第30話(最終話)エピローグ
――『雪の村』。
「母さん! 母さん!!」
カッツが声を張り上げた。
「あら、カッツ? 帰省にはまだ早いんじゃない?」
カッツの母が、皿洗いの手を拭きながら、台所から顔を出す。
その目が、大きく見開かれた。
「――ただいま」
困ったような笑顔で、オリバー・ジャバウォックは妻に笑いかける。
カッツの母は、一目散にオリバーに駆け寄って、抱きついた。
ぐすっ、と鼻をすする音が聞こえて、カッツは隣に立つレヴィと顔を見合わせて微笑む。
あのあと、『竜の国』は大騒動になったらしい。
竜王が人間を愛人として監禁したスキャンダル。
竜王は怒り狂った竜王妃に手酷く『お仕置き』され、以来、鬼嫁に怯えているとか。
世継ぎになるはずだったレヴィは竜王の座を蹴飛ばして『竜の国』から逃げ出した。
竜王はしばらく、竜王妃に睨まれながら治世を続けることになりそうだ。
もちろん、『桜の国』と『竜の国』の外交問題にもなるだろう。
でも、竜王の処断は大人が考えること。
カッツとレヴィはいつもと変わらない。
「父さんの問題はこれで解決だね」
「ああ。ついでに俺の父との因縁も終わった」
「あと、残る問題は――」
「……休学した分、学校の授業に追いつくことだな」
復学したカッツとレヴィは、学友のトールとニーズと、再会を喜び合う。
「おふたりが戻ってこれて、本当によかったですよ」
「……ガム、食べる?」
「ニーズ、ガムはちゃんと吐き出すんだぞ」
トールとニーズの相変わらずの会話に、カッツは声を出して笑った。
そんなカッツを、レヴィは愛情のこもった目で見つめる。
カッツとレヴィの学校生活はまだ2年目。
これからも、学ぶべきことは多い。
――やがて、彼らの寮の部屋に、ドラゴンレースのトロフィーと2人の記念写真が並ぶ日も、そう遠くはないだろう。




