

岩の上に上がると、そこには白をベースに紫の線が走ったレジャーシートが敷かれていた。

「コレ、まさか私の服をイメージして作ったのか ?」

「ん ?違うよ ?たまたま。投影魔術は、形は再現できるけど、色までは再現できなかった気がする。」

「そうか。すまなかった。」

「何 ?ユラ、期待しちゃった ?」

ニヤニヤとする零に、ニコリと笑い、無言で卍固めを決める。

「ゴメンゴメンゴメンゴメンゴメン !!痛い痛い痛い !ギブ !ギブ !」

卍固めを解くと、零はフラフラになりながら周りの茂みを見て回る。そして、茂みの中に手を突っ込むと、茶色のビー玉くらいの大きさの実を六つ持って戻ってくる。

「なんだ、それは。」

「“卵種エッグシード”。“らんしゅ”って呼ぶ人もいるけど、エッグシードが正しい。これね、茶色の皮取って食べると、ゆで卵の味がするの。こういうサバイバルとかに、結構ありがたいんだ~。もちろん、回復アイテムとしても使えるよ。回復力は、一個で大体800くらいかな。」

「ほう、そこらの木の実よりかは回復力は上か。」

「そういうこと。さて、食べよっか。」

アイテム欄から、サバイバル用のナイフを取り出し、卵種の皮を剥ぐ。ヘタの部分からナイフを少し入れて、あとはヘタを引っ張れば自然と皮は取れる。皮を取ると、よく見るゆで卵のようなツルンとした白い実があらわになる。

「ほい、いっちょあがり。」

「なるほど…………私もできた。こんな感じか ?」

「そ。見ただけでよくコレできたね。」

「そうか ?」

一通り皮を取り終えたら、好みに塩を振ったり、“マーフ”という、現実リアルで言うマヨネーズのような調味料を少しつけても美味しい。と零は言う。

「いただきまーす…………美味しー !久しぶりに食べたけど、やっぱりこれ美味しいな。ほら、ユラも食べて。」

「う、うむ…………いただこう…………」

ユラは、恐る恐る白い実を手に取り、塩を少しつけ、口に入れる。《アルカディア》時代、こんな物を食べたことがなかったので、抵抗感があったのは事実。

しかし、口に入れ、1口噛んだだけで、塩をかけたゆで卵の味がした。一口サイズで、この味は結構嬉しい。

「…………うむ、うまい。」

「でしょ ?ほら、もう一個。」

今度は、マーフをつけて一口。そうすると、マヨネーズのような、酸っぱい匂いが口に広がり、塩とは違った味が楽しめた。

「うまい…………あれ、もうないのか ?」

「ゴメン、さっきので最後なんだ。また探してくるよ。けど、お腹いっぱいでしょ ?」

正直、もっと食べたい。けれど、薄く笑う零の顔を見ていると、なぜかお腹が満たされる感じがした。

それと同時に、その笑顔の裏に隠された、血にまみれた、暗い過去が垣間見えたように思えた。

「…………あぁ、腹は満たされた。行くか。暗くなる前に森を抜け、宿を見つけなければならない。零、ここから一番近い街はどこだ?」

メニューに表示されている地図を見て、一言。

「ここからだと…………鋼鉄とカラクリの街、(ウナム)だね。直線距離でおよそ2キロ。」

「2キロか…………私達の足ならば、20分で着くな。よし、行くぞ。」

岩からヒョイと降り、一本道を駆けていく。零も、その後を黙って追いかけた。


鉄鋼資源が豊富で、それによる技術の発達により、完成度の高いカラクリ仕掛けで有名な街、(ウナム)。

そこの街で特に有名なのが、“スティンガー・ウナム”というスナイパーライフル。ほかの街より値段が安いわりには一発一発の威力が高く、使用する弾にもよるが、最高威力は180。[へーエルピス]では、狙撃の際、ヘッドショット及び弱点に決めるとダメージ300倍になる。というシステムがあるが、それを2発決めるだけで相手やボスモンスターを倒すまではいかなくても、瀕死に追い込むことが出来るのである。

