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ローズフォース  作者: DA☆
Procedure 5 ブレイズ
81/140

5-03

 ───突然、スクリーンが点灯した。沈黙をかきわけて現れたのは、サンフラワーのヒマワリ顔であり、響き渡ったのはヒマワリ声だった。「こんばんはー!」


 「だからてめーは登場が唐突だってなんべん言ったらわかんだ!」思いっきり怒鳴りつけてやったのは、とにかく話題をそらしたかった一心もあったと思う。助かった、と感じていた。


 「おやおや、ごきげんななめですね」サンフラワーが言った。「楽しい話をしたいんですけど、まず電報でも送ってアポを取らなきゃいけませんか」


 「るせぇ、話ってなんだよ」


 「携帯電話の準備できましたよ。あと、ヴァインの話もしたいんで。今からそっちに行きますね」


 「……ばいんってナニ」さおりが言った。


 「ヴァイン……VINE? (つる)?」めぐみが言った。


 「あ」ゆきのがすぐに思い出した。「もしかして、昼間見たバイクのことですか?」




 夕食の片づけが済んだ後のちゃぶ台に、四つの携帯が並べられた。やたら薄ぺらくて液晶画面が広い最新のヤツで、色で誰のものかがわかる。とはいえ、ジュエルホワイトだったりイエローゴールドだったりフローズンピンクだったり、あたしのこのスパークレッドってのは何なんだ? こっぱずかしい。


 あたしとさおりとめぐみはひとつずつ首をひねった。怪しいカラーリングは携帯電話に限った話じゃないが、やはりそれぞれに色が気に入らないらしく、いちばんスタンダードな白を手にしたゆきのを見つめる。ゆきのは例によってこの文明の利器を扱うのが初めてで、早速どきどきわくわくしながら取扱説明書と首っ引きになっていた。


 「現代人の必需品でしょうし、連絡がつかないと僕も困るんで、これは標準装備ってことにしておきます。自由に使っていただいてかまいませんよ。無料通話三時間つきの基本料金は毎月のお手当に上乗せして僕が持ちますから、それ以上の通話料はやりくりしてください。


 機能は今のところ通常の携帯電話と同じです。ローズフォース独自機能用の改造モジュールは組み込んでありますんで、使えるようになったらお知らせしますね」


 説明口調のサンフラワーには取りつく島もなさそうだった。まぁ、あたしらが反論できる立場だったとしても、支給の備品に対して色の不満をあげつらうのは身勝手な部類に入るだろう。


 赤いケータイを手に取って、かちかちとキーを押してみる。他の三人の番号は既にメモリーに収まっていた。


 クリスタルの名刺にあった電話番号。これでいつでも彼に連絡を取れるようになったわけだが……もしそうしたら、やっぱサンフラワーにバレるのかな。あたしは上目遣いにサンフラワーを見た。


 と、サンフラワーは唐突にあたしに向き直った。心の奥底を見透かされた気がして、あたしは背筋をしゃっちょこばらせた。「何を驚いてるんです?」「いや……なんでもない」


 気づいたか気づいてないのか、サンフラワーの表情はやはり読めない。彼は続けてにこやかに言った。「じゃ、次にヴァインの説明会をします───みずきさん、手伝ってくださいね」


 あたしたちはバルコニーへ出るように促され、そこで簡単なレクチャーが始まった。


 あたしの立場は「教材」になった。ヴァインを扱えるのは自分だけなのだからしかたない。サンフラワーに言われるまま、あるいは三人のリクエストに答えて、あたしは変身し、クライミングし、いかに反応速度が上がったかを示すために演舞っぽいことだの反復横跳びだのをしてみせた。


 あたしは淡々とその作業をこなした。ていうか、クライミングするのは今日これで三回目だ。このレクチャーでいちばん伝わったことは、「クライミングは疲れる」だったに違いない。


 三人は、拍手さえしながらレクチャーを受け、あたしの抱える動揺や後ろめたさには気づかないままのようだった。疲労と不機嫌が混ざったあたしの面構えと、いつもどおり事務的なサンフラワーの口調が、それを覆い隠していた。隠れたままでいてほしいと思い、気づいてほしいと願ってもいた。


 「……そういうわけですから、みなさんも何か希望の装備があったら、こっちで検討しますので言ってください。以上、ヴァインのレクチャーでしたぁ」そうしてレクチャーは終わった。


 ……が、やっと終わったとて変身を解こうとしたあたしを、サンフラワーが呼び止めた。「それじゃみずきさん、フライングローズまで来ていただけます?」


 「え、何で」


 「何でとはまたご挨拶だなぁ」サンフラワーの視線がやけに厳しい。「メンテナンスですよ」


 「メンテナンスたって、今は別に戦ったわけじゃなし───」言いかけて、あたしは口をつぐんだ。サンフラワーの真意が読めたのだ。ヴァインのレクチャーなんていつやってもいい話なのに、今日この時間に始めた理由は、つまり彼には、あたしがどこかで戦闘してきたのがわかっているってことだった。


 あたしは黙ってメンテナンスに応じた。幸いサンフラワーは、彼にしかわからないどこかに戦闘の痕跡を見つけただけで、クリスタルと話をしたところまでは気づいていないようだった。あたしは結局、シトリンと戦ったことも含めて、サンフラワーに何も言わなかった。クリスタルの言いつけを守ったわけだ。


 メンテナンス中のサンフラワーは、レクチャー前後のヒマワリ顔はどこへやら、とても不機嫌だった。メンテナンスを終えた後、保健室で彼はこう言った。


 「まぁいいでしょう。何をしてきたかは知りませんが、言い訳も説明も不要です。僕の都合や責任問題はいくつかあるんですが、あなたが気にすることはありません。


 でも、はっきり言っときますけどね、僕やブルーローズ様に隠しごとをすると、いずれ自分の首を絞めますよ。まぁせいぜい、辛い思いをしてください。それから泣きついてくるのを待ってますから」サンフラワーは立ち上がると、あたしを送り出した。「はい、メンテナンス終わり」


 部屋の出口で肩を並べた。座って話すことが多かったからあまり意識していなかったけど、サンフラワーは思ったより背が高く、あたしは思ったより背が低かった。彼の背丈をふっと見上げただけで、何か覆い被さってくるような強いプレッシャーを感じた。


 ……悪いことをしているはずはないのに、罪悪感と孤立感が募るのを、止められない。


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