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ローズフォース  作者: DA☆
Procedure 2 ジプシー ガール
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2-21

 あたしもどうにか立ち上がって、変わらずゆっくりと進んでいく棺を追い越してホールの玄関へと移動した。めぐみは霊柩車の扉の前で強く唇を噛み、うつむいていた。あたしは何も言えず、ただ彼女の肩に手を置いた。


 頭を何度か振りながら、モーリオンが観音扉から顔を見せた。大ダメージを受けたのは確かなようで、まともに立っていられず、這って、這って、激しい金属音とともに霊柩車から地面に転げ落ちた。


 ……その姿からは、さっきまでのスカート状のオプションが消えてなくなっていた。つまりヤツは、自分の乗ってきた黒塗りの車を失ったということだ。


 そして、オプションが剥ぎ取られた彼の下半身には、人間の足を模したものではない、細い穴空き鋼板をつなぎ合わせただけのロボットのような脚がついていた。そのおまけみたいな脚で、ぎっしょんぎっしょんきしむ音を立てて、どうにか立ち上がった。


 まだ何かしたいのか、女に負けたのがよほど悔しかったのか、モーリオンは肩を震わせているめぐみをしばらく睨みつけていたが、玄関から棺と参列者がどっと出てゆくと、それに追い立てられるようにして、ぎっしょんぎっしょん走って逃げていった。……追いかける気にもなれなかった。


 その代わりに、霊柩車にはめぐみの棺が収まった。参列者たちがそれぞれに手を合わせ、棺の出立を見送った。行き先は、火葬場だ。


 「あんた、だいじょぶ?!」


 さおりとゆきのが空から降りてきた。さおりが残らずアメジストのコピーを片づけ、ふたりの戦闘も終わったのだ。


 さおりは、めぐみの前に降り立つと抱きしめて頭をなでた。


 「だいじょうぶだからね、もうだいじょうぶ」何が大丈夫なのか解らなかったけれど、その場には、その言葉がとてもよく似合った。


 「うん、……だいじょうぶ、……です」めぐみも、小さくうなずいた。「ありがとう、いろいろ迷惑かけて、ゴメンナサイ。えっと、……えっと」名前を呼ぼうとしたようだが、彼女はあたしたちの名前をまだ覚えていないらしく、少し恥ずかしそうにした。


 そんなことは、さおりには気にもならないことだった。「よかったァ、やっと話、してくれた───おしゃべりできれば、もう大丈夫だよねッ」


 「ありがとう、それであの、その」めぐみは少し顔を上げて、敷地から出て行く霊柩車を見た。「追っかけて、いいですか」


 参列者たちも三々五々散って、幾台かの車やマイクロバスに分乗して、火葬場へと向かうようだ。


 「あのマンションまで、ひとりで行けます、だから、もう少しだけ」


 あたしたちは顔を見合わせた。


 めぐみはひとつ間違えている。あたしたちはあのマンションへ『行く』んじゃなくて、『帰る』んだということ。でも、それはもう、些末なことだろう。彼女は、自分の居場所がもう、表札に自分の名がローマ字で書かれたあの家ではない、と認めたのだ。


 あたしはその説明はしなかった。「ゆっくりしていきなよ。今日で会うのは最後なんだ───そうしてきちんと、この世とあの世に分かれておいで」そう言って軽く彼女の肩を叩いた。めぐみはひとつ頷いて、空へ飛び立ち、霊柩車を追った。


 「あたしついてく、だから、だいじょーぶ」さおりがめぐみを追って飛び立った。こう言い残して。「あんたら、自分の葬式は?」


 ……そうだ。忘れていた。


 「邪魔が入りましたけど、お言葉に甘えて、私たちは自分のお葬式に行くことにしませんか」ゆきのが言った。「そう、せめてお骨になってしまう前に」


 あたしはうなずいた。


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