「いらっしゃーい !!」「いらっしゃいませー。」

「賑やかな街だな。」

「だね。一種の都会みたいな感じ。じゃあ、適当に宿探してくるから、ちょっと待ってて。」

一人、噴水の前に取り残されたユラは、噴水の淵に座ると、端末を取り出して読みかけの小説を読み始める。

「あのー、そこのお姉さん、ちょっとイイかな ?」

自分を呼ぶ声に顔をあげれば、チャラチャラした飾りを沢山つけた少年たちが5人、ユラを取り囲んでいた。

「お姉さん、一人 ?」

「一人なら俺らと遊ばね ?」

「断る。連れがいるからな。」

そう言って、少年の一人の肩をどけて、先に進もうとする。

しかし、少年たちはまたもや立ち塞がる。少しイラついてきたようで、ユラの視線が一気に鋭くなる。

「何だ、お前たちは加減というものを知らんのか。まったく、お前達を育てた親の顔が見たいものだな。お前たちみたいな、猿を育てた親のマヌケ顔がな。」

「なんだと…………」

「おーい、ユラ~。」

少年たちが怒りの表情を見せたところに、ちょうど零が手をヒラヒラさせながら歩いてくる。そして、ユラの周りの少年たちを見て、一言。

「何 ?ユラ、この人達に告白でもされたの ?5人からとかすぶぇ !!!!!!!」

「…………………………バカ者 !」

バシン !

平手打ちのいい音が広場に響く。零は、二、三度地面を転がった後、衝撃を利用して立ち上がる。

「痛いなぁ……………そこまでやらなくてもよかったのに…………。あ、宿見つけたから、行こ。」

マイペースにことを進める零に、少年たちは嫌な目をしながら立ち去って行った。

「…………危なかったねぇ。」

「スマン、助かった。」

宿の前に着いた時、小声で話しながら、チェックインを済ませ、指定された部屋に向かう。

「わぁおー。質素ー。」

「一言目がそれか。もう少し言葉を選べ。」

木製のドアを開けると、そこにはレトロな家具が揃えられており、二つ並んだベッドも、豪華ではないが、良い物が使われていると、見た目で判断できた。

「夕飯は19時30分からだそうだ。今は17時21分………………もう少しブラブラしても良かったな。」

「えー、もぅ疲れたよぉぉ…………僕寝るね………………おやすみぃぃ………………」

フニャフニャになりながらベッドに倒れ込む零を見て、ユラも外へと出る気が失せてしまった。

(私も少し、寝るとするか…………)

ベッドに倒れ込み、体全体を沈みこませる。そうすると、疲れがすぐに意識を引き込み始め、ベッドのフカフカの感覚がそれを手助けする。

「ん………………スー………………スー…………………」

すぐに、心地よい暗闇にユラはいざなわれていく。


「…………………………い………………ーい………………おーい………………ユラ…………おーい…………」

(なんだ…………人が気持ちよく寝てるのに………………)

「ん~~…………んぅぅ………………。」

肩を揺すられ、寝返りを打つ。次の瞬間、毛布を剥がされ、空気の冷たさにユラの意識は覚醒せざるをえなかった。

「んぁ…………零………………」

「おはよ。今19時25分ね。」

「19時25分 ?なら夕食まで5分しかないではないか !なぜもっと早く起こさない !」

ベッドから飛び起き、急いで髪を束ねる。零は紺のジャージに着替えており、いつでも出れるという風に鍵をヒラヒラさせる。

「だって、起こしても起きないんだもん。19時から起こしてたのに、全然起きないし。」

「……………………スマン。私もお前と同じく、疲れていたようだ。」

「いいんだけどさ。えっとー、あ、ココ。」

零とユラの目の前には、“食事処 マンプク”と書かれた札がかけられていて、中からは夕食の香ばしい香りが鼻をくすぐった。

「今日はカレーだね。しかも、“ゴーフ”のお肉使ってる。」

“ゴーフ”とは、[へーエルピス]において重要なタンパク源の家畜モンスターである。牛より少し小さいくらいの大きさだが、骨は出汁に、皮は装備や衣服に、肉と乳は料理に。と捨てるところがなく、それゆえに品種改良が繰り返され、今では[へーエルピス]の世界中で見ることが出来る。

「いただきまーす。」

「いただこう。」

一口食べただけで、有無を言わさぬ美味しさが口の中いっぱいに広がり、食べ終わった二人は満足しながら部屋に戻っていった。

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