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高所恐怖症のドラゴンライダー、竜王の息子のつがいになりました  作者: 永久保セツナ


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第19話 『雪の村』ドラゴン事件・解決編

「この『雪の村』ドラゴン事件の犯人は、あなただ」


 カッツが指差した方向を、レヴィも村人たちも一斉に振り返る。

 そこに立っていたのは、レヴィの知らない男だった。


「誰だ、お前は」


「村長の息子さんだよ。その人は、かつてドラゴンライダーを目指して村を出たことがあるんだ」


 彼もまた、カッツのようにセント・マタルの門を叩いた学生であった。

 しかし、彼には残酷な現実が待っていたのだ。


「あなたは、ドラゴンライダーの資格がないとして、セント・マタルを退学になった。その後は、ずっと村長さんの家に引きこもっていると聞きました。それが、なぜここにいるのか、理由を聞かせていただいても?」


「……なんだよ。引きこもりは一生家から出てくるなって言いたいのか?」


 村長の息子は陰気な顔でカッツを睨む。


「気まぐれに外を散歩してみりゃ、こんなガキの放火事件の犯人扱いとはな。で? 証拠でもあるわけ?」


「僕は殴られた時、あなたの顔を見ました」


「記憶違いじゃないの。俺は知らないね。もっと具体的な証拠あげてみ? ないだろ?」


 村長の息子は勝ち誇ったように、カッツを嘲笑っていた。

 レヴィは、怒鳴るでもなく目を細めてじっと見つめているだけだ。

 村人たちはなんとも言えない顔をしている。村長の息子という手前、邪険には扱わないが、彼の評判は村ではあまり良くない。


「放火された現場には灯油がまかれている痕跡がありました。でも、それを警察や消防が見逃すはずがない」


「で、村長の息子である俺ならその公僕どもが言うこと聞くと思ってるわけだ」


 実際に警察や消防が証言すれば、そのあたりは証明できるだろう。


「でも、油がまかれたのを隠したくらいじゃ決定的な証拠とは言えないねえ、ぼくちゃん。他には? 俺がこんなことする動機に心当たりでもあんの?」


「それは……」


「はい論破。っていうか、犯人はドラゴンって話じゃねえの? だったら、そこの人間に化けてるやつをしょっぴけば解決だろ。村の奴らは何やってんの? 無能か?」


 村人は何も言わない。ただ、能面のような顔で村長の息子を見つめている。

 彼は、その視線にたじろいだ。


「な、なんだよ、どいつもこいつも俺を疑ってんの?」


「なぜ、貴様は俺をドラゴンだと知っているのだ?」


 レヴィが口を開くと、村長の息子は「はぁ……?」と陰気な目つきをする。


「知ってて当然でしょ。こんな辺鄙な村に外からドラゴンが来るなんてめったにないんだから」


「引きこもりでもそのくらいは耳に入るのか」


 レヴィが挑発すると、村長の息子は「ああ……?」と不機嫌そうな顔になった。


「あんま調子のんなよ、羽根つきトカゲ」


「貴様の動機は、ドラゴンへの憎しみか」


 村長の息子の肩がピクッと震える。


「ドラゴンライダー失格と言われ、パートナーからも見捨てられた。それは充分な動機になるだろう」


「だぁかぁらぁ~、証拠を出せって言ってんのわかんないのかなあ、トカゲの脳みそじゃ」


「証拠なら、さっきから見えているぞ」


 レヴィは村長の息子の腕を乱暴に掴んだ。その痛みに、彼は「ヒッ……!」と震える。


「レヴィ! 暴力は……!」


「コイツの服を見てみろ」


 上下、黒のスウェット。

 その上着には白い粉やかけらのようなものがくっついていた。


「これ、もしかして……」


「俺の鱗だ。カッツを殴ったときに胸ポケットからこぼれたものが付着したのだろう」


 レヴィは、逃げられないように腕を力強く掴みながら、村長の息子の顎を持ち上げ、視線を無理やり合わせる。


「これこそ、貴様の言う『決定的な証拠』ではないか? なにか申し開きすることは?」


 村長の息子は、何も言い返せなかった。


「――チッ。お前さえ来なければ、竜神の仕業ってことにして退治できたのに、計画が狂った。お前のせいだ」


「やはり、竜神の犯行に見せかけたかったのか」


 村長の息子は、自白を始める。

 彼は、かつてオリバー・ジャバウォックに憧れた人間だった。

 しかし、上京してドラゴンライダー養成学校に入学したが、かつての憧れを砕かれることになる。

 彼の相棒のドラゴンは「竜騎士の素質がない」と村に帰るように忠告したのだ。

 以降、家の中に引きこもり、村でも爪弾きにされていたという。

 その経験から、ドラゴンとの絆を否定し、村人たちにドラゴンへの恐怖を植え付けようとした。

 自分の失敗を認められず、村全体を巻き込んだ復讐劇を企てたのだ。


「フン、たしかにお前には竜騎士の素質を感じない。おおかた、ドラゴンに対して軽蔑の目を向けていたのだろう」


「ドラゴンを信頼できない人がドラゴンライダーになれるわけないよ」


「うるせえ! もうドラゴンライダーなんかどうでもいい! あんなトカゲの背に乗ったって楽しくなんかない!」


 カッツは村長の息子を悲しげな目で見たあと、「僕、高所恐怖症だったんだ」と告げる。


「でも、レヴィのおかげで、それを克服した。あなたにもドラゴンとの絆や信頼があれば、村に帰れなんて言われなかったよ」


 結局、カッツとレヴィは村長の息子を警察に引き渡した。

 こうして事件は解決し、村人たちと村長は、改めて歓迎の宴を開いた。

 カッツとレヴィは夏休みの宿題を済ませながら、『雪の村』で夏休みを過ごしたのである。

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